女性が女性に向けて歌うRomy（ロミー）のラブソング【海渡理恵の世界は鳴っている Vol.9】

踊ることは、自分の感情を認知、活性化させる効果があるという。そんな心の解放をサポートしてくれるダンサブルな音楽を生み出すアーティストがいる。2005年、英国・サウスロンドン出身の3人組バンド、The xx（ザ・エックス・エックス）の一員として10代のときにデビューしたRomy（ロミー／Vol.&Gt.）だ。シンガーソングライター、プロデューサー、DJといった多岐にわたる才能で、世界中から熱烈に支持されている。

そんな彼女が、昨年秋にリリースした初のソロアルバム『Mid Air』は、愛や悲しみ、恋愛関係、セクシュアリティなどをテーマにしており、クィアコミュニティへの愛に満ちあふれている。全体を通して高揚感あふれるダンスサウンドが特徴で、10代のときにクラブに通いはじめ、そこに自らの居場所を見出したRomyのルーツが感じられる。

『Mid Air』には、女性と恋に落ちる親密さを歌った「Loveher」や、“傷ついたとしても彼女に恋していることを隠したくない”と歌う「She’s On My Mind」など、女性が女性に対して歌うラブソングが多数収録されている。今作から自らのセクシュアリティをオープンにつづるようになったRomyは、こうした楽曲の制作について、自身が10代のときに、数少ないながらもそういった楽曲に心動かされた経験が原動力のひとつになっている、とメディアのインタビューで明かしている。

さまざまな角度から“自分らしく生きること”を後押しする楽曲がそろう本作の中でも、「Enjoy Your Life」は人生に迷ったときに頼りになる一曲。グレン=コープランドの「La Vita」に出てくる〈My mother says to me 'enjoy your life'〉というフレーズをサンプリングして制作されており、トランシーなサウンドに乗せてリフレインされる“人生を楽しもう”というシンプルなメッセージが、一瞬にして霧が晴れたような気分にしてくれる。

また「Strong」では、“ひとりですべてを背負い込まないで、だれかに寄りかかってもいい”と語り、“弱さ”は“強さ”でもあると説く。この曲について彼女は、「自分の過去の悲しみを癒すために書いた曲。歌詞を書きながら、いとこのルイスについて考えていた。自分達には、母親を亡くしたという共通の経験があるの。彼は私と同じように、感情を抑えて気丈に振る舞っている事に気がついたの。この曲は、そうした感情に寄り添い、支えながら、最終的には音楽の至福感の中に解放感を見出すための手段だったのだと思う」と明かしている。

そんなロミーの最新シングル「Always Forever」は、「Loveher」や「She’s On My Mind」などに続くラブソング。ドナ・ルイスによる90年代のヒット曲「I Love You Always Forever」のコーラスをサンプリングしており、爽快なダンスサウンドに乗せて、“いつも一緒にいるよ”と永遠の愛を語る。MVは、彼女が大好きだという映画『aftersun／アフターサン』のグレッグ・オークが監督を担当。二人の女性が、内側に秘めた感情を開放させるように踊り、心を通わせる姿は、私たちに素直になる勇気をくれるはず。

構成・取材・文／海渡理恵