性愛やセクシュアリティ、語りにくい心の領域に、静かに寄り添う佐伯ポインティさん。数々の悩みに向き合ってきた彼が、いま届けたい言葉とは。「世界をつまらないと思ったことがない」その眼差しを持つからこそ導ける答えがあります。

佐伯ポインティ 猥談 お悩み相談

佐伯ポインティ
佐伯ポインティ

マルチタレント。1993年生まれ、東京都出身。早稲田大学文化構想学部卒業後、漫画編集者を経て2017年に独立し、猥談系YouTuberとして活動をスタート。18年には日本初の完全会員制「猥談バー」をオープンした(現在は閉店)。24年7月からは「佐伯ポインティの生き放題ラジオ!」をポッドキャストで配信中。趣味はガチャポン、特技はおしゃべり、チャームポイントは大笑顔。

見る人が疎外感を感じないコンテンツにしたい

佐伯ポインティ お悩み相談 インタビュー

——性愛の話をテーマにしていたご自身のYouTubeチャンネルで、アセクシャル(他者に性的に惹かれない指向)やアロマンティック(他者に恋愛的に惹かれない指向)の人たちなど、性的マイノリティの話を取り上げることになったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

ポインティさん:視聴者の方からリクエストをもらったのがきっかけです。YouTube(※現在は配信休止中)は、10代の方もよく見てくれているので、異性愛だけを発信して、若い世代の人に「世の中にはそれだけしかないんだ」と勘違いさせてしまうのはよくないことですよね。

まだ自分のセクシャリティが確立されていない人に、男と女の話ばかりしている動画をみて「自分って世界に受け入れられていないのかな」と思わせてしまうことがないように心がけました。

また、女性からの投稿で「恋人」と書いてあっても、彼氏と断定するような言い方は避けています。気付かないうちに言ってしまうこともあって、自分の思い込みにあとから気づくことも多々ありました。

世界や他者を面白がり続けたい

佐伯ポインティ 編集者 YouTuber

——Podcast番組「佐伯ポインティの生き放題ラジオ!」に寄せられる悩みに、「理解はするけど、共感はしない」というスタンスで回答しているそうですね。

ポインティさん:とにかく自分が大好きだから、目立ちたい(笑)。目立ちたがり屋なので、人と同じなのが嫌なんです。共感って、その人と自分の同質性を見出す心の動きじゃないですか。人と被らないように、と考えて小さな頃から生きてきたから、どんどん共感という感情から離れちゃった感じです。

でも歳を重ねるごとに、世界や他者に対して、つまらないって思うことが減っていきました。いろいろな角度から面白がっている感覚があります。それに人のことは好きだから、共感はしないけど理解はしたい。相談にのることは、その人と自分の差を理解する作業をしている感じです。

これまでに8000通ほどの相談メールがきたのですが、これだけ他人の悩みを読んでいると、メールの文面を読むだけでこの人がどれくらい疲れているのか、まいっちゃっているのかがわかるようになってきます。

「軽い文体で書いているけど、めっちゃつらいだろうなぁ。逆にこの人は深刻そうに書いているけどまだ大丈夫かも」みたいに。なので、相手のトーンを読み解いて、その人が今求めている言葉をかけるようにしています。これにズレが生じてきたと感じたら、悩みを聞くのは辞めどきかもしれないです。

——8000通! すごい数ですね。

ポインティさん:友達から悩みを相談されたときって、みんなものすごく冴えてるじゃないですか。スッと答えが出てきて、驚くほど的確なアドバイスをしてあげられる人が多いですよね。でも、自分自身にもその考えを適用すればいいのに、そうはいかなくて、自分の恋愛はめちゃくちゃ!みたいな人も同じくらいいると感じていて。

「生き放題ラジオ」にはたくさんの悩みが集まるから、そういった人も「これ、自分の悩みに似てるかも」「私ってこんなことで悩んでたんだ」と、気づくきっかけになったという感想も結構いただきます。他人を通して自分を知る、みたいな。

——昔からある定番の人生相談という形式で、ポインティさんの番組がここまで支持を集めているのはなぜでしょうか。ご自身ではどう感じていますか?

ポインティさん:全体的にみんな疲れているのは感じますね。仕事でも疲れて、SNSでも疲れて、自分のことを考えたり、まわりのことに向き合ったりする時間が削られてしまっているから、大変さを抱えているような気がします。「解決しなくてもいいから、友達に聞いてもらいたい」「友達に話してラクになりたい」という気分に合っているのかもしれません。

Spotifyの方に「驚異的な時間ひとりで喋ってます、おしゃべりモンスターです」って言われて(笑)。おしゃべりモンスターがずっと喋っているのが珍しくて聴いてくれている人もいるのかも。寝る前に子守唄として聴いている人もいるらしいです(笑)。Podcastっていつでも好きなタイミングでどの回でも聞けるから、そのよさともマッチしたのかもしれません。

「自分が面白いと思うものの一部になりたい」が原動力

佐伯ポインティ ポッドキャスト お悩み相談

——ポインティさんは好きなことを仕事につなげる才能があるように感じます。今後チャレンジしたいことはありますか?

ポインティさん:今年から数年ほど、役者にチャレンジする予定です。南極という劇団の舞台「ゆうがい地球ワンダーツアー」に出演します。

編集者や映画のプロデューサーになりたかったのは、自分が面白いと思うものの一部になりたかったんだと気づきました。自分は編集者には向いてなかったけど、役者という仕事を通して、作品の一部になれるってこんなにうれしいんだと始まる前からドキドキしてます!

『[日めくり]毎日ポインティ』

『[日めくり]毎日ポインティ』1980円/マガジンハウス(7月31日発売予定)

ポインティさんのハッピーなメッセージと笑顔になる写真を組み合わせた日めくりカレンダー。『[日めくり]毎日ポインティ』1980円/マガジンハウス(7月31日発売予定)

撮影/寺沢美遊 取材・文/高田真莉絵 構成/渋谷香菜子