伸ばした髪をカットして医療用などのウィッグのために提供する「ヘアドネーション」。これまで日本での認知度は低かったけれど、女性芸能人がヘアドネーションに参加した事例などから、その認知度は徐々に高まってきています。

二人に一人ががんになるといわれる今、医療の進化もあってがんの生存率が上がり、社会とかかわりを持ちながら治療をするケースも増加中です。こうした現状から注目されているのが「アピアランスケア」(※がん治療による外見の変化に対応するさまざまなケア)。なかでも医療用ウィッグは、抗がん剤治療の副作用による脱毛に悩む人にとって重要なアピアランスケアです。

そんななか、ファイントゥデイ資生堂のヘアケアブランド『フィーノ』は、医療用ウィッグにかかわるすべての人をつなぐプログラム【HAIR TOUCH YOU のばせば届く。】の一環として、6月9日から「fino ウィッグBank」でヘアドネーションの受付を開始しました。

ヘアドネーションのイメージイラスト

ヘアケアブランドが取り組む医療用ウィッグのサポート活動

2004年のブランド誕生以来、スキンケア発想のアプローチでヘアケア商品を展開している『フィーノ』。人気トリートメント製品「プレミアムタッチ 浸透美容液ヘアマスク」や「プレミアムタッチ 浸透美容液ヘアオイル」を使ったことがある人も多いのでは?

今回その『フィーノ』がスタートした【HAIR TOUCH YOU のばせば届く。】は、医療用ウィッグのためにヘアドネーションをした人や、でき上がったウィッグを受け取る人、美容師や医療従事者などさまざまな人の想いをつないでいくという新しい貢献の仕組み。医療用ウィッグに使う長い髪の不足や、医療用ウィッグのカットに対応してくれるサロンの不足といった現状を受けてスタートした、ヘアケアブランドならではの活動です。

なかでも「fino ウィッグBank」は、広く一般からヘアドネーションを募り、寄付された髪を医療用ウィッグ製作のために支援団体へ提供する、プログラムの中核となる取り組み。

現在、ヘアドネーションしたい場合、カットした髪の発送は一部の美容院では請け負っているものの、まだまだ対応しているヘアサロンが少なく、ドネーションをする人自身が発送するケースが主流です。そこで、「fino ウィッグBank」では、オリジナルの送付用キットを無料配布することで、髪をカットしたり送ったりすることが身近で心地よい体験になるようサポート。ヘアドネーションを希望する人は、「fino ウィッグBank」の公式サイトから無料の「finoオリジナルドネーションキット」を申し込み、届いた封筒を使用して髪を返送することができます。

31cm以上であればどんな髪の状態でも寄付OK!

「fino ウィッグBank」のヘアドネーションは、年齢や性別を問いません。31cm以上であれば、グレーヘアやカラーリング・ブリーチした髪、くせ毛など、どんな髪の状態の人でも参加可能。頭部全体を覆うウィッグ(フルウィッグ)に用いる髪の長さの世界的な基準が12インチ(約31cm)のため、31cmはヘアドネーションのひとつの目安となっています。ただし、31cmの髪で作れるウィッグはショート~ボブヘアまで。ミディアムやロングヘアのウィッグにはもっと長い髪が必要なため、「fino ウィッグBank」では31cm以上の髪を受け付けているのだそう(※ヘアドネーションの受付基準は、各団体によって異なります)。

本来は寄付された髪すべてを医療用ウィッグにするのが理想ですが、活用できない髪も少なからず存在するため、「fino ウィッグBank」に寄付された髪は、医療用ウィッグだけでなく、レンタルウィッグやウィッグ製作技術の講義用に寄贈するなど、髪の状態とニーズに応じて活用されます。ドネーションしようという想いが無駄になることなく、医療用ウィッグを取り巻くさまざまな取り組みに活用されるので、髪質などを気にすることなく安心して参加できますね。

finoオリジナルドネーションキット

公式サイトから「finoオリジナルドネーションキット」を申し込むと、返送用の封筒やヘアゴム、『フィーノ』のヘアオイルお試し用パウチなどが届きます。ドネーションをするための髪を送る封筒やヘアゴムは、『フィーノ』のブランドイメージである赤が基調のデザイン。封筒の表面にヘアドネーションの目安である「31cm以上」を計測できるスケールが印刷されているので、髪を送付する際に測ることも可能です。

活動を可視化することで「参加したい」につなぐ

寄付された髪の保管、ウィッグ製作、販売業務は、アピアランスケアの普及に尽力し、医療用ウィッグの支援活動でも実績豊富なNPO法人「全国福祉理美容師養成協会(以下、NPO法人「ふくりび」)」がサポート。医療用ウィッグの製作・販売だけでなく、ヘアドネーションや医療用ウィッグのカットに対応してくれる美容院の新たな開拓も、「fino ウィッグBank」の活動のひとつだそう。

「fino ウィッグBank」でヘアドネーションを行なった人や医療用ウィッグを受け取った人など、このプロジェクトにかかわった人々の想いをつなぐハッシュタグキャンペーンも展開中。このプログラムを応援する人は「#hairtouchyou」で、ヘアドネーションする人の想いは「#finoでヘアドネーション」のハッシュタグで集め、公式サイトや公式SNSなどで取り組みを可視化していくそうなので、ヘアドネーションへの意識がより高まりそうです。

もし今後、「長く伸ばした髪を切ろうかな」「髪を伸ばそうかな」と考えているなら、ヘアドネーションするという可能性も、ぜひ視野に入れてみませんか?

構成・文/長岡絢子 イラスト/Saki Morinaga