誰もが抱える“ちょっと言いづらい”話をゆるく、でも真摯に語る佐伯ポインティさん。人気Podcast『佐伯ポインティの生き放題ラジオ!』では、恋愛や性などにまつわるリスナーの悩みにユーモアと洞察を交えて回答し、話題になっています。ポインティさんが漫画編集者を経て、自分の「好き」を軸に立ち上げた活動の軌跡をたどります。

佐伯ポインティ インタビュー

佐伯ポインティ
佐伯ポインティ

マルチタレント。1993年生まれ、東京都出身。早稲田大学文化構想学部卒業後、漫画編集者を経て2017年に独立し、猥談系YouTuberとして活動をスタート。18年には日本初の完全会員制「猥談バー」をオープンした(現在は閉店)。24年7月からは「佐伯ポインティの生き放題ラジオ!」をポッドキャストで配信中。趣味はガチャポン、特技はおしゃべり、チャームポイントは大笑顔。

エロと自分が大好きだから、猥談バーを始めた

Podcast 佐伯ポインティ 生き放題ラジオ

——大学卒業後、コミックを中心に編集業務を行うプロダクション「コルク」に入社。その後、性愛を語る場「猥談バー」を立ち上げ、独自の活動を展開されています。現在の“佐伯ポインティ”として活躍するまでの経緯を教えてください。

ポインティさん:高校生のときは、本当に受験勉強をしたくなくて(笑)。ホラー小説が大好きだったこともあり、「ホラー小説大賞を最年少で受賞して、大学に行かずに売れっ子作家としてやっていくぞ!」と、謎のキャリアプランを立てていたんです。

書き上げた小説を担任の先生にも読んでもらい、真剣に取り組んでいたんですが、一次審査にもひっかからず、あ、向いてないんだって切り替えて受験しました。

でもこの時に感じた「自分が作家として売れるより、自分の好きな作家が活躍するほうが、この世界にとっていいはずだ」という気持ちは、今の仕事にもいきているかも。

大学卒業後は、映画のプロデューサーか編集者になりたいと思い「コルク」に就職しました。編集者って、自分の興味のあることが仕事につながることもあるので、好きなことや今気になっていることなどを話題にするじゃないですか。

もともとエロいコンテンツが好きなことはまわりの人にも包み隠さず話していたんですが、ある日、社長と漫画家さんに「マジでエロと自分のことが好きだね」と言われたことをきっかけに、性愛にまつわる事業を始めるぞ!と、一念発起しまして。

まずは集まった方々が安心して楽しくエロい話ができる場を作ろうと、猥談バーをはじめました。

佐伯ポインティ キャリア 編集者

——ポインティというお名前の由来は?

ポインティさん:「コルク」の先輩に「パ行から始まって、可愛い名前にしてください」と相談して、つけてもらったものです。

——ポインティさんの動画やPodcastには、どこかハッピーな空気感がありますよね。ご著書には、ご親族からの愛情に包まれて育ったとありますが、そうした環境が今のキャラクターに影響していると思いますか?

ポインティさん:一因ではあるのかもしれません。この性格になるための土台というか発射台は作ってもらったと思っています。あと、性格とはちょっと違うのですが、家でずっと『トイ・ストーリー』と『風の谷のナウシカ』と『ピンポン』のビデオを観ていた記憶があって。

それぞれ、作家性と商業性を両立させてる凄い作品じゃないですか。そういう作品が今でも大好きなのは、偶然ですが環境のおかげだと思います。

アマチュアだから聞ける話もある

佐伯ポインティ 猥談 YouTube

——独立されるまでは、猥談をするのも知り合いの間だけだったと思いますが、「猥談バー」やYouTube(現在は配信停止中)での発信を通して、いろいろな人の性愛の話を聞く機会が増えましたよね。そうした中で、印象に残っていることや新たな発見はありましたか?

ポインティさん:「え! これって普通じゃないの?」「みんなしてるんだと思ってた」って、みんなが驚くのは面白い。セックスって、社会化されていない部分がおおいにあるんだなって改めて気づきました。

猥談を面白く話す人に女性が多いのも、発見でした。第三者的な目線で、まるでシェフの料理を評価するように、経験したセックスをレビューできる人が多い気がします。一方、男性はめっちゃ失敗してしまった話か、武勇伝が多かったり。男女の非対称性はあるのかも。

——いわゆるネタにできるようなことしか、友達と共有できない男性の寂しさみたいなものを感じさせるエピソードでもありますね。

ポインティさん:男性も、失敗談とか、武勇伝ではない「平熱」の話ができるようになると変わっていきそうですよね。今までの恋愛コンテンツは「恋愛マスターが教えてあげます」といったものが多かったので、waidanTVでは「ただリアクションするだけ」というスタンスを心がけていました。「なんだ? なんだ!? アマチュアが出てきたぞ!」みたいな。

——友達と話しているような雰囲気があるからこそ、安心して投稿・視聴ができるんだと思います。一方で、性に関する話はどうしても繊細な部分もあると思いますが、体や性のことを話すときに気をつけていたことはありますか?

ポインティさん:自分が生物学的に男である、ということは意識しています。例えば生理のつらさは、自分は絶対体感することはできないので、女性の体のメカニズムについては必ずファクトチェックしてから発信するようにしていました。免疫や神経系の話をする際にも、医師の監修者が付いている文献を参考にする、というのは必ずやっていました。

疲れているときや、切羽詰まっているときに文字だらけで難しい文章を読むのは嫌じゃないですか。とくに医学の話なんて、頭に入ってこない人も多いと思うんです。こういった仕事をしている分、調べる時間はとりやすいので、「代わりに調べておきました!」という気持ちもあります。

『[日めくり]毎日ポインティ』

『[日めくり]毎日ポインティ』1980円/マガジンハウス(7月31日発売予定)

ポインティさんのハッピーなメッセージと笑顔になる写真を組み合わせたひめくりカレンダー。『[日めくり]毎日ポインティ』1980円/マガジンハウス(7月31日発売予定)

撮影/寺沢美遊 取材・文/高田真莉絵 構成/渋谷香菜子