Ed Sheeran アルバム『-(サブトラクト) 』ジャケット写真

『-(サブトラクト) Ed Sheeran 国内盤¥2970 発売中/ワーナーミュージック・ジャパン
作詞・作曲/Ed Sheeran, Fred Gibson, Max Martin, Shellback 和訳/染谷和美

喪失から抜け出し、再び歩き出すための支えとなる一曲

もし大切な人がこの世を去ってしまい、悲しみや後悔、恋しさで押しつぶされそうになったときは、シンガーソングライター・Ed Sheeran(エド・シーラン)の『Eyes Closed』を。コントロールできない感情にそっと寄り添い、これからも続く人生を再び歩き出すための伴走曲になってくれるから。

イギリス出身の世界的ポップスター・Ed Sheeranが、デビューアルバムから続けてきた、数学的タイトルを冠したアルバムシリーズのラストを飾る『-(サブトラクト)』をリリース。今作は、親友の死や、最愛の妻に腫瘍が見つかるなど、心を打ち砕かれるような悲劇に同時に見舞われた彼が、音楽に救いを求めて制作。これまで発表した作品の中で、エドの最もか弱くて、ありのままの姿が鮮明に描かれている。

エド・シーラン:THE SUM OF IT ALL|予告編|"Shape of You"などのヒット曲を生んだ天才アーティストのドキュメンタリー|Disney+ (ディズニープラス)
これまで明かされてこなかった彼の半生に迫るドキュメンタリーでは、最新アルバム『-(サブトラクト)』制作期間中の彼の姿がたっぷり映し出される。

そんなアルバムのリード曲『Eyes Closed』は、昨年2月に急逝した親友で、エドの成功の立役者でもある、人気音楽YouTubeチャンネル“SBTV”の創設者で、DJのジャマル・エドワーズに捧げた楽曲。この曲で、エドは親友の不在に〈どうしたら元気になれるんだろう〉〈なんでこんなにキツイわけ?〉と、行き場のない悲しさを吐露する。

ミュージックビデオは、喪失感に心が占拠されていく様子を表すように、真っ暗な深海へと沈んでいくエドの姿から始まる。続くバーのシーンに移ると、お酒を飲みながら悲しみに暮れるエドの横に、彼にしか見えない巨大な青い生き物の姿が現れる。青はジャマル・エドワーズの色だったそうで、親友の分身ともいえる生き物にずっと見守られるなか、エドは〈人生はただ続いていくんだ 目を閉じたままひたすら踊る〉と亡き友人に思いをはせる。

大切な誰かを失ったとき、気持ちにフタをして、平気なフリをしようとしなくていい。複雑な感情を吐き出して、悲しみに暮れていいのだとエドは教えてくれる。そして、後悔や無力感など、解き放った感情に押しつぶされそうになったら、目を閉じてその人とともに過ごした愛おしい日々を思い出し、大切な人をそばに感じる。そうすることが、喪失のどん底から抜け出すひとつのきっかけになると気づかせてくれる。

Ed Sheeran - Eyes Closed [Official Video]
映画『Harvey』(1950年)にインスパイアされたMV。この映画に登場する主人公だけに見える大きなウサギを見て、エドもMVの中で自分だけにしか見えない巨大な青いモンスターを登場させた。

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文/海渡理恵 編集/国分美由紀