素早くエネルギーになり脂肪燃焼効果も!?
聞いたことはあるけれど、なぜ健康やダイエットにいいと言われているのか知らない…という人も多いのでは。MCTオイルとは、そもそもどんなものなんでしょう?
「MCT」はMedium Chain Triglycerideの略で、「中鎖脂肪酸」のこと。母乳や牛乳、ココナッツをはじめとするヤシ科の種子などに含まれる成分です。MCTオイルがなぜここまで注目されているのか、どんないいことがあるのか、虎ノ門中村クリニックの院長で内科医の中村康宏先生に伺いました。
「MCT、つまり中鎖脂肪酸は、消化・吸収がとても速いのが大きな特長です。私たちが日常的に食べているほとんどの油は、長鎖脂肪酸(LCT/Long Chain Triglycerideの略)。中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸という文字からもわかるように、分子の”鎖の長さ”が違います。長鎖脂肪酸は鎖が長い分、消化・吸収がゆっくり。それに比べて中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸の4〜5倍も早く分解され、約3時間ほどで効率的にエネルギーになります。スピーディに消費されるということは、脂肪として蓄積されにくいということでもあります。今、美容と健康、ダイエットの面から注目されているのはそういった特長があるからなんです」
暑い日が続くと、つい冷たい飲みものやさっぱりした食べものばかり口にしていませんか? 食欲も落ちて食事の量が減ると、体の機能を正常に維持するための栄養が不足し、その結果、免疫力も落ちてしまいます。そんな時期にぴったりなのが、最近よく目にするようになった「MCTオイル」です。
特にダイエット効果が話題になったこともあり、最近登場したもののように思われがちですが、実はMCTオイルは半世紀も前からあったもの。てんかんの治療食、未熟児や手術後の患者などの栄養補給として医療の現場で使われていたのだそう。近年では、少量で効率よくエネルギーを補えるとして、介護現場でも広く活用されるようになっています。噛む力や飲み込む力が弱くなって食が細くなり、低栄養になりやすい高齢者向けに、MCTを配合した食品が開発されて役立っています。
「またMCTは、体内でぶどう糖が不足したときの代替エネルギーとなる“ケトン体”を効率よく作っくれます。かつては脳のエネルギーになるのはブドウ糖だけといわれていましたが、現在は、ケトン体が脳をはじめ、体を動かすすべての臓器のエネルギー源になることが明らかになっています。スポーツ選手のあいだでも、最適なエネルギー源として、また疲労回復のために広く活用されるようになっているんですよ」(中村先生)
低栄養の改善に加え、脂肪燃焼効果、認知機能の衰えの改善、疲労回復、パフォーマンスの向上など、ほかにもMCTの素晴らしい効果が次々と検証されているよう。
身近な食材とマッチしやすいのもMCTオイルの特長!
「もちろん、皆さんの普段の生活にもMCTを取り入れるメリットは大きいと思います。特に、暑さで食欲が落ちたり栄養が偏りがちな今は、熱中症や夏バテ対策にもMCTオイルは有効です。消化・吸収がいいうえに、脂肪として蓄積されにくいのはとても魅力的。1日小さじ1杯で十分ですので、食事や間食に取り入れてみてください」(中村先生)
MCTオイルを一度でも食べたことがある人はご存じだと思いますが、オイルなのにとてもサラッとした口当たり。それは、一般的な食用油と比較すると水溶性に近い特性を持っているから。このことにより、MCTオイルは無味無臭ながら、ヒトの舌の味を感じる部分の“味蕾”でおいしさを感じやすいといいます。最近の研究では、さまざまな食材のコクやうま味をアップさせる効果があることもわかりました。
実際に普段の食事に加えてみると、飲みものではコーヒーや野菜ジュースがぐっとおいしくなり、味噌汁や納豆などの和食にも絶妙にマッチ。ヨーグルトにも、そしてドレッシングの代わりにそのままサラダにかけてもGOOD! 意外だったのは、お米にもよく合うこと。玄米や雑穀米など、固めに炊いたごはんの味わいが変わります。ポイントは加熱せずに摂取することですが、加熱した肉料理や炒め物などにあとから加えるのはOKです。
こんなふうに、毎日の食事にプラスしやすく、効率よく全身のエネルギー源になり、さまざまな健康効果があって、しかもおいしさまで高めてくれるMCTオイル。まだ試したことがない人は、この夏こそぜひ使ってみては?
「虎ノ門中村クリニック」院長・内科医
関西医科大学卒業。内科医・消化器内科医として勤務後、米国医師免許試験を突破し、最先端予防医学を学ぶため渡米。留学中には、パーソナルトレーナー、栄養士の資格を取得。帰国後、日本初のアメリカ抗加齢学会認定施設「虎ノ門中村クリニック」を開業し院長を務める。
取材・文・撮影/蓮見則子