バッグの中にお気に入りのケアアイテムがあるだけで、なんだか安心できるという人は多いはず。ほっとひと息つきたいとき、リフレッシュしたいとき、さっと取り出して、自分のためにケアをする。そんな時間は心を優しく癒やしてくれます。
連載「SELF-CARE RELAY」では、今気になるあの人に、そんなセルフケアの愛用品をご紹介いただきます。前回のイズミダ・リーさんからバトンを受け取ったのは、ヘアメイクアップアーティストの池田奈穂さん。仕事で忙しい日々が続いても、自分のバランスを見失わないように、日頃からセルフケアを心がけているそう。落ち込んだときはどうする? お気に入りのアイテムは? 美容のプロである池田さんならではのバッグの中身を見せていただきました!
Vol.9 ヘアメイクアップアーティスト 池田奈穂
池田奈穂/NAHO IKEDA●1992年2月生まれ。大阪府出身。美容専門学校卒業後、東京のヘアサロン「boy」で働く。27歳のときワーキングホリデーでロンドンに2年間滞在。2021年の帰国後はフリーの美容師、ヘアメイクアップアーティストとして、ファッション雑誌や広告を中心に活動する。
年齢や経験を重ねるなかで、時間の使い方や、身につけるもの、ケアの仕方など、自分にちょうどいいバランスがわかってきたという池田さん。セルフケアのアイテムや持ち物に関しては、周囲のペースや流行ではなく、“ずっと一緒にいたい”という感覚を大切にしていると言います。
Naho's Self-Care Rules
1. 睡眠時間は削らない
2. ずっと一緒にいられるものを選ぶ
3. やりたいことを見つけたら、まず行動
バッグの中身はこんな感じ
「今日のバッグは、『SAGAN Vienna(サガン ヴィエンナ)』。デザイナーが同じ関西出身ということで、一緒に飲みに行くくらい仲良しなんです。このバッグは、ブドウの搾りかすから作られるグレープレザーを使用しているそうで、本革のような風合いと白いステッチが特にお気に入り。キーリングは、ホーンのチャームにひと目惚れして、ずっと使っています。仕事柄、意外に思われるかもしれませんが、普段は自分のコスメはほとんど持ち歩かず、バッグに入れているのはリップくらい。今日は特別です(笑)」
睡眠、お風呂、友達とのおしゃべり…心地いいバランスを保つためこまめなケアを
「27歳のときワーキングホリデーでロンドンに渡り、2年前に帰国してからは、ヘアメイクと美容師の仕事を兼業しています。最初はヘアメイクの仕事にこだわっていましたが、髪を切ることも大好きだし、せっかく『切ってほしい』と言ってくれる方がいるのだからと、どちらも続けていこうと決めました。連日撮影の仕事が続くとやっぱり精神的にしんどさを感じることもあり、サロンでお客さんと接する時間は、いい気分転換にもなっています。私は性格上、ひとつのことだけを、ひとつの場所で、ということが苦手なので、今の自由な働き方は、合っているんだと思います。
とはいえ、独立してからはやっぱり不安なことも多く、初めのうちは暇になることがとにかく怖くて。仕事と生活のバランスを取るのがなかなか難しかったですね。でも、最近は、そういう時間にこそ、部屋の掃除をしようとか、料理をしようとか、友達に会おうとか、忙しいとなかなかできないことをできる時間だととらえられるようになって。“暇”をポジティブに考えられるようになってきた気がします」
「20代の頃は、『何日でも働ける!』という勢いで突っ走り、必ず年末年始になると気が緩んで体調をくずす、ということを繰り返していました。経験を重ねて学んだのは、『私は寝なきゃダメなんだ』ということ。今も仕事がハードであることに変わりはないのですが、睡眠時間を削ることはしません。『今日はここまでにしよう』とか、『いったん家に帰って10分横になろう』『頑張ったからタクシーで寝ながら帰っちゃおう』と、体力をセーブできるようになりましたし、体調管理にも気を遣うようになりました。
例えば、お風呂もそうです。疲れた日こそ、シャワーで済まさずお風呂にちゃんとつかるようにしています。1日じゅうロケだったときなど、体をしっかり温めると次の日の回復具合が全然違うなと思います。仲のいい友人と銭湯に行くのも好きで、週に1、2回行くことも。湯船につかりながらおしゃべりしていると、すごくリフレッシュできるんですよね。こういうこまめなケアのおかげか、今は風邪もひかなくなりましたよ」
シャンプーでカサカサに...。仕事で使う手指はしっかり保湿
「手を使う仕事なので、どうしても荒れやすく、ハンドケアは欠かせません。サロンで働いているときはシャンプーを1回しただけで、指先がカサカサになってしまうので、お客さまをお見送りするたびすぐにクリームを塗っていました。特に冬場は余計に乾燥しやすく、爪まわりが硬くなってしまうことが悩みでした。それで、この『uka(ウカ)』のネイルオイルをいただいたのをきっかけに、爪まわりもケアするように。『uka』は、ハンドクリームもオイルも、いい香りで癒されますね。
最近は、消毒でも手指が乾燥しがちですが、この『HAAN(ハーン)』のクレンジングハンドスプレーは、保湿効果もあるのがお気に入りです。いつでもさっと使えて、香りもよく、さらにリフィルがあるのも助かります」
仕事のあとは、心地よいウッディな香りでリフレッシュ
「香りものは大好きなのですが、仕事中はモデルさんやお客さまのことを考えて、香水はなるべくつけないようにしています。香りをまとうのは、仕事が終わってひと息つきたいときや、友人と食事に行く前。なので、持ち運べて、出先で手軽に塗れるロールオンやスティックタイプが便利ですね。
『FRAMA(フラマ)』 のオイルフレグランスと出合ったのは、コペンハーゲンを訪れたとき。私はどちらかというと、甘いフローラル系や、香りが強すぎるものは苦手なのですが、この香水はやわらかいウッディ系の香りが心地よく、すぐに気に入って購入しました。大きいボトルタイプも家に置いています。
友人からお土産にもらった『TAMBURINS(タンバリンズ)』は韓国のブランドで、こちらもウッディ系の香り。スティックタイプで口紅のようなフォルムもかわいいですよね。体温でより香りが立つのか、動くたびふんわりと広がっていく感じが好きです」
人と比べてうらやましがるより、行動しよう!
「意外だと思われるのですが、私は結構ネガティブで、人と比べて落ち込むことも、しょっちゅう。でも、ここ数年で海外に暮らしたり、独立していろいろな仕事を経験したりするなかで、少しずつ前向きに変わってきたような気もします。
これまでは、まわりの目を気にしてしまったり、先に考えすぎてしまったりして、なかなか行動に移せないタイプだったのですが、今は、『人をうらやましがるより、行動しよう』ということを心がけています。実際、動いてみると結果を出せることも多くて、『なんでもできるかも!』という気持ちになれるんですよね。そういう積み重ねが、自信に変わっていったのかもしれません。もちろん、気持ちには波があって、つい弱気になってしまうこともいまだにあるのですが…」
「いいな、素敵だな、と思う人って、すごく行動しているんだと気づいたことも大きかったかもしれません。それまで『ラッキーな人だな』と思っていた人が、裏でめちゃくちゃ努力をしていたり、自分から積極的に動いている姿を見たときに、ハッとして。私も頑張らなきゃと思ったんです。
去年は、とにかく目の前の仕事で精いっぱいだったけれど、今年はもう少し自分のやりたいことに集中してみようと思っています。その第一弾として、近くパリに行くんです。向こうでは、これまで経験できなかったショーの仕事のチャンスを掴めたらと思っています」
普段力を入れないパーツに目を向けて。気分が変わるメイクのコツ
「なんだか気分が落ちていて、気分を変えたいなというときは、メイクの力に頼るのも手ですよね。ちょっとアイラインを入れてみるとか、そのラインも、普段は黒を選ぶけどブラウンにしてみるとか、普段、自分がメイクであまり力を入れない部分に目を向けてみると、“いつもと違う感”を楽しめます」
(奥左)ペタルソフト リップスティック クレヨン 300 LEA (奥右)ペタルソフト リップスティック クレヨン 303 JEANNE/LAURA MERCIER (手前)ボーム・デ・ミューズ - アイボリー/OFFICINE UNIVERSELLE BULY
「私はリップの色を変えることが多いですね。『LAURA MERCIER(ローラ メルシエ)』のリップスティッククレヨンは、ペンシルタイプなのにうるおいがあるのがお気に入りで、よく使っています。仕事のときはベージュ系を選ぶことが多いですが、友人とごはんに行くときは赤系に塗り変えることも。服装や気分によって使い分けています。
下地には、『OFFICINE UNIVERSELLE BULY(オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー)』のリップバームを。容器がかわいいだけではなく、しっかり保湿もしてくれます。これは、20代の頃パリへ貧乏旅行をしたとき、それでも記念に何か欲しいと、本店で購入した思い出の品です」
落ち込んだときは、買い物で気分を上げて
「メイクだけでなく、アクセサリーで気分を変えることも多いかもしれません。ピアスはいくつか持ち歩いて、付け替えることもありますし、リングはいつもその日の気分に合わせて選んでいます。アクセサリーを以前より楽しむようになったのは、髪をショートにしたことがきっかけです。ボーイッシュになりすぎてしまうというときに、アクセサリーをプラスするとバランスがよくなると気づいて、あれこれ工夫してみるようになりました」
Fleur earrings - Almost black/Sisi Joia
「落ち込んでどうしようもないときは、お買い物が効果てきめんです(笑)。私はファッションが好きなので、欲しいものを買うことがモチベーションや励みになっています。最近買ったのは、『Sisi Joia(シシジョイア)』のピアス。こういう海外のかわいいブランドを見つけるのがすごく楽しくて。気になるものを見つけては、『次のお給料が入ったら、これを買おう!』と考えてワクワクしています」
実はすごい効果が! 1年じゅう愛用するのは、おなじみの日焼け止め
(左から)アネッサ ブライトニングUVジェル N〈日焼け止め用ジェル〉90g/資生堂(小さいボトルは詰め替え用として池田さんが使用) フローレス ルミエール ラディアンス パーフェクティング クッション/ LAURA MERCIER
「ベースメイクでいちばん重視しているのは、保湿です。『LAURA MERCIER』のクッションファンデーションは、うるおい感が魅力。薄づきだけどちょうどいい具合にカバー力があって、ちょっとしたお直しにも使いやすいのがお気に入りです。
そして、1年じゅう欠かせないのが、『ANESSA(アネッサ)』の日焼け止め。ロンドンにいたころ、向こうの人たちは太陽が出ていたら喜んで浴びに行くという感じで、私もつられて日焼けを楽しんでいたんです。でも、日本に帰ってきたら、シミやシワがすごく増えていることに気づき、慌ててケアしなきゃと思って。
日焼け止めというとやっぱり乾燥が気になるという方も多いと思うのですが、『ANESSA』は、これまで何度も改良が重ねられてきて、スキンケア成分、保湿成分、さらに『太陽光を美容効果に変える』最新技術まで取り入れられていて、もう、すごいんですよ(笑)。私は毎朝欠かさず塗っていますが、乾燥もありませんし、むしろ美肌に見せてくれるので、本当に手放せないアイテムなんです」
自分の感覚を大切に、ずっと一緒にいたいものを選びたい
「最近は、どんなものも、“ずっと一緒にいたいかどうか”を基準に選ぶようになりました。以前は“流行っているから”という理由でなんとなく買ってしまうということもありましたが、少し前に、ファッションやインテリアなど、女性の体をモチーフにしたデザインやロゴが流行りましたよね。そのとき、私はなんだか違和感を抱いて、『きっと、自分は飽きてしまうだろうな』と思ったんです。
それがきっかけになって、まわりの“かわいい”より自分の感覚を信じてみようと、冷静に考えるようになりました。服であれば『こんなふうにもコーディネートできるな』と、飽きずに着られるかどうかを考えますし、インテリアなら、引っ越してもずっと飾りつづけたいと思えるものを選びます。それはケアアイテムも同じですね。だんだん身のまわりが、いつも一緒にいたいと思うものたちでまとまってきました」
(左から)<冷茶> ALWAYS 5g×16パック /SA THÉ SA THÉ トラベルタンブラー 500mL/KINTO オーガニックコットン ウォッシュクロスタオル/TEKLA
「『TEKLA(テクラ)』のタオルは、色がかわいくてついつい集めてしまうんです。最初の一枚は、外出先でハンカチを忘れてしまって、セレクトショップで購入したものでした。いつか、ベッドのシーツも『TEKLA』にしたいなぁと思っています。
『KINTO(キントー)』のタンブラーは、友人に誕生日プレゼントしてもらってから、愛用しています。大好きな『SA THÉ SA THÉ(サテサテ)』のお茶を入れて持ち歩くことが多いですね。この冷茶は、水出しができるので、夏は冷たくしていただいています。『今日は緑茶にしよう』とか、『ほうじ茶にしよう』とか、気分でティーパックを選ぶ時間もまた楽しいひとときです」
今は仕事を頑張るとき。焦らず、自分のバランスを大切に
「占いでも、とにかく全部の運が仕事に集中していると言われるし、まわりからも『すごく仕事頑張ってるね!』『いつも忙しそう!』『すごいね!』と言われるのですが、自分ではあまりそうは思っていなくて。好きなことを仕事にできている自分は、めちゃくちゃラッキーなんだな、と感じる一方、年齢的にもまわりに結婚して、家庭を持って…という友だちが増えてきて、そんな生き方も『いいなぁ』と思うことが増えました。もちろん仕事は好きだし、仕事をしない人生はたぶん無理なんですけど、それだけに身を捧げたいわけではなくて。でも、“今はそういう時期”なんだと納得しています。焦らず、自分のバランスを大切に、今を楽しみたいですね」
取材・文/秦レンナ 撮影/飯塚康平