これから最盛期を迎える花粉症シーズン。鼻づまりや息苦しさのためによく眠れなかったり、夜中に起きてしまうという人も少なくないのでは? 花粉対策商品「MoriLabo(モリラボ)」を発売するエステーが実施した調査によると、花粉症に悩む人の62%が睡眠への影響を感じ、「就寝中に目が覚めるようになった」と回答した人も27%にのぼることがわかりました(※2022年1月 エステー「花粉症と睡眠に関する調査」。調査手法:インターネット。対象:20~50代の男女662人)。

花粉症対策シリーズ第4回は、エステーが提案する花粉対策情報から、睡眠の質を上げるための花粉対策のポイントをご紹介します!

花粉に囲まれて眠っている女性

朝起きたときがつらい「モーニングアタック」に悩む人は7割以上!

花粉症の人によく見られるのが、起床したときに強い症状が現れる、いわゆる「モーニングアタック」。エステーの調査では、このモーニングアタックに関して「非常につらいと感じる」が22%、「ややつらいと感じる」が51%と、7割以上の人がつらさを感じているという結果に。また、睡眠を妨げる具体的な症状としては「鼻づまり」が77%でトップ。次いで「鼻水」が68%と、鼻にまつわる症状がやはり多いよう。「くしゃみ(53%)」「目のかゆみ(50%)」も半数を超えています。

夜寝るときには収まっている花粉症の症状が、睡眠中や起床時に悪化するのはなぜなのでしょう? 花粉について詳しい埼玉大学大学院理工学研究科教授で花粉研究者の王青躍先生に、その理由を伺いました。

東京などの都市部には、数十キロから数百キロ離れた山林から花粉が飛来します。アスファルトやコンクリートなど都市の地面には花粉が吸収されないため、午後には風や自動車などの走行によってそれらが巻き上げられ、再び飛散することに。少なくとも10ミリ以上の雨が降らない限り、前日や前々日の花粉も都市空間に蓄積され、再飛散を繰り返すといいます。

山林から飛散しrた花粉が都会の大気汚染物質と結びついて凶悪化する図

さらに、排気ガスなどの大気汚染物質と結びついたり、自動車のタイヤにつぶされたりすることで花粉が破壊されて微細化すると、花粉症などのアレルギーの原因物質「アレルゲン」がむき出しに。こうして“凶悪化”した花粉は少量でも強いアレルギー反応を引き起こします。王先生によれば、小さいがゆえに呼吸器系の奥まで入り込みやすくなり、花粉症原因のぜんそくや気管支炎を発症するケースもあるのだとか。。

一方、花粉に対するアレルギー反応には、花粉を吸ってすぐに出る「即時相反応」と、時間をおいて発症し、しかも持続する「遅発相反応」があると王先生。目のかゆみや鼻水、くしゃみなどの「即時相反応」は、水で洗い流すなどして花粉を目や鼻の粘膜から取り除けば反応も治まりますが、「遅発相反応」は、目や鼻から花粉を取り除いても炎症が持続。日中に吸い込んだ微細な花粉が原因で、夜間の睡眠中に鼻づまりやせき、息苦しさなどの症状が出る可能性があるといいます。日中に花粉にさらされる機会が増えれば、この「遅発性相反応」によって夜間の睡眠が妨げられる可能性も高まるというわけです。

寝具の繊維や羽毛のふとんには花粉がつきやすく、また、立っているときや座っているときと比べて寝ているときは頭の位置が低いため、床付近に落ちた家の中の花粉を吸い込みやすい状態であることも、夜間に花粉の影響を受けやすい一因と考えられます。

王青躍先生

埼玉大学大学院理工学研究科教授・工学博士

王青躍先生

環境科学研究者。都市大気汚染計測、対策技術、再生可能なエネルギーを研究。近年は、都市部花粉とそのアレルゲン物質の挙動、PM2.5などの大気汚染による花粉症への増悪、花粉症や大気汚染対策について多くのメディアで研究結果を発信。

睡眠を妨げる「隠れ鼻づまり」には「やさしい鼻うがい」がおすすめ!

花粉症のモーニングアタックと隠れ鼻づまり

花粉症による鼻炎の症状で最もつらいのは「鼻づまり」。睡眠中に鼻がつまると、苦しさから眠りが浅くなり、結果、日中も頭がぼーっとしたり、眠気やだるさ、疲労を感じるなど、仕事や家事のパフォーマンスも下げる原因となります。一方、リラックスモードになる睡眠時は、自律神経の副交感神経が優位になるため、鼻腔内の血管がふくらみ血管層が厚くなります。すると、空気の通りが阻まれて鼻づまりの原因に。副交感神経が優位の状態で起床するため、鼻づまりの症状は早朝にピークを迎えます。

しかし、活動的になる日中は交感神経が優位になって血管が収縮し、鼻の通りがよくなるために、自分の鼻づまりに気づいていない「隠れ鼻づまり」の人も多いと、鼻専門医の黄川田徹先生は指摘します。日中に診断しても症状を見極めきれないことがあるのだそう。また、黄川田先生によれば、鼻呼吸と脳の成長には関連があることがわかっており、小さい子どもの場合、睡眠中に口呼吸になると脳の発育が妨げられる可能性もあるといいます。

日中のQOLを低下させる可能性のある「隠れ鼻づまり」、以下のセルフチェックで確認してみて!

隠れ鼻づまりのチェックリスト

黄川田先生は「鼻づまりは、ほとんどの場合、セルフケアで抑えることができる」と言います。花粉症や慢性鼻炎に有効なのが、「鼻洗浄」。右の鼻の穴から水を入れて左の鼻の穴から出す…という方法もありますが、慣れないと痛みを感じたりして実践するのはたいへんです。

そこで黄川田先生がおすすめするのが、刺激の少ない「やさしい鼻うがい」。小型の鼻洗浄器を使い、塩分濃度0.9%の生理食塩水で鼻の入り口を洗います。これを就寝前と起床後の、1日2回行うことで、十分効果が見込めるとのこと。花粉症ハイシーズンに、「モーニングアタック」や睡眠中の鼻づまりで苦しい思いをしている人は、ぜひ以下のステップでお試しを。

朝と就寝前におすすめの「やさしい鼻うがい」の方法

黄川田徹先生

医師。 医療法人社団アドベント理事長、鼻のクリニック東京理事長

黄川田徹先生

鼻の専門医として、内視鏡技術をいち早く鼻の手術治療に取り入れ、周辺機器の開発や新しい術式の開発に取り組む。著書に『鼻専門医が教える 「熟睡」を手にする最高の方法(日本経済新聞出版)』など。

今回ご紹介した花粉症対策のほか、エステーでは「睡眠時の花粉」について解説した対策ガイド「知っておきたい花粉と睡眠のはなし」や、コロナ禍の花粉症患者に起こりうる リスクと対策法を解説した「ニューノーマル花粉対策ガイド」を医師監修のもとで作成。ネットで公開していますのでぜひチェックしてみて!

構成・文/浅香淳子(yoi) サムネイルイラスト/forest eternal