2024年10月から、「yoi」と集英社の7つのファッション・ビューティマガジンのコラボコンテンツ「集英社yououriプロジェクト」がスタート。ここでは「yoi」と「MEN’S NON-NO」コラボによる、「男性のモヤモヤ座談会」をお届けしていきます。初回のテーマは「男性視点で考える妊活」。yoi編集部員木村とMEN'S NON-NO編集部員の山口が、3人の妊活経験者男性を迎えてトークします。
「集英社yououriプロジェクト」とは?
2024年10月から、「yoi」と集英社の7つのファッション・ビューティマガジンのコラボコンテンツ「集英社yououriプロジェクト」がスタート。「yoi」の理念である「you(あなた)とi(わたし)でour(わたしたちの)社会を創る」のもと、yoi編集部と各媒体の編集者がエンターテインメント性と社会的意義やウェルネスを両立するコンテンツを創出します。「Seventeen」「non-no」とのコラボは今どきの高校生と大学生のインサイト、「MORE」「BAILA」とは働く女性のウェルネス、「MAQUIA」「SPUR」とはフェムテック、「MEN’S NON-NO」とは男性のモヤモヤをテーマにお届けします。
yoi編集部員
入社11年目のエディター。入社9年目までは、「MEN'S NON-NO」編集部で勤務していた。「yoi」に異動してからの2年半で、ジェンダーや社会問題への関心がますます高まっている。
MEN'S NON-NO編集部員
入社10年目のエディター。入社以来在籍していた広告部から、昨年「MEN'S NON-NO」編集部に異動。20代前半のモデルと読者に囲まれながら、ファッションだけでなく彼らのジェンダー観も勉強中。
座談会の参加者はこちらの3名!
Aさん
92年生まれ。東京都在住。仕事はIT関係。大学時代からつき合っていたパートナーと21年に入籍。23年に結婚式を挙げ、24年10月に第一子が誕生予定。妊活はスムーズだった。
Bさん
94年生まれ。福岡県在住。仕事は投資ファンド。大学時代からつき合っていたパートナーと21年に入籍。25年2月に第一子が誕生予定。不妊治療経験者。
Cさん
93年生まれ。東京都在住。商社に勤務。4年目から6年目までの2年間シカゴに赴任。社会人2年目で知り合ったパートナーと22年に結婚。23年の新婚旅行後から、妊活を始めたばかり。
男性不妊を経験したBさん。妊活前にチェックしておくべきことは?
木村 yoiでは取り上げることも多い、「妊活」というテーマでお話を伺っていきます! yoi読者の女性に話を聞いていると、「いつ妊娠・出産するか」というお悩みを抱えている方が多くいらっしゃいます。皆さんは、結婚したときから、子どもをつくることは考えていらっしゃいましたか?
Aさん つき合っている頃から子どもが欲しいという話はしていましたが、20代の頃は仕事を優先しながら生活していました。二人とも30歳を超えて仕事も少し落ち着いてきたので、そこでようやく結婚式を挙げ、子どもも欲しいねということで妊活を始めたら、タイミングよく授かりました。
Bさん 私たちも将来的には子どもが欲しいと考えていたのですが、自然にできたらいいなという程度でした。結婚して1年ほど経ったときに妻が妊娠したのですが流産してしまって。その後、真剣に妊活に取り組み始めました。
山口 パートナーの方は大丈夫だったのですか?
Bさん はい。ただすごく落ち込んでいたので、明るくしようと「今回はダメだったけど次があるし」と言ったらすごく怒っていて…。そこで初めて、自分に気遣いが足りなかったことに気づきました。
Cさん 僕も子どもは欲しいねと話はしていたのですが、子どもができたら二人だけの時間が取りづらくなるので、昨年末に二人でヨーロッパに新婚旅行へ行ってきました。その後、今年の4月頃から妊活をスタートさせました。
木村 「妊活は夫婦二人で取り組むべきもの」という意識は、妊活を始めた当初からありましたか?
Aさん ありました。でも、妻がどう感じていたのかはわかりません。僕の場合はありがたいことに苦労することなく授かることができたのですが、なかなか授かれなかったら検査には行こうねとは話していました。
Bさん 私は正直、あまりそういう認識は持っていませんでした。流産を経て、妊娠に対して真剣に向き合うようになってから、軽い気持ちで考えていたことに気づいて反省しました。
Cさん 僕はまわりの先輩方から苦労話をたくさん聞いてきたので、妊活は夫婦二人でするものという認識がわりと前からありました。
木村 現在、お子さんの誕生を待っているAさんとBさんは、具体的にどのように妊活されたのでしょうか?
Aさん 子どもを作ろうという話になり避妊をしなくなったらすぐにできたので、本当にラッキーでした。期間でいうと1カ月もかかっていない感じです。
Bさん 僕は流産してからタイミング法を試していたのですが、1年ほど継続してもできなくて。そこでお互いに病院に行って検査をしたら自分のほうに問題があるとわかったので、男性の不妊治療の病院に行き、手術を行いました。
山口 男性の不妊治療のための病院があるのですね。具体的にどんな手術をしたのですか?
Bさん 精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)というのが原因で。精巣内の温度が上昇することで精子の機能が低下するようなので、精巣につながる静脈を縛って熱を持たないようにする手術をしました。
山口 時間はどれくらいかかるのですか?
Bさん 全身麻酔をして3時間くらいです。この手術をしても効果が出ない可能性があるとは言われていたのですが、僕にできることはなんでもしようと思ったのでダメ元で挑戦しました。でも結果として効果が出たのでよかったです。
Aさん 痛みはどうでしたか?
Bさん じーんとする鈍い痛みが1週間くらい続いたけれど、それ以降は趣味のサッカーも再開したし、普通の日常生活に戻れました。
Cさん 手術後の検査もあるんですよね?
Bさん 精子の活動量を検査するために、手術後1カ月、3カ月と検査に行きました。その後、もし子どもができなければ半年後に来るように言われていたのですが、半年後に妻が妊娠したので行きませんでした。
山口 実際に妊娠がわかったときの気持ちはどうでしたか?
Bさん それはもう、めちゃめちゃうれしかったですよ! チームプレーで優勝したような気持ちになりました(笑)。妻との絆も妊活を通してより深まった気がしています。
山口 そうですよね! 本当におめでとうございます。ちなみに、費用はどのくらいかかるのですか?
Bさん トータルで15万円くらいです。
Aさん えっ! そうなんですね。不妊治療ってすごくお金がかかるイメージがあって、100万円以上するのかと思ってました!
Bさん 僕がやった手術は保険が適用されたので10万円くらいで済みました。検査は保険が利かないので5万円くらいです。
山口 Bさんのケースが稀なのではなく、実は不妊の約半分は、男性側に原因があるというのは知っておくといいですよね。
Aさん 自分はスムーズでしたが、まわりには苦労している人もちらほらいます。妊活をするタイミングで検査をしておくのは賢明かもしれないですね。
木村 yoiでも、精子の状態を手軽にチェックできるキットを紹介しています。子どもを望んでいる方は、まずはこういったもので自分の体の状態を知っておくとよさそうですね。
運動、サプリメント、食生活。妊活のために変えた生活習慣は?
木村 妊活では、女性側と男性側で、それぞれ気をつけることがありますが、皆さんはどんなことに気をつけていましたか?
Aさん 僕はサウナが好きで頻繁に行っていたのですが、精子に悪い影響を与える可能性があるということを知り、控えるようにしました。それから鉄分のサプリを摂るといいって話も聞いたので、摂ろうかと思っていたのですが、その前に妊娠が発覚したので結局摂らずじまいでした。
Bさん 私もサウナ好きだったのですが、今は完全にやめています。健康第一ということで、ランニングもしています。もともと、運動することは好きだったのですが、今ではランニングが趣味になりました(笑)。サプリはネットで調べて精子を強くするような効果があるものを飲んでいます。もう一人、子どもが欲しいなと妻とも話しているのですべて継続中です。
木村 yoiの取材でも、サウナが精子に与える影響については取材しました(参考記事)。常識的な範囲では問題ないですが、妊活中は注意が必要かもしれませんね。
山口 どれくらいの頻度で走っているのですか?
Bさん 週に3〜4回で、その日のコンディション次第で距離は決めます。
Cさん 僕は学生時代から好きなサッカーを今でも続けているし、お酒やコーヒーはほとんど飲まないので健康習慣を改善するというよりは、ほかのことを追加したほうがよさそうな気がしました。まだどうしても仕事が中心の生活なので、外食でも栄養のバランスを考えて、なるべく規則正しい生活をするところから始めようと思います。
山口 Cさんは病院で検査する予定はあるのですか? まわりでは、妊活を開始する前や妊活初期にまず検査だけ受けたりするという話も聞くのですが。
Cさん 実は自分のコンディションは把握しておいたほうがいいのかなと思って、検査にだけは行きました。機能面での問題はなかったので、しばらく様子を見てもしできなかったら、妻も検査に行く予定ではいます。
木村 以前、男性の性のお悩みについて取材するなかで、妊活によりセックスが義務化されると、プレッシャーを感じてしまい、勃たなくなってしまうことがあるというお話を聞きました。その原因は、勃起はリラックスしている状態の、副交感神経が優位のときに起こりやすくなるものなので、頑張ろうと考えたりすると、逆に緊張の神経である「交感神経」が優位になってしまい、勃起できなくなってしまう、ということだったのですが…(参考記事)。皆さんは、そんな経験はありますか?
Aさん まったくありませんでした。妻とはもう10年一緒にいるので、セックスについてもオープンに話せる関係だし、義務化したらつらいよねって話もしていたくらいです。もしできなくなってしまったとしても、話し合える準備はお互いにできていたと思います。
Bさん 僕は不妊の原因がわからなかったときは平気だったのですが、自分に原因があるとわかってからはプレッシャーがハンパなかったです。
Aさん まわりではできなくなったって声はよく聞くし、それが原因で別れたって話もありました。子どもに対する考え方の違いは、改善が難しいテーマではあると思います。
Bさん 仕事のタイミングでお互いが望む時期が一致しなくて揉めるってケースも聞きますよね。
Cさん 僕らは結婚式後に妊活を始めようって話が最初にできていたからよかったけど、人生設計を含めて、妊活の話がきちんとできていないとつらいのかもしれないですね。
Aさん 何より、夫婦間のコミュニケーションが大事ですよね。我が家では、妊娠がわかってからは、お金や家の話を今まで以上にするようにもなりました。
Bさん 僕もそうです。テンションが上がってしまい、子どもの保育園から大学までのプランを作って、妻に呆れられています(笑)。
山口 妊活で苦労した分、今はすごく楽しんでいる感じですね。
Bさん そうですね(笑)。今はすべてが前向きに取り組めています。
妊活は共同作業。夫婦の絆も深まった!
山口 子どもが生まれたあと、皆さん育休はどうする予定ですか? 友人の中でも、育休取得をしていたり、育休は取らずともパートナーとお互いにリモートワークを併用しながら協力していたりと、いろんなケースを聞きます。
Aさん 僕の勤めている会社では、男性でも長い人では1年間の育休を取るので、最低でも3カ月の育休を2回取る予定でいます。できれば6カ月取りたいなと思っています。
山口 2回に分けて取るんですね。
Aさん ちゃんと子育てに参加したいので最低でもそれくらい必要かなと。妻は1年休む予定でいるのですが、妻が仕事に復帰するタイミングで僕が育休を取り、仕事の復帰のサポートをしつつ、保育園に向けた準備をできればと思っています。
木村 Aさんの会社は、育休を取りやすい環境なのですね! 男性の育休取得率増加のための企業の取り組みについて紹介している記事もあるので、ご興味のある方はぜひ読んでいただきたいです。
Bさん 保育園問題、ありますよね。東京ほどではないのですが、福岡も人口が増えてきているので、なかなか保育園が見つからないんですよ。僕の会社はそんなに長く取れなさそうなので1カ月を2回に分けて取る予定です。
山口 地方は東京に比べて、ジェンダーの不平等を感じることが多いと思いますか? 妊活や育児の面でも感じたことはありますか?
Bさん 僕を含め僕のまわりにいるメンバーは、東京の大学に進学して地元に戻ってきたタイプが多いのでそこまで感じませんが、地元にずっと住んでいる男性の同級生は妊活や育児に積極的ではない人が少なからずいます。
木村 妊活をして子どもを授かったことで、ご自身の中で何か変化は生まれましたか?
Bさん すごく苦労したので、生まれてくる子どもに対しても妻に対しても、大切にしたいという思いがより強くなりました。
Aさん 僕は仕事中心の生活をしてきたので、今までと同じではいけないという感覚はあるし、変えようと思っています。
Bさん それに、妻とは妊活を乗り越えた今のほうが確実に絆が強くなりました。
Aさん 僕もどんどん仲良くなっていくのを感じています。
Cさん 二人の話を聞いて、改めて妊活に向き合うことの大切さを感じました。夫婦がお互いに何を考えているのかを伝え、会話をすることが必要だということもわかったので、これを機にもっと妻と会話する時間を増やしていこうと思いました。
山口 月並みですが、妊活はどちらか一方が頑張るものではなく、二人の共同作業なんだということがよくわかりました。僕に素敵な相手が現れて、一緒に子どもを作りたいと思ったときの参考にさせていただきます!
イラスト/喜田なつみ・MIDORI KOMATS(木村と山口の似顔絵) 取材・文/菊池美里 企画・構成/木村美紀(yoi)・山口 朗(MEN'S NON-NO)