知っておきたい花粉症の発症メカニズム。カギとなる「免疫バランス」とは?

前回に続いてお届けする花粉症シリーズ企画、第2回は、発症する前に知っておきたい花粉症のメカニズムをおさらい!

花粉症とは、鼻腔内や目の粘膜に付着したスギなどの植物の花粉に対する免疫反応によるアレルギー症状をいいます。体内に入ってきた異物に対抗するための「抗体」が過剰に反応し、粘膜の炎症からくしゃみ・鼻水、目のかゆみ・充血が起こり、皮膚にはかゆみや赤みが発症。花粉やダニなどは本来は人体に無害であることも多いのですが、体が過敏に反応し、必要以上に異物を攻撃してしまうことでさまざまな症状が出るのです。

この体外からの異物を攻撃する「抗体」をコントロールするのが、私たち一人一人の体に備わった“免疫バランス“。最近よく聞く言葉ですが、「免疫バランス」とはそもそも何なのでしょう? 前回に引き続き、免疫や栄養に詳しい医師の石原新菜先生に伺いました。

花粉症の発症に関係する「免疫バランス」とは?【医師が教える花粉症対策②】_1

病原菌やアレルゲンが体に入ると、外的刺激に対する第一関門となる免疫細胞の「マクロファージ」がそれらを食べて体外からの異物の情報をキャッチ。抗体を作る司令塔であるリンパ球の一種である免疫細胞「ヘルパーT細胞」にその情報を伝えます。「ヘルパーT細胞(Th細胞)」は、外的刺激が菌やウイルスなどの病原体の場合は「Th1細胞」に変化し、ダニ・カビ・花粉などのアレルゲンの場合は「Th2細胞」に変化します。

変化した「Th1細胞」と「Th2細胞」は「B細胞」に対して、それぞれ病原体向けやアレルゲン向けの「抗体を作れ」という指令を出します。B細胞で作られた抗体が、体内に侵入した異物にくっついて無力化することで、病気などの感染を防ぎます。これが免疫機能です!

2つの細胞の活動バランスがくずれると花粉症に…

しかし、このシステムの中の「Th2細胞」が過剰に反応してしまうと、ダニやカビ、花粉などのアレルゲン向けの抗体(IgE抗体)がたくさん放出され、これが花粉症の原因に。余分なIgE抗体が「マスト細胞」という細胞に結合すると、マスト細胞が「ヒスタミン」や「セロトニン」といった炎症の原因物質を放出。その結果、くしゃみや鼻水、かゆみなどを引き起こすのです。

実はこの「Th1細胞」と「Th2細胞」、互いにどんな抗体を作るのか指示する物質「情報伝達物質(=サイトカイン)」をバランスよく放出することによって、互いが暴走しないように抑制しあっています。「Th1細胞」と「Th2細胞」の活動バランスがくずれる原因はまだ解明されていませんが、雑菌やウイルスを排除した現代の生活環境が影響している可能性があるともいわれています。特にこの2年は、コロナ禍で積極的にウイルス殺菌などをしてきたことが原因で、より「Th1細胞」の出番が少なく、「Th2細胞」が過剰に活発化し、2つのバランスが乱れてしまう可能性があるのだとか…。

つらい花粉症に苦しむ女性イラスト

歳を重ねると花粉症になりやすくなるのはなぜ?

ちなみに、人間の細胞の能力は20歳をピークに年齢とともに低下するといわれています。免疫細胞の機能や免疫バランスを維持する力がだんだんと低下していくために、大人になってから花粉症になる人が多いのだとか。子どもの頃は平気だったのに、大人になってから花粉症になる人、多いですよね。加齢のほかにも、バランスの悪い食生活、ストレス、環境汚染、抗生物質の常用などによって、花粉症リスクが高まるおそれがあります。

石原先生によれば、花粉症などのアレルギーに対抗できるような体をつくるには、日々の食生活で
1.皮膚や粘膜を丈夫にすること
2.腸内環境を整えること
3.免疫バランスを整えること
の3点を意識することが大事なんだとか。では、具体的にどんな食事をとればいいのでしょう?


■次回、【知識と工夫で花粉症に徹底抗戦!】第3回では、花粉症に対抗する体をつくるための食生活、おすすめの食材をご紹介します!


石原新菜先生

医師・イシハラクリニック副院長

石原新菜先生

ヒポクラティック・サナトリウム副施設長、健康ソムリエ講師 。帝京大学医学部を卒業、同大学病院で2年間の研修医を経て、父、石原結實のクリニックでおもに漢方医学、自然療法、食事療法により種々の病気の治療にあたっている。 クリニックでの診察のほか、わかりやすい医学解説と親しみやすいキャラクターで、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。

構成・文/長岡絢子 イラスト/forest eternal