心身ともに健康でいられるだけでなく、いつも優しい気持ちでいられたり、自然に人に愛情をわけてあげたり受け取ったり、ハッピーな気持ちで過ごしたりすることができる——。前回は、新たに解明されてきた注目のホルモン「オキシトシン」の素敵な効果についてご紹介しました。そんなオキシトシンを増やす「オキ活」の方法を、引きつづき精神科医の奥平智之先生に伺いました。どれも「えっ、そんなことで増えるの?」と思うほど簡単な方法ばかりです!
精神科専門医・漢方専門医・認知症専門医
日本栄養精神医学研究会会長・医療法人山口病院副院長(埼玉県川越市)。「メンタルヘルスは食事から」をモットーに、栄養面からのアプローチで心を健康にする大切さを啓蒙。鉄欠乏女子を「テケジョ」、栄養の問題に起因するうつ状態を「栄養型うつ」など、印象的なキーフレーズの数々を命名。著書はいずれもわかりやすく、シリーズ累計12万部を超えた食事栄養療法の最新刊『最新版 マンガでわかる ココロの不調回復 食べてうつぬけ』(主婦の友社)が2022年10月31日発売に。https://www.dr-okudaira.com
オキシトシンを増やす6つの「オキ活」
「数ある論文を読み説いてみると、オキシトシンを増やすカギは6つにまとめられます。いずれも人が生きていくうえでは当たり前のことのように思えますが、人との交流やスキンシップなど、コロナ禍においてはなかなか難しいことも含まれます。一人暮らしでリモートワークなどをしている人は、以下のキーワードを覚えて、ひとつでもふたつでもよいので“オキ活”を始めてみましょう」(奥平先生)
【オキシトシンを増やす「オキ活」6つのキーワード】
1.愛情(恋愛・親切・寛大さ)
恋愛をするのはもちろん、ペットに愛情を感じたり、人に親切にしたりすること、人に対して寛大になったりすることでオキシトシンが増えます。
2.交流(人との絆・つながり・視線)
人と会話したり、一緒に働いたり体を動かしたり。誰かと接し、つながることはオキシトシン分泌にとってとても大事。人と視線を合わせる時間が長くなるほど、血中のオキシトシンの濃度が高くなるという論文もあります。
3.ストレス軽減(睡眠・運動・栄養)
オキシトシンの血中濃度を減らしてしまう、いちばんの要因はストレス。ストレスに対抗するには睡眠・適度な運動・栄養が大切です。ウォーキングやストレッチ、アロマテラピー、呼吸法など、自分に合ったストレス解消法を見つけて。また、栄養が不足すると、心や体の不調(ストレス)が増え、その結果オキシトシンの分泌が抑制されてしまいます。特に生理がある女性は鉄欠乏に注意。貧血がないために鉄欠乏が見逃され、心身のストレスを抱えている鉄欠乏女子(テケジョ)が多いとのこと。
4.快刺激(五感からの心地よい刺激)
美しい景色を見たり、気持ちのいい風に吹かれたり、おいしい料理を味わったり。心地よいものに触れる・見る・聞く・嗅ぐ・味わうなど、自分にとって気持ちのいい刺激はオキシトシンを確実に増やしてくれます。
5.接触(スキンシップ)
パートナーとハグしたり、友達と触れ合ったり。コロナ禍ではグーや肘でのタッチでもOK。ヘッドマッサージやエステなど心地よい刺激で人に触れてもらったり、動物とスキンシップをとったりすることも大いに効果があります。
6.栄養(マグネシウム・亜鉛・ビタミンD)
バランスのいい食事が大切ですが、ことにマグネシウム、亜鉛などのミネラルやビタミンDなどのビタミンが欠乏すると、オキシトシンの分泌や効能が低減してしまうので要注意。この3つの栄養素は特に、直接的にオキシトシンの血中濃度を上げるのをサポートしてくれます。
前回ご紹介したオキシトシンの効果と上記の図を比較してみると、“オキ活”でオキシトシンの分泌を増やすことと、オキシトシンがもたらす効果とは相関関係にあることがわかります。愛情を注げばオキシトシンが増え、オキシトシンが増えれば愛情や信頼関係がアップする。ストレスが減ったらオキシトシンが増え、オキシトシンが増えればストレスが緩和される…といった具合。ですから、日々「オキ活」を心がけることで、ますますいい“ハッピースパイラル”が生まれるというわけ。
あなたの「オキ活」度をチェック!
では、あなたは今、「オキ活」がちゃんとできているでしょうか? 以下は奥平先生の考案した、オキ活が足りているかどうかのチェックリスト。( )内は、前述の「オキ活」キーワードです。
●当てはまる項目が5つ以下:赤信号
残念ながら、オキ活がまったくできていないようです。オキシトシンをサポートする栄養(マグネシウム・亜鉛・ビタミンD)をとることから始めてみませんか?
●当てはまる項目が6〜12:黄色信号
自然にオキ活ができていますが、まだまだ足りていない様子。オキシトシンを増やすポイントをもう一度おさらいしてみましょう!
●当てはまる項目が13以上:青信号
オキ活は万全。オキシトシンもたっぷり分泌され、体にも心にもいい効果がもたらされています。まわりの人にもオキ活を教えてあげて!
オキシトシンが増える! 簡単にできる指圧テク
スキンシップや思いやり、栄養などに加えて、オキシトシンを増やすのに効果がある簡単なハンドケアも、東洋医学に精通した奥平先生が教えてくれました。いつでもどこでも、何かをしながらでもできる指圧なので、ぜひ習慣にしてみてください。
取材・文/蓮見則子 イラスト/いいあい Photo by DavidMSchrader / iStock / Getty Images Plus