ライター海渡理恵さんによる、音楽を入り口に世界を見つめる連載「世界は鳴っている」。世界中のアーティストから発信される、個人の内面や社会のムードを反映した音楽シーンの躍動をお届けします。現在進行形で世界各地から生まれている音楽に耳をすませて、自分や世の中の内側をのぞいてみませんか?

UMI シンガーソングライター

UMIのヒーリング・ネオソウルで、セルフコンパッションを高める

近年、Rina Sawayama、Mitski、UMIといった、日本と海外両方にルーツを持つアーティストが、世界の音楽シーンで存在感を発揮。アイデンティティの葛藤や、心に抱えた不安や恐怖など、自らが経験してきた痛みをオープンにつづった音楽で支持を集めている。

前述したアーティストのなかでも目が離せないのが、日本人の母とアメリカ人の父を持つ、シンガーソングライター・UMI。シアトル出身で、現在はLAを拠点に活動している。最近、BTSのVを客演に迎えた『wherever u r (ft. V of BTS)』が世界各国でヒットし、大きな話題を呼んだ。

アーティストネームでありミドルネームでもある“UMI”は、日本語の“海”から名付けられた。母はピアノ経験者、父はドラマーという音楽一家に生まれた影響もあり、4歳のときに作曲を始めたUMIの楽曲は、R&Bとネオソウルに根ざしたサウンドと、内省的かつやわらかな表現の歌詞が特徴。自らの音楽のことを“ヒーリング・ネオソウル”と形容しており、曲自体はもちろん、“メディテーション(瞑想)タイム”があるライブは、愛と癒しに満ちあふれている。

うみ - my first show in JAPAN 🎐💗🍵
2023年は、「GREENROOM FESTIVAL」や「SUMMER SONIC」といった夏フェスに出演したほか、スペシャルアコースティック&メディテーションライブをトランクホテルで開催するなど、日本でも精力的に活動。フェスのステージ直前の様子を収めた動画には、鏡に映る自分に「You're great performer, I believe in you, you're amazing, you're  a great singer(後略)」と声をかたり、瞑想をしてマインドセットするUMIの姿が。

my morning routine ❊ how to be flexible & happy
自身のYouTubeで公開したモーニングルーティン動画。ストレッチやブレスワークなど、インナーピースの保ち方を明かす。

こうしたアティチュードからもわかるとおり、自分を丁寧にケアするUMIの楽曲は、「セルフコンパッション(愛する人を思いやるように、あるがままの自分を慈しむこと)」を高めることを、さまざまな角度から後押してくれる。最新EP「talking to the wind」もそうだ。本作は、人生の中で生じる“迷い”を受け入れることや、今を目いっぱい楽しむことの大切さを全4曲を通して伝える。

幸せを感じたときに、急に漠然とした不安にかられたことはないだろうか? そんな“幸せ恐怖症”にさいなまれる人に、UMIは『happy im』を届ける。この曲についてUMIは、「自分が愛から逃げていると感じていた時期に書いたの。自分含め聴いてくれる人全員に、幸せという気持ちを持ってもいいんだよということを思い出してもらいたいと思って。聴いている人がもっ と“自分の選んだ道”を好きになってくれますように」とコメントを残しており、MVでは、プロデューサー兼パートナーであるベロニカとの幸せに満ちたNY旅の様子が映し出される。その姿や、“happy im”と繰り返されるフレーズを見聞きしていると、目の前の幸せに怯えるのではなく、今、自分が感じている幸せに感謝し、それを満喫しようと思えてくる。

UMI - happy im [Official Video]

また、EPのラストを飾るダンサブルな『SHOW ME OUT』には、UMIの「“愛すること”と“自分がやりたいこと”をもっと表現してもいいと思ってほしい」という気持ちが込められており、リスナーが自分の本音を解放できるように、「あなたを見せて」と何度も愛とエールを送る。もし、“自分への愛が足りていない”と感じたら、UMIの包容力あふれる音楽を頼ってみてはどうだろうか。心の平穏への道すじが見えてくるかもしれないから。

UMI - SHOW ME OUT (official video) 👾

最新EP『talking to the wind』をチェック

UMI  アルバム『talking to the wind』

UMI『talking to the wind』 配信中/ソニー・ミュージック

取材・文/海渡理恵