「今日は何を食べよう?」と考えている時間が何よりの至福、という俳優・福地桃子さん。ご自身でもレシピノートを作ったり、お皿をコレクションするほど、食べることが大好きだといいます。そんな福地さんに、食への思いや、それが“体や心”にもたらす豊かさについて、前後編でお話を伺います。食べものについて語るときの彼女は、ふくふくとした幸せなオーラにあふれていました——。

「食べること」で、体と心を整える。俳優・福地桃子の“エンパワメントフード”【前編】_1

PROFILE
福地桃子/MOMOKO FUKUCHI●1997年10月26日生まれ、東京都出身。2016年にドラマデビューし、以降、話題のテレビドラマや映画に出演。現在はドラマ『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ系)や『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK)に出演中。また、Netflixで配信中の是枝裕和氏が原案・監督・脚本を務めるNetflix『舞妓さんちのまかないさん』ではつる駒役を熱演。9月2日開演予定のPARCO PRODUCE 2023『橋からの眺め』では舞台初挑戦。 公式Instagramはこちら

楽しいことの延長にあった“食”は、お守りみたいな存在

「食べること」で、体と心を整える。俳優・福地桃子の“エンパワメントフード”【前編】_2

———福地さんが食に目覚めたのは、幼少期だそうですね。そのきっかけを教えていただけますか。

福地さん:子どもの頃から屋外で遊ぶのが大好きで、家族でキャンプをすることが多かったんです。子ども用の釣り竿で釣りをしたり、川でつかみ取りをしたり…獲れた魚は家で調理して食べていました。それから、母の地元が北海道ということもあり、実家から活きのいい海産物が届くことも多くて。初めてスーパーで魚の切り身が売られているのを見たときは、その金額にびっくりした記憶があります。

だから、私にとっては「楽しいこと」の延長に「食」があって、その体験が食への向き合い方の根っこにあるなと思います。大人になった今でも、例えば友達と小旅行に行くと、釣った魚をその場で食べられる施設にふらっと立ち寄ることも。いろいろなお店やレジャースポットに足を運んでいるにもかかわらず、意外とその釣り体験が旅のいちばんの思い出になっていたり(笑)。

———ただ「食べる」だけではなく、それまでの過程や環境込みで得られる、食体験の「醍醐味」や「尊さ」を大切にしているのですね。そんな福地さんにとって、“食べること”は体や心にどのような影響を与えていますか?

福地さん:1日のなかで、朝・昼・夜のリズムをつくってくれていると感じます。どうしても生活が不規則になってしまうこともありますが、やはり食事で自分の管理ができることが理想だと思っていて。だから、なるべく生活リズムをくずさないよう、仕事の日はもちろん、オフの日も早めに起床して、朝からしっかり食べますね。忙しいときは、「これだけ食べておけば大丈夫!」という気持ちで、手作りのお味噌汁とご飯だけは取るようにしたり。食べることが、お守りみたいな役割を果たしている気もします。

あとは、もちろん食べる瞬間も好きなのですが、「何を食べようかな〜」と考えている時間が、何より幸せです。「空いたお腹を何で満たそう?」と考える時間込みで、食の楽しみだと思っています。

調子がよかったときの食事を覚えておくこと

「食べること」で、体と心を整える。俳優・福地桃子の“エンパワメントフード”【前編】_3

———食べるうえでのルールや、食材選びのこだわりなどはありますか?

福地さん:足を運ぶスーパーやそこで買う食材など、ひとつひとつにこだわるスタイルにも憧れますが、私はそういうタイプではないかもしれません。外食やロケ弁、甘いものも大好き。“こだわりすぎないのがこだわり”かなと思います。

ただ、調子がよかった日の食事はきちんと覚えておくようにはしています。忙しい日が続いたときは、それを再現して体を整えるようにしたり。仕事を始めてから、だんだんと自分の体がわかるようになってきた気がしますね。

———“調子がいい自分”をキープするためにも、食が重要なんですね。ご自身ではどんなものを作っているんでしょうか?

福地さん:短時間で何品も作れる、というわけではないのですが、オムライスはよく作ります。あと、いちばんの得意料理は生姜焼き…! 主役のロース肉は、母と市場で調達します。シート買いして、1枚ずつクリアファイルに入れて冷凍するんです(笑)。生姜はすりおろしではなくみじん切り派で、自家製ダレを絡めて完成。一発で元気が出るパワーフードです!

それから、自分で漬物を作ることも多いです。野菜をたくさん買ってひたすら刻んだら、マネージャーさんに誕生日プレゼントでいただいた、ガラス製の漬け物壺に入れて、1日で完成。白菜や大根、人参入りのオイキムチ(きゅうりの漬物)を作ったこともあります。韓国料理屋さんで食べたオイキムチがあまりにもおいしくて、お店に通って作り方を研究しました。

悲しいことや傷つくことも、ユーモアに変えて前を向きたい

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———生活リズムや心を整えるのは、それだけ真剣に俳優という仕事に向き合っているからだと感じました。ここからは、そんな福地さんの「心のケア」についてもお話を伺いたいと思います。俳優としてさまざまな役を演じるなかで、役柄によって心身のバランスをくずしてしまったりすることはないのでしょうか。

福地さん:普段の私と、いただいた役との境目がなくなる瞬間は、形は違うけれどあることだと思います。ただ、役に引っ張られることをネガティブにとらえるのではなく、むしろその役のいいところを見つけて、ここぞとばかりにマネしようと思っていて。

脚本をいただいたら、「どうして私にこの役が来たんだろう?」「自分には何ができるだろう?」ということを考えて、その人物の魅力やこだわりをとことん探すんです。そうすると、キャラクターをより深く好きになれて、演じるのがさらに楽しくなる。例えば、場を明るくするムードメーカーのような役をいただいたときは、「そんなふうになりたい!」と思って、お芝居で体験したことを私生活でこっそり試していました。

———福地さんの前向きな思考や優しい視点は、自分自身はもちろん、まわりの人のことも幸せにしてくれそうですね。これから、もっとこんなふうに変化していきたい、という目標はありますか?

福地さん:ユーモアがある方って素敵だな〜と、いつも思っています。生きていると、悲しいことや傷つくことは少なからずありますが、それをポジティブに変換して受けとめたり、サラッと上手に返せる人に憧れます。自分に起こることはすべて、受けとめ方次第でどうにでもなると思うから。そんな人になっていけたらいいなと思います。

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取材・文/広沢幸乃 撮影/澤田健太 スタイリスト/ゴトウカナエ ヘアメイク/曳田萌恵 企画・編集/種谷美波(yoi)