【奈緒さん】「人に頼れるようになったら、心が開けるようになった」変われたきっかけはプロデューサーの一言〈インタビュー後編〉

『先生の白い嘘』STORY
高校教師の原美鈴（奈緒）は、親友・美奈子（三吉彩花）の婚約者である早藤（風間俊介）との関係を隠しながら、教卓の高みから生徒達を見下ろし観察することで、密かに自尊心を満たしていた。しかし、平穏を装った彼女の日常は、自分が担任する男子生徒・新妻（猪狩蒼弥）の事件をきっかけに崩れ始める……。

——主人公の原美鈴は、心の傷を誰にも打ち明けられず、抱え込んでしまっています。奈緒さんご自身は悩みを人に相談するタイプですか？

奈緒さん：私もわりと一人で抱え込んでしまうことが多かったです。でも最近は、打ち明けられる関係や場所があったほうがいいと感じています。

仕事柄、さまざまなことを誰にでも話せるわけではないのですが、だからこそ安心してなんでも話せる人の存在はとても大切。そういった方がいないと、どうしてもどんどん溜め込んでいってしまうので。今は、私が悩みを話しやすいようにと、マネージャーさんが環境とチームを整えてくれたので、ちょっとしたことでもまわりの人に相談するようになりました。

今までは、プライベートで何か悩んだり、つらいことがあっても友達には事後報告だったんです。終わったあとに「こんなことあったよ」って報告して驚かれることもありました。でも徐々に、物事を決定する前に「これ、どう思う？」と相談できるように。「人に頼る」ことを意識的にすることですごく心が軽くなりましたね。

——人に頼れるようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

奈緒さん：『ファーストペンギン！』（日本テレビ系）というドラマに出演した際に、ドラマのプロデューサーさんが「奈緒ちゃんと話したいことがある」と、楽屋に来てくださったことがあったんです。

そのときに、「奈緒ちゃんってまわりのことをすごく考えて頑張ってくれているよね。本当にありがとう。でも、気を遣いすぎてしまっているように感じるからすごく心配。不安なことがあっても、話せる人がいないんじゃない？　今はすごく忙しいから気が張っているけど、ふとした瞬間に突然心がポキって折れてしまうかもしれない。そうならないように、自分の中で『この人には話せそう』って思う人を見つけられるといいよ。もちろん私でもいいし、このドラマに入ってない人でも誰でもいいから」って言ってくれて。

私、急に涙が止まらなくなってしまったんです。そのときは自分でもなぜ泣いているかわからなくてびっくりしたんですが、それが大きなきっかけとなりました。それ以降、人に頼れるようになったんです。「人に頼る」という感覚が芽生えてからは、現場で初めてお会いする方にさらに心が開けるようになったと思います。今はすごい幸せですね。

——『先生の白い嘘』の公式HPにて、奈緒さんは「社会の中で弱者と強者という構図は、今もなおなかなか無くなりません。いつかそんな言葉さえなくなり一人一人が"自分"を受け入れられる世界を切に願っております」というコメントを発表されています。奈緒さんにとって「自分」とはどのような存在ですか？

奈緒さん：自分＝持って生まれたもの、だと思っています。今話している声も、皮膚も、性格もすべて。「なんでこんなこと考えちゃうんだろう」とか、「目がもっと大きかったらよかったのに」とか、自分の嫌なところを見つけやすい時期ってありますよね。特に思春期はそうでした。

今、当時を振り返って思うことは、生まれたままの自分を受け入れることができれば、変わることもできるのかなということ。嫌なところを受け入れずに無理に変えようとしても、本当に自分のものにはならないと思っています。

だからまずは自分自身がどんな人なのか、どういったときに喜びを感じるか、どんなことが起きるとイライラしてしまうのかを分析するようにしたんです。自分自身のことを把握し、それを受け入れるようになってからは、自分を卑下するような言葉は使わなくなりました。

まだまだできないことも、未熟な部分もたくさんありますが、それが今の自分だと受け入れられれば、いつかは変われる、と信じています。「自分の中にある嫌な部分もいつかは変えていける」という自信があるので、「今はこの状態だけど、まぁいっか！」と楽観的にとらえています。

HPのコメントには、どんな自分も受け入れられる世界であってほしいという意味を込めました。

『先生の白い噓』
7月5日（金）全国劇場＆3面ライブスクリーンにてロードショー
https://senseino-shiroiuso.jp　

撮影／垂水佳菜　ヘア＆メイク／竹下あゆみ　スタイリスト／岡本純子　取材・文／高田真莉絵　構成／渋谷香菜子