バッグの中にお気に入りのケアアイテムがあるだけで、なんだか安心できるという人は多いはず。ほっとひと息つきたいとき、リフレッシュしたいとき、さっと取り出して、自分のためにケアをする。そんな時間は心を優しく癒してくれます。
連載「SELF-CARE RELAY」では、今気になるあの人に、そんなセルフケアの愛用品をご紹介いただきます。前回の池田奈穂さんがバトンを渡したのは、フード&プロップスタイリストの山崎由貴さんです。食だけでなくメディカルハーブの知識も持つ山崎さん。日頃どんなことを意識して心身をケアしているのでしょうか? バッグの中身を見せていただきました!
Vol.10 フード&プロップスタイリスト 山崎由貴
山崎由貴/YUKI YAMAZAKI●幼少期からの料理好きが高じて、大学では栄養学を学ぶ。卒業後、メディカルハーブの知識を習得するために渡英。料理研究家の田中伶子氏、中村奈津子氏のもとで学び、2015年に独立。現在、フード&プロップスタイリストとして活躍する傍ら、アパレルブランド「stein(シュタイン)」とセレクトショップ「carol(キャロル)」のPRも担当する。
そのとき食べたいものや、心地よく感じる香りは、今の自分の状態を知る指標になるという山崎さん。理屈や数字で考えるよりも、体の欲求に素直に従うようにしているのだそう。「そこから、今の自分に必要なケアが見えてくるんです」。
Yuki's Self-Care Rules
1. 今食べたいもの、欲しい香りに素直に従う
2. 場所も人も、合わせようと無理しない
3. 流れに身を任せる
バッグの中身はこんな感じ
「仕事で大荷物になることもあるのですが、本来は、超小荷物派。友人にも荷物の少なさに驚かれます。色違いも持っているほど、お気に入りのバッグは『COMME des GARCONS(コム・デ・ギャルソン)』。口が大きく開くので物が出し入れしやすく、便利。仕事で使うノートも入るサイズ感もちょうどいいんです。ちなみに革小物はすべてギャルソンでそろえています。手前のポーチには、櫛やミラー、それから携帯用の染み抜きを。よく食べこぼすので必須です(笑)。ミラーもハンカチも、美術館で買ったもので、気に入った企画展ではこうしたグッズをよく購入します」
いちばん自分らしくいられる、お茶を淹れて一息つくひととき
「フードスタイリスト・プロップスタイリストと名乗っているのですが、今の自分の仕事をなんて形容したらいいのか、実はいまだにわからないんですよね。仕事では、栄養価の計算や献立を組み立てるところから、メニューやレシピの開発、調理、撮影のスタイリングまで幅広く担当しています。試作も器のリースも一人で全部やっているので、いつも1日があっという間に過ぎていってしまいます。朝はどうしてもバタバタしてしまいますが、直火でエスプレッソを淹れることだけは習慣になっていて、ビアレッティ(エスプレッソメーカー)に粉を入れ、火にかける、その一連の作業で朝が始まります。コーヒーのいい香りが目覚めの合図なんです。
日中は、マイボトル(写真中央)に好きなお茶を入れて持ち歩くことが多いですね。最近は中国茶がお気に入り。このボトルはたまたまお茶屋さんでいただいたものを、そのまま使っているのですが、飲み口に茶漉しが付いていて便利なんですよ」
(左から)406. カシミーリカーワ/CelebiTEA サマハン 4g×10包/Link Natural はちみつ/紫天狗
「変わり種では、インドのカシミール地方で飲まれている緑茶、カシミーリカーワ。シナモンやカルダモンの香りが楽しめて、現地では、このお茶に砕いたアーモンドを入れるそうです。飲むとお腹の調子がよくなるような気がします。
『サマハン』は、スパイスやハーブがたっぷり入った、ほんのり甘いお茶で、とにかく温まります。私はコンビニのカフェラテに、サマハンを入れるのが好きです。スパイシーになっておいしいんですよ。
このハチミツは、足柄の養蜂場が作るローハニー(非加熱の生ハチミツ)なのですが、優しい甘さでお茶にもよく合います」
「お茶は日によって変えています。飽きっぽいというのもあるんですが、体調によっても欲しい味や香りが変わるので、それに合わせて選ぶんです。ストレートで飲むのも好きなのですが、私はスパイスやハーブをプラスするのも好きです。例えばカモミールやバジル、ハチミツなどを加えたり。最近は、ルイボスティーにカルダモンを入れるのにハマっています。ルイボスティーは独特の香りが得意ではなかったのですが、カルダモンのスパイシーさが加わることで、すごくおいしくなるんですよ。
お茶をしている時間がいちばんほっとします。家族と食後に飲んだり、仕事後にひと息ついたり、より自分らしくいられるひとときなんじゃないかな」
食には感情がともなう。自分にとってはとても大切なもの
「父も祖父も飲食にかかわる仕事をしていたこともあって、家族みんな本当によく食べるんです。食に対しての執着がすごいというか(笑)。小さい頃から、外食の機会もほかの家より多かったかもしれないですね。今の仕事の道を選んだのは、そうした影響もあると思います。
大学では当初、医療系の献立作りの勉強をしていました。祖父が病気で入院してしまったことがあったのですが、とにかく食にうるさい人だったので、病院食はまずいと言ってなかなか食べてくれなかったんです。このままだと弱ってしまうし、とにかくなんでもいいから食べてほしいと、私が作ったものを持っていったらやっと食べてくれて。そんな祖父の姿を見ていて、長期入院の方たちにとって、食べる時間は貴重な楽しみのひとつ。誰かの救いになれるのなら、と思ったことがきっかけでした」
「でも、勉強を進めていけばいくほど、おいしさや見栄えよりも、『数字がすべて』という考えに、違和感を抱くようになっていって...。私にとっては、食べることは、人との交流やつながりでもあり、ストレスの吐け口になることもある。感情がともなう現場なのに、数字だけを優先するというのは、自分の思う食のあり方と違うと感じたんです。
それで医療系の道に進むことはあきらめたのですが、じゃあ私なりのやり方で何ができるかと考えたとき、病気や入院に至る一歩手前の段階、漢方では『未病』ともいいますが、そこで自分でケアができるような食を提案したいと思いました。それが今の仕事の軸になっています」
いつでも手軽にケアできる、優しいお菓子
「忙しいとどうしても、自分の食事は後回しになってしまうこともあるのですが、そんなとき、おやつでちょっとエネルギーチャージすることも。
ハーブや植物を使ったプロダクトを作っているブランド『SUIGEN』のピールチョコは、旅先の大分で出合いました。私、ピールチョコが大好きで、日向と甘夏を見つけて買わずにいられなくて。果実の香りが口の中にふわっと広がってすごくおいしいんです。幸せな気持ちになります。
缶のパッケージもかわいい『SATSUKI』のピールキャンディは、ソフトな食感と果実感がお気に入りです。マヌカハニーのキャンディは個包装なのがうれしい。いつも1、2個持ち歩いています。
『BOTCHAN』のCBDタブレットは、緊張する仕事や人に会う前など、少しリラックスしたいというときに舐めています。撮影などで1日テンションを保っていたあとに、なかなか力が抜けないときにも、自分を取り戻す作業のような感じで口に入れることもありますね。ミントがそこまで強くないので、食事前などでも気にしなくていいところも気に入っています。CBDアイテムは、カプセルやオイル、ボディクリームやリップなどいろいろ試していますが、タブレットは何より手軽だし、値段も手頃なのがいいですよね」
体調が気になったとき、あると安心なお守り的漢方
「漢方にも興味があって、体調に違和感を感じたときや気になる症状があるときに、飲むようにしています。私にとってのお守り的なアイテムです。
イスクラ麦味参顆粒(ばくみさんかりゅう)は、疲れを感じたときや、風邪をひきそうなときに。滋養強壮という感じですね。五苓散(ごれいさん)は、水の巡りをよくするもので、むくみや二日酔いにいいのですが、私は低気圧で起こる頭痛にも効果を感じています。麻黄湯(まおうとう)は、葛根湯と同じような役割ですね。ゾクゾクっと寒気がしたときに飲むようにしています。
それから、漢方ではないのですが、最近気に入っているのが高麗人参入りの韓国のエナジーゼリー。最近旅行に行ったときに、妹に『韓流ドラマの中で、よくみんながチュッと飲んでいる“アレ”が欲しい!』とリクエストされ、探しました(笑)。さっと手軽に飲めるし、味もおいしいんですよ。キトサン・アフターダイエットは、食べすぎたときに。旅先ではおいしいものとの出合いも多いので、必ず持っていくようにしています」
ジャンクフードを食べてしまう日も...。大切なのはそれを欲しがる自分の体を見つめてみること
こういう仕事をしているので、オーガニックとか、いいものばかり食べているんでしょといわれるんですけど、全然そんなことないんですよ(笑)。
それこそ栄養学を学んでいたときは、毎食のカロリーや栄養価を細かく計算して、その通りに食べるのが大事だと教わってきました。でも、通常の生活のなかでそれを守りつづけるのはやっぱりなかなか難しい。私は、1週間や1カ月で帳尻が合えば、基本的に何を食べてもよしとしています。例えば昨日たくさん食べたから、今日は夕方まで飲みものだけにしようとか、昨日ジャンクフードを食べちゃったから、今日は塩分を控えようとか、バランスを見て調整できればいいんじゃないかなと。
せっかくいいビオワインを飲んできたのに、帰りにラーメンを食べちゃうとか、ありますよ。台なしですよね(笑)。でも、「これが食べたい!」というときは、体が何か欲しているということなので、それには逆らわないようにしています。むしろ、そうした味の濃いものを欲する日が何日も続いたときは、実はすごくストレスが溜まっているとか、疲れているとか、体が発する合図かもしれません。今、自分が食べたいものは、自分の体を知る指標。“なぜそれを欲するのか”考えることは、自分の体調を見直すきっかけになります」
室内にこもりがちだから、積極的にビタミンDを摂取
(左から)Vitamin D Liquid 30ml/Thorne Research Denti Crush Solid Toothpaste Tabs/TOUN28
「リフレッシュしたいというときは、公園や庭園のある美術館などによく行きます。日中は仕事でスタジオなどにこもることが多いので、太陽を浴びたくて。日光にあたらないと不足しがちになるビタミンDも、日頃から積極的にとるようにしています。このVitamin D Liquidは、リキッドタイプで水がなくても飲めるのがいいんです。ビタミンDは、脂溶性なので油と一緒にとるとより吸収率が高まるのですが、これはもともとオイルなので、その点も押さえくれています。
旅先でも美術館にはよく行きます。アートはもともとあまり詳しくなかったのですが、美術鑑賞についての本を読んだりして、構図の取り方やそこにあるストーリー、色彩のバランス感など、注目すべきポイントがわかると、どんどん面白くなって。普段自分で意識して光と影の色が何色かなんて、あんまり考えたことなかったけれど、それが絵画としてペイントされていると、改めて気づくことがいろいろあるんですよね。『白だと思ってたけど紫だったんだ!』とか、そういう視点が変わるような発見や、自分のなかにない自由さに毎回感動しますし、刺激をたくさんもらいます。
そういう意味では、旅も私にとってはリフレッシュであり、刺激です。先日、韓国に行ったとき、薬のようなパッケージがかわいくて、ひと目惚れして買ったDenti Crush Solid Toothpaste Tabsは、タブレットタイプの歯磨き粉。噛んだあとに口をすすぐか、吐き出すだけ。外で歯磨きしたいときに持っておくと便利なので、持ち歩いています」
散歩はお気に入りのサングラスと、ノンストレスのイヤフォンを持って
sound earcuffs AM-TW01 WHITE/ambie サングラス/GentleMonster
「韓国といえば、こちらのサングラスも『GentleMonster(ジェントルモンスター)』という韓国のブランドのもの。今年はマスクをはずしてサングラスを楽しめそうなので、何年かぶりに新調しました。太陽は浴びたいのですが、やはり紫外線は気になるところ。目からの紫外線対策にもケアが大事と聞いてからは、特に気をつけてかけるようにしています。
散歩するときなど、サングラスとともに持ち歩くのが、イヤーカフタイプの『ambie(アンビー)』のワイヤレスイヤフォン。通常の耳穴を塞ぐタイプのイヤフォンだと、通話のとき自分の声が反響して水の中にいるようで苦手だったのですが、これにしてからオンラインのミーティングもストレスなくしゃべれるようになりました。また、家では料理をしながら通話をすることも多く、ストレスなく耳につけておけるので、本当に便利です」
ダイレクトに心に作用する香り。乗り物酔い対策にも
「「私にとって香りも食と同じくらい重要なもので、心にダイレクトに作用するものだと思っています。日常的にお茶などでハーブを取り入れる以外にも、気分に合わせてハーブやアロマの香りを楽しんでいます」
「『Safe Care』のリフレッシングオイル ロールオンは、ハッカなどの精油が入っていて、塗るとすーっとして心地よく、即効性があるところも気に入っています。気圧の変化などで頭痛がするときはこめかみに、肩こりがあるときは肩に塗っています。
食にかかわる仕事柄、普段は香水をつけないのですが、ミストタイプやバームタイプの香りを仕事終わりにサッとまとうと気持ちの切り替えになります。『SUIGEN』のミストは、ハーブの芳香蒸留水をベースにしているそうで、自然なダマスクローズの香りでとても癒されます。韓国で買った『TAMBURINS』パフュームバームも、最近のお気に入りです。
仕事では移動も多いのですが、実は酔いやすく乗り物が苦手。乗る前やちょっと気持ち悪くなってきたなと思ったときに使うのが、デ・マミエール アルティテュードオイルです。ハンカチに垂らして呼吸すると、すごく楽になるので必需品なんです」
“30代なのに”は気にしない。ハイトーンカラーのヘアをトレードマークに
「大学を卒業したあとは、メディカルハーブについて学ぶためイギリスへ留学しました。日本での新卒のチケットを捨ててしまうことになるので、やっぱり不安もありました。まわりの友人たちはみんな就職していくなかで、私はこれでよかったんだろうか、という思いも抱えながらイギリスに行きました。
でも、向こうでは、35歳で学生している人もいれば、音楽をやるためにイギリスに来て、気づいたらレストランのシェフになっていたという人なんかもいて。日本にありがちな『◯歳までに〜しなきゃ』とか、『◯歳なのに〜なんておかしい』みたいな考えがまったくないんです。そうした人々と触れ合うなかで、今まで抱えていた自分の不安が、テンプレート的な考えに縛られていただけなんだと気づくことができて、気持ちも穏やかになりました」
(左から)キューティクル モイスチュア ジェル 20g/LONGLEAGE Lip Balm – Mint 15g/NOOSA BASICS トゥーグッド マルチベネフィットオイル Purification of Mind 50ml/SINN PURETE
「『30代なんだから』というような考え方から、自由になりたかったのもあって、2年くらい前に、髪の毛をハイトーンカラーにしたんです。食の仕事をしている方で、こんな色の方はあまりいないので、トレードマークにもなりました。ただ、きれいな状態を維持するためにケアはこまめにするようにしています。乾燥するので『SINN PURETE』のヘアオイルを小分けにして持ち歩いて、気づいたら保湿を。このマルチオイルは、香りにもすごく癒されますし、パッケージもかわいくて、家に置いておくだけでうれしくなります。
持ち歩くケアアイテムは、保湿系のものが多いですね。『NOOSA BASICS』のリップバームは、天然植物成分100%の無添加なのですが、使用感がよく、うるおいが持続します。環境に配慮したノンプラスチックの容器もお気に入りポイントです。仕事柄手荒れもしやすいので、爪まわりには栄養をこまめに与えるように意識しています。『LONGLEAGE』のネイルジェルは、オイルと違ってべたつかないところがよく、重宝しています」
流れに身を任せつつ、溺れないように、沈まないように、ケアをする
「自分の夢に向かってちゃんと人生設計しているように見えるかもしれませんが、そんなこと全然なくて。これまでも、自分で目標を立ててそれに向かってひたすら動くというよりも、流れに身を任せるほうが最終的にうまくいくことが多かったように思います。なので、無理して頑張るより、『どうしたら力を抜くことができるか』ということにフォーカスしているかもしれません。
例えば、人であっても場所であっても、好き嫌いとは別に、そのときの自分に合う、合わないって、あると思うんですよね。若い頃はそれでも無理して合わせていたんですけど、頑張れば頑張るほど自分がいびつになっていく気がして、すごく疲れてしまったんです。今は、居心地が悪いと感じたら早めに帰るとか、上手に無理をしないやり方がわかってきたような気がします。
ただ、最初から『合わない』とは決めつけないようにしています。まず知って、経験してみないと、自分に合うかどうかも考えられないので。本屋さんで平置きの本をとりあえずジャケ買いしてみるように、最初はいろんな角度から、ひかれるものがあったら試してみるようにしています」
「流れに身を任せていたら、自然と今の幸せにたどり着きましたが、流れのなかを必死に泳げる体力のある人だったら、もしかしたら全然違う景色の場所へたどり着けたかもしれない。でも、私にはその体力も技術もないし、だからやっぱりこれからも、流れに身を任せて漂っていくと思います。ただ、のまれないように、溺れないように気をつけながら。そのためにケアが必要なんですよね。
とはいえ、日々のケアもたまに面倒になることもあって...。そういうとき、私は新しいアロマだったり入浴剤だったり、ケアアイテムをちょっとずつアップデートするんです。そうすると、『お風呂入るのめんどくさいな…。あ、でも新しいシャンプーある!』と、それが楽しみになる。だから気になるものがあったら、どんどん試してみたいんです」
取材・文/秦レンナ 撮影/山野一真