日々、当たり前のように行なっている「睡眠」。実は、私たちが健康に過ごすうえで欠かせない重要な役割を担っています。その仕組みや役割はもちろん、睡眠不足のデメリットから“質のいい眠り”を手に入れるためのアドバイスまで、医学博士の西野精治先生に教えていただきました。今回は、「睡眠のタイプ」について。

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Q4.「朝型」「夜型」「ショートスリーパー」の違いは、生まれつきの体質ですか?

教えていただいたのは…
西野精治

医学博士

西野精治

スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所所長。日本睡眠学会専門医。ブレインスリープの創業者兼最高研究顧問。著書に『スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版)、『眠れなくなるほど面白い 図解 睡眠の話』(日本文芸社)など。

A4.遺伝的な要因がほとんどですが、「朝型」と「夜型」は環境的な影響も

朝から活動的な「朝型」の人と、夜ふかしが得意な「夜型」の人の割合は、それぞれ20%ずつで、極端な朝型と夜型が5%ずつの分布になっています。そして、残りの50%の人はどちらでもありません。

1日の体温の変化を比べると、朝型か夜型かがわかります。平均より前の時間帯にずれていれば朝型、後ろにずれていれば夜型ですが、その差はせいぜい2〜3時間程度です。朝型は、早朝から体温が上昇するので、覚醒の準備が早く整い、目覚めてすぐに活動を始められます。そして、夜になると体温が急激に低下するため入眠しやすく、眠りにつくまでの時間が短いのも特徴です。

一方の夜型は、夕方から夜にかけて体温の高い状態が続くので、夜遅くまで元気に過ごせます。その後、平均より遅い時間帯に体温が下がりはじめ、早朝にもっとも低くなります。朝の体温上昇も遅いので、覚醒レベルが上がるのも遅く、昼すぎくらいまですっきりしません。 

極端な朝型と夜型は遺伝で決まっているケースが大半ですが、多くの人は年齢や生活環境などの影響も受けるので、朝型、夜型のタイプが変化することもあります。ただし、異なる型へ無理やり変更することは遺伝的な素質に逆らうことになるので、あまりおすすめしません。

ショートスリーパーは遺伝子で決まる特異体質のようなもの

短時間睡眠でも体はいたって健康で、生活への支障も一切現れないタイプの人は、一般に「ショートスリーパー」と呼ばれます。ナポレオンやエジソンが、1日3〜4時間睡眠だった話は有名ですが、現代でも著名な実業家や政治家、芸能人には短時間睡眠で活躍する人が多くいます。それゆえ「ショートスリーパー=成功者」のイメージも強く、憧れる人も少なくないようです。

しかし、ショートスリーパーはトレーニングをしてなれるものではありません。スタンフォード大学の研究で、6時間未満の睡眠でも健康を維持している親子に着目し、その親子の「時計遺伝子」に変異があることを突き止めました。さらに、この親子と同じ遺伝子をもつマウスをつくって調べたところ、ショートスリーパーは遺伝子によって決まる、生まれながらの特異体質のようなものだとわかったのです。 

しかも、こういったタイプの遺伝子を持つ人は、全体の1%未満ともいわれていますから、本物のショートスリーパーはかなり珍しい存在といえるでしょう。一方、相対性理論で知られるアインシュタインは10時間以上寝るロングスリーパーで、こちらは全体の3〜9%といわれます。成功者であることと、睡眠時間は関係なさそうです。

構成・取材・文/国分美由紀
出典/『眠れなくなるほど面白い 図解 睡眠の話』(日本文芸社)