自分自身の健康管理はもちろんですが、一緒に暮らすワンちゃんや猫ちゃんなどのペットも、大事な家族の一員としてヘルスケアしてあげたいですよね。飼い主がしっかり様子を観察していないと、物言わぬペットの不調には気づきにくいもの。例えば、愛犬の“口内環境”のチェックや歯みがきはきちんとできていますか?
今、2歳までの犬の約80%が口腔に何らかの健康課題を抱えているといわれています。そんな中、ペットのオーラルケアブランド「PETKISS」を展開するライオン商事は6月に「犬の歯みがき習慣化プロジェクト」を始動。その中で実施した「愛犬のお世話に関する調査」*によると、オーラルケアがしっかりできているのはわずか20%であることがわかりました。
*調査対象:犬を飼育する全国1600名の男女
犬はヒトよりも口内環境が悪化しやすい!?
愛犬の歯みがきは、「手間がかかる」「愛犬が嫌がる」「難しそう」など、 難易度が高いと思われがち。ですが、オーラルケアは愛犬の健康を維持するうえで、とても重要な習慣です。 ペットに食事を与えるだけでなく、「食事と歯みがき=オーラルケア」 をセットと考えてケアすることが必要だと、同社は強調します。
でも、なぜ犬のオーラルケアがそんなに重要なのでしょう? 犬の口内環境が人間とは大きく異なるのが、その理由の1つ。実は、犬の手術理由でもっとも多いのが歯周病。犬は虫歯になりにくい傾向はあるものの、歯垢が歯石になりやすいのだとか。 通常、ヒトの口内では約25日間かけて歯垢が歯石に変化していきますが、犬の場合は3~5日と、ヒトの約5倍のスピードで変化するため、歯垢や歯石の蓄積を放置しているとすぐに歯周病を発症してしまいます。犬はとても口内環境が悪化しやすい動物なのです。
実際に、愛犬の口内トラブルを見つけた人に具体的な内容を聞いたところ、「歯石の蓄積」が全体の52.1%、「歯周病」が28.7%と、4人に1人の飼い主が歯周病を挙げていました。現在では、歯周病は口腔内のみならず心臓、肝臓や腎臓など、全身の健康にも悪影響を与えることがわかっているので、“たかが口の中のこと”では済みません。
いきなりハードルの高いケア方法を試すと失敗する
調査では、飼い主の約半数が愛犬へのオーラルケアについて「面倒ではあるが、したほうがいい」と感じているものの、実際のオーラルケアの実施状況とはかなりのギャップがあることがわかりました。
歯ブラシや歯みがきシートなどを使って愛犬のオーラルケアを毎日~週2回実施している「成功者層」は、全体の20.7%。これに対して、週1回程度以下の「中間層」、やめてしまった「離脱層」、やったことがない「未実施層」が大半を占めています。オーラルケアの必要性を感じつつも、「口をいじられるのを嫌がるので毎日のケアは難しい」「歯ブラシは嫌がるので、ガムや歯みがき用のおもちゃを使っている」など、みなさん愛犬のオーラルケアには苦労しているようです。
なかでも離脱してしまった人の中には、「嫌がって手を噛まれてしまった」「歯みがきガムもまったく使ってくれないのであきらめました」など、愛犬が嫌がる姿を見てギブアップした飼い主が多いよう。一度やめてしまった人が再び挑戦した割合は27.5%と低い一方で、再開した理由は多い順に、「犬がシニア犬になったから」39.4%、「やめたことで罪悪感があったから」 30.9%、「口臭などの口内問題が発生した」28.5%でした。
また、オーラルケア未実施層は「どのようにやればいいかわからない」と歯みがき方法について知識不足で、「いま問題が起きていないから、まだ大丈夫」「ネットで歯みがきの大事さを知ったが、まだ2歳だし大丈夫かなと思った」など、問題を先延ばしにしている様子も浮き彫りに。
愛犬のオーラルケア成功の秘訣は…「完璧でなくても続けること」
とはいえ、離脱層も未実施層も、「愛犬が嫌がることなくできるなら、毎日やってあげたい」「愛犬と飼い主がストレスなくケアできるならば、愛犬の健康を考えて責任持ってケアしてあげるべき」など、オーラルケアをストレスなく行える手段を求めているよう。
そこで、愛犬オーラルケアの成功者に継続のために必要なことを聞いたところ、「完璧でなくても行うこと」が55.2%、次に「毎日のルーティンに組み込むこと」が52.4%と、お互いに無理のないように続けていくことが成功の秘訣であるとのこと。オーラルケアを続けるモチベーションの保ち方については、「スキンシップの時間になっているから」が50.5%など、愛犬とのふれあいを楽しむことも継続の秘訣のようです。
また、「最初は口内を指でさわることから慣れさせた」「いきなり歯ブラシを入れるのではなく、遊びの中から徐々に歯ブラシで磨けるように練習を繰り返した」と、無理なく慣れさせることや、スキンシップとして楽しむことが、オーラルケアを成功させるのに大切だそう。オーラルケア成功者は、「口臭は歯周病の症状のサインのひとつであること」「犬が歯周病になると全身に影響を及ぼす可能性があること」を知っている割合が高く、リスクを把握しているからこそ、オーラルケアを意識的に継続できているともいえそうです。
5つの飼い主タイプ別「愛犬の歯みがきヒント」
ライオン商事では、 オーラルケア離脱層・未実施層が失敗した理由やできない理由を調査して、5つの「できない理由タイプ」に分類。いちばん多いのは「もうやりたくな~いタイプ」44.5%。 次いで 「無理にやらなくていっかタイプ」26.5%、 「何それ知らなかったタイプ」21.9%、「大変だし後にしよタイプ」21.2%、「まあ今のところ大丈夫タイプ」16.9%と続きます。
「犬の歯みがき習慣化プロジェクト」では、 この5つのタイプ別に、解決策となる“歯みがきヒント”を公開。飼い主は診断表から自分の課題を認識することができ、愛犬のオーラルケアにトライする際にこのヒントがおおいに役立つはず。
①もうやりたくな〜いタイプ
試してみたものの吠えられたり噛まれたり…愛犬に嫌われることが怖くて再トライする気になれないあなたは、「いろんなところをさわってみよう」。いきなり口周りを触らず、愛犬が嫌がらない範囲で距離を縮め、慣れてきたら少しずつお口にタッチ。
②無理にやらなくていっかタイプ
犬の歯みがきは大事だけど、 無理にやってお互いストレスになるくらいなら、いっそやらないほうが…と思っているあなたは、「少しずつ褒めることから」。愛犬がちょっとでも頑張ったら必ずご褒美を。
③何それ知らなかったタイプ
歯みがきのやり方や必要性がわからず、正しい情報が選べないというあなたは「歯みがきどうしたらいい?」を口癖に。習ったことがなければ、 知らないのは当たり前。 専門家に聞いたり、お友達の飼い主さんに歯みがきの話題を持ち出したりしてみては?
④大変だし後にしよタイプ
歯みがきの必要性は理解しているけれど、大変そうなイメージが先行して後回しにしがちなあなたは、「歯みがきを遊びの時間に」。楽しく褒めまくりながら、義務ではなく、愛犬と楽しむ遊びの時間に変えてみては?
⑤まあ今のところ大丈夫タイプ
愛犬はいま元気だし、 このままずっとしなくてよければラクだな…と思っているあなたは、「気になる前こそチャンス!」。愛犬のお口が気になってから病院に行っても、うまく口を開けてくれないことも。そうなる前に、今こそ準備のチャンス!
プロジェクトにかかわる獣医師の遠山洋美先生は、ペットが長生きするためにオーラルケアはとても重要だと言います。「オーラルケアは飼い主と愛犬の双方に負担がかからないことが大切です。 飼い主自身と愛犬の今ある状態を理解し、どこから手を付けていけばいいか把握することも重要。『うちの子はもう無理…』とあきらめてしまう前に、“歯みがきヒント”を活用して 歯みがきの習慣化を目指してみてください」
長く一緒に暮らしていくために。愛犬にも自分にも合った歯みがきのコツを知って、お口の健康を維持してあげましょう!
構成・文/長岡絢子 Photo by LightFieldStudios, damedeeso, Wavetop / iStock / Getty Images Plus