タレント、モデル、そして身体美容家として活躍する優木まおみさん。ピラティスインストラクターの資格を取得し、現在オリジナルの「マオビクス」をもとに、セミナーやレッスンを活発に行なっています。心身の健やかさを大切に考えながら年を重ね、プライベートでは2児の母でもある彼女に、女性の体と心を整えるエクササイズを教えていただきました。
身体美容家®︎・タレント・モデル
1980年3月2日生まれ、佐賀県出身。大学在学中に芸能界デビューし、グラビア、キャスター、レポーター、ファッションモデル、コメンテーターなど、マルチに活躍。第2子出産を機にピラティスインストラクターの資格を取得。ピラティスを元に発展させたオリジナルメソッド「マオビクス」を創始。オンラインボディサロンや全国のセミナー、レッスンで指導を行なっている。著書に『マオビクス 背骨から身体を変えるおうちピラティス』(リブレ)など。
自分の体からのサインとして大切にしているのは、呼吸と鼓動
——現在は身体美容家として活躍する優木さん。30代中盤で二人のお子さんを出産するまでは芸能活動が忙しく、自分の体には無頓着だったと言います。
優木さん「20代でグラビアモデルをやっていた頃は、酷寒でのロケ撮影や、寝不足でいても気にしていませんでした。『痩せていればいい』という気持ちもあって、今思えば、細くてもお腹がぽっこりしていたり、貧相なプロポーションにつながることをしていた気がします。
やっと自分の体に目を向けたのは、37歳で第2子を出産してからのこと。産後の不調を解消したくて、ピラティスに出合ったのです。年齢とともにリカバリー能力は下がっていきますから、若い頃から始めていたら、もっと出産後の落ち込みも軽かったはず、と思います」
——20代から40代はライフスタイルでも一番忙しい時期。女性特有の体の悩みに気づきにくいという人も多いのでは、と優木さん。
優木さん「でも、自分の体を意識できるのは自分だけ。1日でも早く、自分自身の変化や不調に敏感に、整えることを始めるほうが“お得”だと思うんです。
以来、毎日過ごすなかで私が自分の体からのサインとして大切にしているのは、呼吸と鼓動。いつもより息苦しいとか、動悸がするなと思ったら、深く息を吸って5カウント数えます。
ストレスがあるときなど、息を吐く量に対して吸えなくなっていることが多いんです。うまく吸えていないときは、副交感神経を整えるために、深呼吸するようにしています」
——浅い呼吸はPMSなどによる不調とも関わりがあり、子宮を守る骨盤まわりのケアも、呼吸を整えることで効果が増すのだそう。正しく呼吸を整え、体のこわばりをほぐす日常的なストレッチと、女性にとって大切な「骨盤」まわりのケアを紹介していただきました。
呼吸を整え、体のこわばりをほぐすストレッチ
優木さん「PMSには、イライラ、気分の落ち込み、腹痛をはじめとする生理痛など、人それぞれに症状があります。そうしたときは、呼吸が浅くなり、体が硬くこわばった状態になっていることが多いのです。深呼吸をして、体をナチュラルに力を抜いた状態に導きましょう。
体のこわばりをほぐすには、縮こまってしまった大胸筋、小胸筋、肋間筋、横隔膜を緩めていくストレッチを。エクササイズの前に行うプレピラティスとしても効果的ですし、お休み前にベッドの上で行うと眠りが深くなり、ホルモンバランスを整える習慣にもつながります」
【体をゆるめるワーク①】仰向けで深呼吸
仰向けになり、軽く目を閉じて、自分の肋骨のお腹側を軽く手で触りましょう。ゆっくりと自分の体を感じながら、肩をリラックスさせ、鼻から深く息を吸います。たっぷりと吸ったら、また鼻から息を出しきります。何度かより深い呼吸を繰り返すと、だんだんと体のこわばりがほぐれてゆきます。肋骨が上下、両脇へと広がってゆくような感覚です。
【体をゆるめるワーク②】肋骨周辺のマッサージ
体に入っていた力が緩んでゆくのを感じられたら、肋骨の中央部分、ハの字のラインに沿って4本の指を差し込むように、優しく押してゆきます。呼吸が浅いうちは、腰が反って、指を跳ね返すような張りがあります。深い呼吸を繰り返して体がほぐれてゆくと、お腹の中のほうへと指が受け入れられるような状態になります。痛さを感じる人は、無理をせずに。柔らかくほぐれていくのを感じられたら、優しく、氷を溶かすようにじっくりとほぐしてゆきます。
【体をゆるめるワーク③】だんごむしのポーズ
膝を曲げて、両腕で抱きかかえる形に。そこから膝の匂いを嗅ぐような感じで背中を丸め、上半身を起こします。左右に揺れて、背中をストレッチしてもいいでしょう。
体が丸まったら、またゆるめて①のポーズへ。何度か繰り返すうちに、お腹の硬かった部分がほぐれ、体がリラックスした状態になって呼吸が楽になると思います。「夜眠る前、ベッドの上で8回ほどこの呼吸を繰り返すと、スムーズに深い睡眠に入れるはずです。また、この状態から次に紹介するエクササイズに移行すると、より効果的です」
仙骨のゆがみを治し、リラックスのスイッチをONに
——PMSがつらい人は、普段から背骨のいちばん下、お尻の中央部分で骨盤につながる「仙骨」を意識するのがいいのだそう。
優木さん「背中が丸まり、仙骨が後傾して(寝て)いる姿勢は、子宮を圧迫し、機能を低下させる可能性があるのです。この仙骨のゆがみを治し、まっすぐ立たせていくには、お尻とハムストリングスを柔らかくするエクササイズが有効です。私のメソッドでは「スターフィッシュ」と呼んでいます」
【1】マットの上で、片膝を立てて座り、もう片方の膝上に組み、両膝を曲げます。座った状態で、左右の坐骨がマットに均等に当たっている感覚で姿勢を整えましょう。そうすることでお尻の筋肉とハムストリングスが伸ばされます。
頭のてっぺんから上半身を引き上げるようにして、腰とお尻を伸ばします。自分に尻尾があるとしたら、ピンと立たせるように持ち上げるイメージです。倒れていた仙骨と骨盤がぐっと立ち上がってきます。そこから力を抜き、また引き上げる運動を何度か繰り返して、骨盤まわりがほぐれてきたのを感じたら、両手を上げましょう。
【2】両手は上げたまま、上半身を上に組んだ足の方向にゆっくりとひねります。頭だけを動かさず、背骨を回旋させて腰まで連動させましょう。ひねりながら、息を吐いて両手を下ろしてゆきます。肘が上の脚の膝に当たったら、ひねる方向へ少し力を加え、ストレッチを促しましょう。
【3】息を吸いながら下ろした両手を上げ、1のポーズに戻ります。それから反対側の方向へ、2と同じようにして体をひねります。このセットを3回行い、次は脚を逆に組んで、さらに3セット行います。
優木さん「ピラティスはトレーニングなので、続けていくことが当然いいのですが、生理前後のつらい時期にハードすぎる運動は心理的にも肉体的にも難しいですよね。紹介したストレッチとエクササイズは、どちらも日常のなかで気軽に取り入れられるもの。呼吸と姿勢を意識して、体をリラックスした状態に導きましょう」
撮影/角田航(TRIVAL) 取材・文/久保田梓美 企画・構成/渋谷香菜子