漢方と聞くと簡単には取り入れにくい…と思っていませんか? でも、今の自分の状態に合った食べものを取り入れることで心身を整え健康を維持する「食養生」も、漢方の考え方のひとつ。そこで、漢方アドバイザー“なおみん”こと、久保奈穂実先生が、簡単でおいしい「養生レシピ」をご紹介! 今回は、ストレスによる症状に注目。「首や肩がパンパン…」「なんだかお腹が張って苦しい…」そんなお悩みに、なおみん先生がおすすめの養生法を教えてくれました!

久保 奈穂実

漢方アドバイザー、国際中医薬膳管理師

久保 奈穂実

美大卒業後、芸能・音楽活動を開始。ハードな生活で身心のバランスを崩す。漢方薬に助けられた経験から興味を持ち、「イスクラ中医薬研修塾」にて中医学を学ぶ。現在は「成城漢方たまり」にて漢方相談・薬膳講師。漢方薬だけでなく、食事や生活での養生も一人一人の『今』に合わせて提案している。著書に『缶詰ひとつで養生ごはん: かんたん おいしく 体が整う』(学研プラス)がある。

今回のテーマは、「ストレスによる“パンパン”」。首・肩・お腹の張りに悩んでいませんか?

なおみん先生:ストレスによって、私たちの体や心にさまざまな不調が生じることはよく知られていますが、今回は、漢方の観点から“ストレス症状”についてお話ししていきたいと思います。

「気・血・水(き・けつ・すい)」という言葉を聞いたことはないでしょうか? 漢方では、この3つの要素によって、私たちの体は成り立っていると考えられています。まず、「気」とは、生命エネルギーのこと。生命維持に必要な代謝や運動を司り、血や水を全身に巡らせます。「血」は、いわゆる血液のことですが、西洋医学の血液とは少し意味が異なります。「血」は、食べものから得た「気」の一部が栄養分と合わさって変化したもの。体中に酸素や栄養を運ぶ役目や、精神を安定させる働きを持っています。「水」は、汗や涙、唾液や体液など体内の透明な液体すべてを指し、体に必要なうるおいを保ちます。

これら3要素がバランスを保ちつつ、過不足なくスムーズに体を巡ることで、私たちの体は “健康”でいられるとされています。逆をいえば、どれかが滞ったり、バランスが崩れたりすると、不調や病気を招きやすくなってしまいます。

首・肩の張りのイメージ

●“パンパン”は、ストレスで「気」が滞っているサイン!

なおみん先生:なかでも重要だといわれるのが、「気」です。「気」が滞ると、「血」も「水」も巡らなくなってしまうので、肉体的、精神的にさまざまな影響が出やすいのです。そして、この「気」が滞る大きな原因には、ストレスがあります。忙しい現代人は、つねに「気」が滞りやすい状態だともいえるでしょう。

「気」が滞ると、首や肩がパンパンになる、お腹にガスがたまって苦しい、脇腹や側頭部が張る…といった症状が出やすくなります。喉が詰まる感じがする、喉に違和感を感じるという人もよく見られますね。また、生理前のイライラや精神的な不安定さなども、漢方では、「気」の滞りが関係していると考えられています。

「気」を巡らせるには、香り高い食材を

なおみん先生:滞った「気」をスムーズに巡らせるためには、「香りのいい食材」がおすすめです。例えば、柚子やレモンなどの柑橘類、パクチーなどの香草、三つ葉やセロリ、春菊、シソ、ミョウガなど、口に入れたときにフワッと香るようなもの。さまざまな説があるようですが、私の解釈では、いい香りを嗅ぐと自然と呼吸が深くなり、体がリラックスすることで「気」の巡りもよくなるのではないかと思います。

ただ、こうした香りのある食材は、クセが強く、苦手な人も多いかもしれませんね。嫌いなものを無理やり食べると、それもストレスになってしまうので、あくまで自分の好きな香りのものを取り入れるようにしましょう。

ストレスによる“パンパン”に、香りを楽しむ三つ葉のサラダ

ストレスは年中あるもの。季節問わず手に入り、クセの少ない三つ葉を使ったサラダのレシピをご紹介します! キノコ類の中でも香りがよいとされるマッシュルームや、漢方では「気」を巡らせるといわれる鮭も加えてボリュームもたっぷり。食べごたえのあるサラダです。

香りのいいスッキリサラダ

●材料(二人分)

サラダの材料

・三つ葉…1束
・マッシュルーム…3個
・鮭の水煮缶…1缶(70g)
・すだちまたはレモン…1切れ
・塩…適宜
・ごま油…適宜

●下ごしらえ

三つ葉は洗って根本を切り落とし、3cm幅くらいにカットする。
マッシュルームは薄くスライスする。
鮭水煮缶は水を切って、軽くほぐす。
すだちは洗って半分にカットし、種を取り除いておく。

POINT: マッシュルームはできるだけ薄めにスライスすると、味がなじみやすくなります。

●作り方

①ボウルに三つ葉とマッシュルームを入れ、塩とごま油を入れてあえる。
②①をお皿に盛り、鮭をのせる。
③すだち(またはレモン)をそえたら完成。
※食べる直前に絞ってください。

POINT:香りが大事なので、作り置きはNG。鼻から抜けるいい香りを感じながら、ゆったりした気持ちで食べましょう!

毎日にプラスしたい! 「気」の巡りをよくするストレッチ&マッサージ

なおみん先生:ストレスにかかわる「気」の通り道は、体の側面にあるといわれています。そのため、ストレスを受け、「気」の巡りが滞ると、脇腹やこめかみのまわりなど側頭部が張りやすくなってしまうのです。そこで、日頃から脇腹を伸ばすストレッチをしたり、側頭部から後頭部に向かってブラッシングしたりするのがおすすめです。このときブラシを大きくジグザグに動かすのがコツ。滞っていた「気」が流れ、気分もすっきりしますよ。

ストレスと上手につき合うための養生生活アドバイス

なおみん先生:「気」が滞っていると、普段は受け流せることも重く受け止めてしまったり、何かにつけイライラしてしまったり、ストレスを感じやすくなってしまいます。そうはいっても、ストレスそのものをなくすのは難しい。だからこそ、日頃から「気」の巡りをよくすることを意識してみましょう。

すぐできることとしては、散歩があります。朝や夕方など気持ちのいい時間帯に、深呼吸をしながらのんびりと歩くだけでも、「気」の巡りがよくなります。ポイントは何も考えず、頭と体を“ゆるゆる”させること。また、好きな香りのアロマを取り入れてみるのもおすすめです。今回紹介したような香りの強い食材が苦手な方は、部屋にアロマランプなどを灯して、リラックスする時間をつくってみるのもよいかもしれません。

アロマのイメージ

つねに「気」の巡りのよい状態にしておけると、急に降りかかってくるストレスもスルン! と受け流せるようになりますよ。

構成・文/秦レンナ 料理写真/久保奈穂実 Photos by Михаил Руденко, Krit of Studio OMG / Getty Images Plus