マスク生活が長引くなかで、これまで気にしていなかったのに「もしかして私、口が臭いかも…」と感じる方が増えているようです。なぜマスク生活で口臭がキツくなるのか、その原因や対処法、また毎日のオーラルケアのヒントを医師・ニオイ評論家の桐村里紗先生に伺いました!
ごまかしがきかない口臭は、あなたの印象を左右する
マスク生活で「口臭」を気にする人が増えているなか、カンロ飴やピュレグミで知られるカンロが「コロナ禍でのマスク生活と口臭」についての調査*を実施したところ、「自分の口臭が気になる」と感じる人が6割以上という結果に。さらに、男女別では女性のほうが気にしている傾向にあることがわかりました。
*調査対象:一都三県在住の20~69歳の男女500名 調査時期:2021年6月25日~2021年6月28日
「ニオイはその人の印象を左右するもの」だと桐村先生はいいます。「人の五感のうち、嗅覚の情報はダイレクトに本能へと伝わります。快・不快の判断に関係する大脳辺縁系に作用し、『好き』『嫌い』の感情へとつながるのです。特に『口臭』は、他人の鼻に近いところで発生するため、ごまかしがききません。そのニオイによって、印象を台なしにしてしまう可能性もあります」
口臭予防も身だしなみ同様、エチケットとして気を配りたいものですね!
“マスク口臭”はなぜ起こる? 口臭の原因をチェック!
ところで、なぜマスク生活の中で「口臭」を気にする人が増えているのでしょうか? 桐村先生によると、口臭には、誰にでも起こる「生理的口臭」と、疾患由来で起こる「病的口臭」のふたつがあるといいます。
「『生理的口臭』のおもな原因は唾液が不足すること。マスクによる口臭はこれに関係しています。また、『病的口臭』の原因の8割は歯周病だといわれています」。以下は、桐村先生が挙げてくれた口臭のおもな原因です。あなたは思い当たるものがいくつありますか?
●口の乾き
マスクを着用すると息苦しいと感じ、無意識に口呼吸になっている人が多くいます。すると、知らないうちに口の中の唾液が乾いてしまうことに。「唾液には天然の殺菌作用があり、口の中を洗い流す役目があります。健康な人であれば唾液は1日2ℓほど流れていて、悪い菌をどんどん流しているんです。その唾液が不足すると口腔内の細菌が増殖しやすい環境となり、これが口臭の原因につながるのです」
●歯周病
歯周病の原因となるのは、歯と歯ぐきの間に繁殖する細菌。これらが炎症を起こして歯肉炎や歯槽膿漏を引き起こします。桐村先生によると、「程度はさまざまですが、20歳以上は7割、35歳以上は8割が歯周病」なのだとか。
「その一方で、自分は歯周病ではないと思っている人が多く、ほとんどの人が自覚を持ってケアをしていないのが実態です。自分は歯周病だという前提で、歯と歯ぐきのケアをすることをおすすめします」
●女性ホルモンの影響
歯周病や口臭は、高齢者や男性の悩みで「自分には関係ない」と思っている人もいるのでは? ところが、実は女性こそリスクが高いと桐村先生はいいます。
「女性の場合、妊娠時・月経時・思春期・更年期などに口臭がキツくなることがあります。これは女性ホルモンの影響によるもの。エストロゲンはある種の歯周病菌を増やしてしまう働きがあり、プロゲステロンには炎症を起こす働きがあります。特に妊娠期は女性ホルモンの分泌が増えるため歯周病のリスクも高まるうえ、妊娠中の歯周病は低体重児や早産のリスクになることも指摘されているので、若いうちから歯周病を予防することはとても大切なんです」
歯ブラシだけでは不十分!? 口臭予防のためのオーラルケアとは
桐村先生によると、口臭対策のいちばんのポイントは、口腔内細菌の繁殖を防ぐこと。つまり、「唾液をしっかり出すこと」と「歯周病を防ぐこと」です。そのためには日頃どのようなオーラルケアに取り組んだらいいのでしょうか?
●歯周病ケアの3大鉄則は「ブラッシング・フロッシング・イリゲーション」
「歯ブラシでのケアは当たり前。でも、それだけでは不十分です」と桐村先生は断言します。「歯周病の原因となる細菌は、歯と歯ぐきのあいだにある歯周ポケットに潜んでいます。通常のブラッシングではこうした汚れは落としきれず、どんなに頑張っても6割程度。歯間ブラシやデンタルフロスなどを使用して、やっと8割の汚れを落とすことができるんです」
そこでおすすめしたいのが、イリゲーションという水流洗浄法。日本ではまだあまり聞きなれないですが、オーラルケアが常識の欧米では一般家庭で水上洗浄機が普及しているものなんだとか。水流の力で歯周ポケットや歯と歯間に残った汚れを取り除いてくれ、これで9割の歯垢が落とせるといいます。
「歯周病ケアには、ブラッシング・フロッシング・イリゲーション、この3つが鉄則だと覚えておいてください。さらに定期的に歯科クリニックでクリーニングしてもらえば完璧です!」
●舌のケア&殺菌はやりすぎ禁物!
舌のケアも意識したいところですが、やりすぎは禁物! 味覚障害などを起こしてしまう可能性があるのだとか。一日一回を目安に、舌専用のブラシで優しくなでるように汚れを落とすのがコツです。
また、殺菌成分の入ったマウスウォッシュや歯磨き粉は、使いすぎると口の中の環境を守っている常在菌までも殺してしまうことに。「殺菌することよりも口腔内の菌のバランスを整えることを意識しましょう。プロバイオティクス入りのオーラルケア用品やタブレットを活用するのも手です」
●ストレスケア&唾液マッサージでサラサラ唾液を出す
緊張すると口の中が乾くことがありませんか? 桐村先生によると、ストレスも唾液を減らし「口臭」を招きやすくなる原因のひとつだそう。
「洗浄作用のあるサラサラとした唾液をたくさん出すためには、日頃からヨガやエクササイズ、アロマなどを取り入れて、心身をリラックスすることを心がけましょう。また夏場はシャワーだけで済ませる人も多いですが、ゆったりと入浴して体を温めることも、ストレスケアには有効です」
また、唾液をたくさん出すためには「唾液腺」を刺激するマッサージもおすすめだとか。唾液の分泌を促す3つの場所「耳下腺(じかせん)」(耳たぶの前方、上の奥歯あたり)「舌下腺(ぜっかせん)」(下顎のくぼみあたり)「顎下腺(がっかせん)」(あごの骨の内側の左右のやわらかい部分)に指を当て、優しくプッシュすることで、唾液が出やすくなるそうです。
毎日のオーラルケアを習慣に。先生&編集部おすすめの口臭予防アイテム
「歯間ケアや水流洗浄なども取り入れて日常のケアをしっかり行うこと、また、ストレスケアを心がけ、自分の唾液を生かすことが、口臭予防につながります。オーラルケアを習慣にすることで、マスク生活でも自信が持てるようになりますよ」と桐村先生。
そこで毎日のケアに取り入れたい口臭対策アイテムをピックアップ! 桐村先生が愛用するアイテムも教えていただきました。
●「ジェットウォッシャー」
超音波水流ノズルが歯ブラシでは取りきれない歯周ポケットや歯間の汚れまで、しっかり洗浄します。水圧レベルが10段階まで調整可能。「毎日の歯ブラシにプラスして使いたい必須アイテムです」(桐村先生)
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ジェットウォッシャードルツ(白) EW-DJ75 ¥19,800/パナソニック 0120-878-697
●「プロデンティス」 (タブレット)
口腔内の菌質を健康に保つ天然乳酸菌が生きたまま配合されたオーラルプロバイオティクス。「口の中で舐めるタブレットタイプです。バクテリアセラピーで口内の菌バランスを整えましょう」(桐村先生)
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プロデンティス 30錠 ¥3,240/バイオガイアジャパン 0570-081-055
●歯磨き&口腔ケアジェル
天然由来の食品のみで作られた、研磨剤・化学成分無配合の歯磨き・口腔ケアジェル。歯周病菌や虫歯菌を抑制する植物由来の乳酸菌による抗菌成分を配合。「これひとつで口腔内の洗浄や口内保湿、口臭予防がかないます」(桐村先生)
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オーラルピース クリーン&モイスチュア(歯磨き&口腔ケアジェル)80g ¥1,320/トライフ https://oralpeace.stores.jp/inquiry
内科医/tenrai代表取締役医師
最新の分子栄養療法や腸内フローラなどを基にした予防医療、生活習慣病から終末期医療、女性外来まで幅広く診療を行う。また、「プラネタリーヘルス」や「フェムケア」など、ヘルスケアを通した社会課題解決や世界の最新ヘルストレンド情報をさまざまなメディアで発信するほか、プロダクト監修も行う。ニオイ評論家としてフジテレビ「ホンマでっか!?TV」「とくダネ!」などメディア出演多数。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』『腸と森の「土」を育てる~微生物が健康にする人と環境』(いずれも光文社新書)などがある。
構成・文/秦レンナ イラスト/くらちなつき