バッグの中にお気に入りのケアアイテムがあるだけで、なんだか安心できるという人は多いはず。ほっとひと息つきたいとき、リフレッシュしたいとき、さっと取り出して、自分のためにケアをする。そんな時間は心を優しく癒やしてくれます。

連載「SELF-CARE RELAY」では、今気になるあの人に、そんなセルフケアの愛用品をご紹介いただきます。前回の吉田玲香さんがバトンを渡したのは、絵描きのイズミダ・リーさん。出張が多いというリーさんが見つけたお気に入りのケアアイテムや、いつでもポジティブに、自然体でいられる理由とは? リーさんらしい魅力の詰まった、バッグの中身を見せていただきました。

Vol.8 絵描き イズミダ・リーさん

イズミダ・リーさん

イズミダ・リー/LEE IZUMIDA●1986年北海道生まれ。幼少期から絵を描き始め、アメリカ留学時に絵を学ぶ。2015年より東京に拠点を移し、2019年より本格的に絵描きとしての活動をスタート。アクリル画の作品を中心に、看板や宣伝美術、ウィンドウに用いられる絵や文字を描く。毎年個展を開催するほか、アーティストやファッション・ビューティブランドとのコラボレーションなど幅広く活動を展開している。

イズミダ・リーさん

「食べて・寝て・笑う」ことが何よりのセルフケアだというリーさん。絵を描くためにも日々の体調管理は欠かせないと言います。愛用するのは、自分の今の状態や気分に合わせて選ぶケアアイテム。体調も、気分も、見た目も、常に変化するものだから、自分はこうだと決めつけないことを大切にしているのだそう。


 

 Lee's Self-Care Rules
1.好奇心を大切に、常に自分をアップデートしていく
2.ものへのリスペクトを忘れない
3.「ありがとう」「大好き」を伝える

バッグの中身はこんな感じ

イズミダ・リーのバッグの中身

「荷物はいつもできるだけコンパクトにしたい派。手ぶらで出かけることも多いのですが、今回は出張も想定したバッグの中身です。Loewe(ロエべ)のバッグは、カジュアルなファッションに合わせやすくてお気に入りです。爬虫類が好きなので、カエルのモチーフにグッときました。作りがしっかりしているので長く使えるところも魅力。おばあちゃんになるまで大事に使いたいですね。出張先で絵を描くことも多いので、スケッチブックなども画材入れに入れて持ち歩いています」

いつでもどこでも、あれば安心。バームとワセリンは気分で使い分ける

スキンフード 75ml / ヴェレダ ナチュラル ワセリナmini/ QUADRIFOGLIO リトルワンダーリップアンドスキンバーム/ DAMDAM スキンフード 30ml / ヴェレダ

(左から)スキンフード 30ml/ヴェレダ ナチュラル ワセリナmini/QUADRIFOGLIO リトルワンダーリップアンドスキンバーム/DAMDAM スキンフード/ヴェレダ

「手ぶらで出かけるときも、必ずバームかワセリンをポケットに忍ばせています。とくに出張などの場合、移動の飛行機やホテルはものすごく乾燥しやすいので、気になったときすぐに保湿したい。こうした持ち運びできるアイテムがあると安心なんです。香りや使い心地などが違うので、その日の気分で使い分けています。

WELEDA(ヴェレダ)の『スキンフード』は、手先はもちろん、全身マルチに使えてすごく便利。大・小どちらのサイズも愛用するお気に入りです。小さいほうはポケットに入るので、登山のときなんかにも重宝します。香りは強すぎない柑橘系。DAMDAM(ダムダム)の『リップアンドスキンバーム』も、乾燥しやすい口元や唇、手先にと、全身に使っています。ベタつかないのもいいところ。香りもスッキリした感じで好みです。バームは、乾燥対策だけでなく、頬や髪にツヤを出したいときにもいいですね。

QUADRIFOGLIO(クアドリフォリオ)のワセリンは、何より100%植物性由来ということに感動しました。ワセリンは石油由来のものが多いのですが、これなら環境に配慮しつつ、肌にも安心。無香料なので、香りを気にせずどんなときでも使えます」

好奇心を大切に、自分をアップデートしていく。絵描き イズミダ・リーさんの「バッグの中身」_5

「コスメやケアアイテムを買うときは、原料やパッケージなど、できるだけ環境に配慮しているものを選ぶようにしています。無理や我慢をしてそうするのではなく、単純に『自然が好きだから』『地球に住んでいるから』という気持ちで。でも、その感覚って、つい忘れてしまいがちなので、できるだけ意識するようにしているんです。

大げさなことではなく、絵の具も、コスメも、お洋服も、バッグも、できるだけ丁寧に長く使う。どんなものに対しても、リスペクトを忘れないようにしています。一つひとつがお気に入りであるほど、自然にそうしたいと思うはずだから、たとえ消耗品であっても大切に選ぶようにしています」

さっと香りをまとって気分転換。心落ち着くウッディなロールオンアロマ

ロールオンアロマ(シダーウッド) / Species by the Thousands

ロールオンアロマ(シダーウッド)/ Species by the Thousands

「気分で選ぶといえば、香りも。外出先でさっと好きな香りをまとって気分転換をすることもあります。Species by the Thousands(スピーシーズ バイ ザ サウザンズ)の「ロールオンアロマ」は、ウッディな心落ち着く香りで一年中活躍。出張先にもよく持っていきます。

出合いのきっかけは、Biople(ビープル)で見かけて。Cosme Kitchen(コスメキッチン)も好きで、この2つのお店はよくチェックしに行きますね。そのたびに『こんなものがあるんだ!』と発見がありますし、自分に合うものを探すのも楽しいです」

変化に合わせて、今の自分に合うものを。友達に選んでもらうのも楽しい

リップ

クイーンズタウン ホット チョコレート モイスチャー ブースト ナチュラル リップスティック 4g/Antipodes

「ケアアイテムやコスメは、いろいろ試してみるほうかもしれません。季節や気分、年齢が変われば、自分に合うものや好きなものも変化していくと思うので、『自分には絶対にコレ!』と、決めつけないようにしているんです。だから、その時々で使うアイテムも増えたり減ったりします。

メイクも、ファッションやシーンに合わせてよく変えます。今日つけているAntipodes(アンティポディース)のリップは、友人からもらったもの。自分の肌の色に合っているし、どんな服装にも合わせやすくて、よく持ち歩いています。意外とコスメを人に選んでもらうことが多いんです。普段自分では選ばないような色やアイテムに出合えたり、自分を客観視する機会にもなったりするので、おすすめですよ」

イズミダ・リーさん

できないことがあっても、“今じゃないだけ”。好奇心とあきらめの悪さがあれば大丈夫

「『これは似合わない』とか『自分にはできない』とか、あまり考えないですね。自分をどんどんアップデートしていきたいから、まずは好奇心に従ってみる。したいメイクや髪型を試してみたり、行きたい場所へ行ってみたり、そういう『まずはやってみよう』という好奇心は、仕事にも影響しています」

イズミダ・リーさん

「たとえ思うような結果が出なくても、私は、“今じゃないだけ”と思うようにしているんです。絵描きとして独立したばかりの頃は、知識も技術も経験も足りなくて、せっかくいただいたお仕事で迷惑をかけてしまったり、期待に応えられなかったり、心がズタズタになるようなこともたくさんありました。でも、その経験があったからこそ、自分が得意なことと、そうでないことがはっきりわかりました。今は、『できない』理由をちゃんと説明することもできます。それは、仕事をするうえでとても重要なことだと思っています。



世の中にはいろんな人がいて、それぞれに得意なことと苦手なことがある。できない自分を責めるよりも、そうやって世界は成り立っているんだと納得すると同時に、今はできないことも、もっと経験を積み重ねていけば、いつかはできるようになるかもしれない、とも思っています。私はかなりあきらめが悪いほうなので、きっと今後も挑戦は続けていくと思います(笑)」

イズミダ・リーさん

出張に欠かせない固形シャンプーは、あきらめの悪さから出合えたお気に入り

固形シャンプーとコンディショナー

(左上)ダヴィネスエッセンシャル ラブ コンディショナー・(左下)ダヴィネスエッセンシャル シャンプーバー ラブ・(右)オーセンティック オイル/すべてdavines 

「持ち運びに便利なdavines(ダヴィネス)の固形シャンプーとコンディショナーは、出張のときの必需品です。疲れてホテルに戻ってくると、この香りにホッとします。私は、ホテルのシャンプーを使うと信じられないくらい髪が広がってしまうので、いつも愛用しているものを持参していたのですが、固形だと液漏れの心配もないし、パッケージのゴミも出ません。

以前にも固形シャンプーが気になって試してみたことがあったのですが、そのときは、きしみが気になって挫折して。でも、最近いろんなブランドから新しいものが出はじめて、もう一回挑戦してみたいと思ったんです。そのなかで自分に一番合っていたのがこれでした。まさに、私の好奇心とあきらめの悪さから見つけた一品です(笑)。

ヘアオイルもdavinesを愛用しています。少し重めなところが好み。クセ毛で乾燥しやすい私の髪ですが、しっかりまとまって、柔らかく見えるのはこのオイルのおかげです。そのときの気分によってグリースをプラスしたり、無造作な感じにしたりとアレンジを楽しんでいます。マルチユースのオイルなので、髪に塗布したあとに、肘や手先につけられるのもいいところ。いつもそばに置いておきたいです」

意外とアナログ派。スケジュール管理は自分でカスタマイズした手帳で

手帳とキーケース

(左から)手帳/HININE NOTE key bundle ブラック/Hender Scheme
キーバンドルには、家の鍵のほかに、絵の具の缶を開けたり、ビールの栓を抜いたりする栓抜きも収納。「使っていると味が出るのがお気に入り。私の場合、絵の具がついています」

「仕事や、食事、ケアの時間など、いつもバラバラで、とくに決まったルーティーンのようなものはありません。私の場合、決めることが逆にストレスになってしまうタイプなので、その日の気分や予定で柔軟に動くようにしています。起きてコーヒーを淹れてから10分後に描き始めることもあれば、急にスイッチが入って、食事も忘れて朝まで描いてしまうことも。習慣を大切にした丁寧な生活への憧れはあるのですが、今は仕事で精いっぱい。とはいえ、体調を崩さないように、ということだけは気をつけていて、徹夜は月に3回までと決めています。

スケジュール管理は、自分でカスタマイズしたHININE NOTE(ハイナインノート)の手帳で。アナログで驚かれることもあるのですが、試しにパソコンでスケジュールをつけてみたところ、どうしても頭に入ってこない。手で書くことでしっかり覚えられるのかもしれません。

でも、手帳って、いつも絶対に使わないページがあるなと思っていたんです。そこで、余計なものは省いて、自分に本当に必要なページだけにカスタマイズしました。表紙がレザーで、繰り返し使えるのもうれしいところ。今年は、自分好みに仕立てたこの手帳で、お仕事を頑張りたいと思っています」

描くことは日常。画材はパートナー

画材

(上から)シャープペンシル Green/Astier de Villatte トラディオプラスティック万年筆/Craft Design Technology オリーブ スケッチブック<B3>/Maruman 

「私にとって絵を描くことはとても身近で、日常的なこと。好きだから描くだけ。向き合い方もすごくあっさりしています。

インスピレーションはそこらじゅうにあって、『これってなんだろう?』という疑問、過去の思い出、今考えていることなど、普段の生活の中の好奇心からイメージが浮かびます。だから途切れることがないんですよ。例えば大好きなお刺身を食べているときに、ふとこの魚はどんな姿形で、どんな生態なのだろうと気になり出してひたすら調べてしまったり。ここ数年、コロナのせいでなかなか実家に帰れなかったので、地元や実家への想いを描いて個展をやったりもしました。最近は、戦争やコロナ禍に対するメッセージを込めて、ひたすら『I LOVE YOU』とか『PEACE』とか、ポジティブなワードを描いています」

イズミダ・リーさん

「絵を描く道具はあれこれ試しましたが、今はこのレギュラーメンバーに落ち着いていますね。紙の質感や厚みが好きで、ここ数年愛用しているのは、Maruman(マルマン)のスケッチブック。量がたっぷりあるので、使い切ると、『よーしたくさん描いた!』と思えるのが気持ちいいんです。

Astier de Villatte Robusto(アスティエ・ド・ヴィラット) のシャープペンシルは、少し太めなのが特徴で、六角形で握り心地が抜群。外出先でラフ画を描くときや、デッサンをするときに使用しています。Craft Design Technology(クラフトデザインテクノロジー)の万年筆は、メモをとるときやスケジュールを描くときに使うことが多いですね。青、赤、黒の3色をストックしてます。描き心地が最高に気持ちよくて、一度使ったら癖になってしまいました」

手は大切な仕事道具。「ありがとう」の気持ちでケアを

ハンドクリーム

ハンドクリーム / DAMDAM

「手先を酷使することもあって、どうしても荒れやすいのが悩みです。荒れてしまうと痛みで気が散ってしまうので、日頃から、化粧水を使ったあとはそのまま手先にもすり込むなど、隙あらば保湿を心がけています。もはや顔よりもしっかりケアしているかもしれません(笑)。バームも愛用しているDAMDAMのハンドクリームは、ベタつかず、塗ると手肌が生き生きする感じが気に入っています。パッケージもかわいくて、使うとき気分が上がりますね。手は仕事道具ですから、やっぱり大事にしたい。いつも頑張ってくれる自分の手に、『ありがとう、お疲れさまです』という気持ちでケアしています」

イズミダ・リーさん

大きいニキビに「私、お疲れ!」。感謝とねぎらいを忘れずに

「絵を描くときはずっと集中しているので、とてもエネルギーを消耗します。もちろん体力も。ただ、好きなことをやっているときって、代謝が上がるのか、一番やせるんです。ジムに行かずとも、絵を描くことで勝手に体重管理できているところはあります(笑)。基本的にはずっと家の中で仕事をしているので、体を動かしたいというときには、山登りに行きます。自然に触れるのが好きなので、それがいいリフレッシュにもなっていますね。やっぱりたまに日光を浴びないと、気持ちも落ち込みがちになってしまうと思うので。

私は少し頑張りすぎると、お腹が痛くなったり肌が荒れたり、体にサインが出やすいのですが、それはむしろラッキーなことだと思っています。これは、自分の体が発する『これ以上頑張るのはダメ!』というサインでもあるのだと気づいてからは、個展前に描きすぎて体重が減ったときも、大きなニキビができてしまったときも、『お疲れ! 頑張ったね!』と、素直に自分の体と向き合って、そんな自分をねぎらうようにしています」

自信がなくなったら、ゆっくりまわりを見渡して。きっと、愛に気づけるはず

「私は自分でも『鉄のメンタル』と言うくらい、落ち込まないし、人と自分を比べるということもないんです。ただ、私も突然こうなったわけではなく、過去には人と比べてしまって凹むこともありました。それがいつの間にか変わったのは、好きなことを夢中でやってきたこと、積み重ねてきた経験、頑張った先の成功体験があったから。それがいつか、揺らがない自信になると思うんです。だから、“自分、頑張った”という感覚は大事にするようにしてます。自分も褒めるし、まわりの人も褒める。そのせいか、人に『頑張ってるね、大丈夫だよ』と言ってもらえることが多い気がします。それって、とても幸せなことですよね。

私がこんなにもポジティブにいられるのはまわりにいてくれる人たちのおかげ。友人たちには、いつも『ありがとう』『大好き』と、素直に伝えるようにしています。もちろん、いろんな人間関係のなかには、嫌な人もいますし、ぶつかり合うときもあります。だけど、こんなにたくさん人がいたら合わない人がいても仕方のないこと。それに、人間は変わっていく生き物なので、今は仲良くなれなくても、いつかわかり合うことがあるかもしれないとも思っています。だから、今そんなことにエネルギーを使うより、さっさと気持ちを入れ替えたほうが、きっと気持ちよくいられますよ」

イズミダ・リーさん

「たまに『自分は愛されていない』とか『ツイていない』と言う人がいますが、そんなときは、一回、まわりをゆっくりと見てみるといいんじゃないかなと思うんです。きっと、気づいていないだけで、とても些細なことかもしれないけれど『そんなことない』と思えることが、必ずあるはず。落ち込んでいるときって、きっとまわりを見る余裕がなくなっているんですよね。

私は、どんなにつらい経験も、感情も、いつか自分や誰かのために必ず役に立つと思っているんです。だから、悪い日なんてないんですよね」

撮影/佐藤将希 取材・文/秦レンナ