新年の始まりとともに、キャリアや生き方を改めて見つめ直す人は多いのではないでしょうか。現状に満足はしていないけれど、何をどう変えたらいいのかわからない…。そんな人におすすめしたいのが「マインドマップ」。人生やキャリアの節目に実践しているという吉川めいさんに、やり方のポイントやその効果を伺いました。

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吉川めい

『Veda Tokyo』主宰

吉川めい

ウェルネスメンター。日本人女性初のアシュタンガヨガ正式指導資格者。『Yoga People Award 2016』ベスト・オブ・ヨギーニ受賞。adidasグローバル・ヨガアンバサダー。日本で生まれ育ちながら、 幼少期より英語圏の文化にも精通する。母の看取りや夫との死別、2人の息子の育児などを経験する中で、13年間インドに通い続けて得た伝統的な学びを日々の生活で活かせるメソッドに落とし込み、自分の中で成熟させた。ヨガ歴22年、日本人女性初のアシュタンガヨガ正式指導資格者であり『Yoga People Award 2016』ベスト・オブ・ヨギーニ受賞。adidasグローバル・ヨガアンバサダー。

吉川さん流「マインドマップ」とは?「ジャーナリング」の使い分けも!

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吉川めいさんがVeda Tokyoを創設する際に書いた、実際のマインドマップ

——吉川さんがマインドマップを始めたきっかけを教えてください。

大前提として、私のマインドマップは自己流で編み出した方法なので、一般的な手法とは異なります。振り返ると、15歳の頃にジャーナリングを始めてから、日常的に“書くこと”で気持ちを整理していたんですね。いつしか作文や論文を書く際にも、アイディアをカードに書き出し、パズルのように組み合わせながら結論を導き出すようになっていました。それが私のマインドマッピングのルーツかな。

——吉川さんはジャーナリングについても発信されていますが、マインドマップとジャーナリングとは、どのように使い分けていますか?

私の場合、ジャーナリングは日常の小さな感情の動きをひもとくための作業であるのに対して、マッピングは生き様やキャリアなど、より広いスケールで物事を考えるときに行います。50歳になったときにどうあっていたいか、自分の会社をどのように成長させたいか、という感じに、人生やキャリアの節目で、次のステップをしっかり見据えるために整理する感覚ですね。

ボンヤリした目標はいつまでも実現できない。「マインドマップ」の最大の効果は行動をとれるようになること

——マインドマップを作成することで、実際にどのような効果を得られるのでしょうか?

私が主宰するオンライン・ウェルネス・サービス『Veda Tokyo』の生徒さんと話していてよく感じるのは、皆さん総じて何かしらの目標があるのですが、その目標がすごく漠然としているんですよ。「幸せになりたい」「成功したい」と言うけれど、自分にとっての幸せや成功の定義を理解している人は極めて少ない。幸せの定義を知らずして、どうやって幸せになるのでしょう? それを明確にして、「幸せな自分」であるための行動を取れるようになることが、マインドマッピング最大の効果です。

たとえとして、ある生徒さんの体験をお話ししましょう。彼女は「今の会社が嫌だから辞めたいけど、転職先が見つからない」と悩んでいたのですが、どんな会社に転職したいのかを尋ねると、言葉に詰まってしまう。その代わりに今の会社の嫌な点を聞くと、次から次へと出てくるんです。そこから嫌な点ひとつひとつについて不快に感じる理由を整理していった結果、彼女にとって理想の会社像が導き出され、それに当てはまる会社に転職が決まったということがありました。

——自分の心の中を、深く探る作業を伴うんですね。

キャリアについては極めて客観的かつ論理的に整理することも可能ですし、そのアプローチのほうが、日本のビジネスシーンではポピュラーです。ただ、個人的には、感情や思考などのパーソナルな部分とキャリアは切っても切り離せない。だって感情を切り離して目標を導き出しても、目標を実現させるのは、感情のある自分なんですから。キャリアもパーソナルもトータルで目標を達成したほうが、本当の意味でのウェルネスにつながると思いませんか?

吉川さん流「マインドマップ」では、“なりたい姿”ではなく“ありたい姿”を明確にする

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——確かに、そのとおりですね。マインドマップに挑戦するには、何から始めるべきですか?

初めてマインドマッピングをする方は、自分がありたい姿になる方法を明確にするアプローチを試してみてください。なぜなら自分がありたい姿が明確になれば、そうなるために何をして、何をしないべきかがわかり、自然とキャリアや結婚・出産に関する考えも導き出されるからです。

方法としては、まず紙の中央に自分がありたい姿を書いて、そこから派生するキーワードを書いていきます。この「自分がありたい姿」が肝となるため、考える際に注意してほしいポイント4つを説明しますね。

●マインドマップを始める際のポイント

① 「ど素直」「ど直球」「どストレート」


②「〜になりたい」は使わない

③ 理由をとことん突き詰める

④ 他人軸で目標を決めない


① 「ど素直」「ど直球」「どストレート」
ひとつめは、とことんワガママになること。書く瞑想(ジャーナリング)のプログラムでも必ず伝えていますが、「ど素直」「ど直球」「どストレート」に気持ちを書いてください。紙に書くだけなら、誰にも責められませんから。誰からも批判されないと安心したうえで、何を書きたいですか? その言葉こそが、自分の本心です。

② 「〜になりたい」は使わない
ふたつめは、なりたい(DOING)ではなく、ありたい(BEING)姿を書くこと。多くの人は「痩せたい」とか「お金持ちになりたい」などと書きがちですが、「なりたい」は今の自分に不足するものを補うことにしかならないんです。でも、それを得ただけで本当に幸せになれるのでしょうか? それを達成した人は「どんな人であるのか?」まで突き詰めます。

③ 理由をとことん突き詰める
そうやって「WHAT(ありたい姿)」と「WHY(理由)」を直結させることが、みっつめのポイント。自分がその目標を達成したいのはなぜかをひもといていき、その答えが出たら目指すべき姿がより明確になりますよね。

④ 他人軸で目標を決めない
よっつめ。大事なのは、目標を立てる理由を他人軸にしないこと。恋人に好かれたい、もっとモテたい、などと他人の意見をベースにしてしまうと、本来の自分のハッピーにはつながりません。

自分がありたい姿を軸に、現状と理想を照らし合わせて書く

——私も挑戦してみましたが、「ありたい姿」を考えるのに一苦労しました。自分に不足しているものは次々と出てくるんですが…。

それは普通のことなので、心配しないでください。むしろ不足していることは、ありたい姿のヒントになるとも言えます。不足していることを片っ端からリストアップしてみて、それらがすべて備わった状態の自分を想像してみてください。「満たされている」「自信がある」「心身ともに豊か」などと浮かんだ言葉は、自分がありたい姿なのでは?

——なるほど! 「ありたい姿」が明確になったら、どのようにマップを広げていけばよいでしょうか?

●マインドマップのステップ

① ありたい姿の特徴を書く

② ①の特徴につながる人や物を書く

③ 自分の時間や労力、お金の配分を書く

① ありたい姿の特徴を書く
まず、中央のありたい姿を「大切な人や物を大切にできる人間」として考えてみましょう。私ならば、ありたい姿の特徴として「大切なことがわかっている」「幸せを感じられる」「大切な人への感謝がある」と書きます。

② ①の特徴につながる人や物を書く
次に「大切なことがわかっている」→「自分にとって大切なこと、人、物、幸せを感じられる」→「自分が幸せを感じる瞬間、会って幸せになれる人」と、広げていく。ここで、自分にとって本当に大切なこと、自分を幸せにしてくれることが明確になりますね。

③自分の時間や労力、お金の配分を書く
そして、それぞれのこと・人・物に、現状どれくらいの時間や労力、お金を使っているかを書き出します。ひとまず、ここでマッピング作業は終了。第2ステップの、ありたい自分になるためにするべきこと、避けるべきことを考える作業へと進みます。

幸せになれないことに時間を費やすのは不条理。挫折しそうになったら「マインドマップ」を見返して

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大切なこと・人・物に使っている時間や労力は、十分だと感じましたか? 足りないならば、あなたの時間や労力は何に奪われているのでしょうか? そこで挙がったものこそが、避けるべきことです。自分がハッピーになれないことをやめていくと、ハッピーな時間が増える。感性が刺激されて、ますます自分の求めることが明確になっていくと思います。

——もし避けるべきことが仕事だった場合、避けるのが難しいように感じます…。

多くの人が「仕事だから仕方ない」と我慢しようとするのですが、仕事は必ずしも苦しいものだとは限らないですよね。拘束時間が少ない仕事や、大切に感じられる仕事を見つけて、転職することだってできるはずです。

仕事に限らず、何事もいろんな選択肢や可能性があるはずなのに、それを考えようとしない人が多い。なぜなら人には、変化を恐れる性質があるからです。リスクがあったり、先が見えなかったりする変化を選択するくらいなら、ストレスや不満を抱えながら生きたほうが楽だと感じるのでしょう。

——変化を拒むことは、自分の可能性を狭めることにもなりますね。

そのとおり! 進化し続ける人は、変化とともに自分をうまくハンドリングできる人。未知の中で自分が進むべき道を見つける方法のひとつが、マインドマッピングなんです。

——変化の途中で挫折しそうになったときのアドバイスはありますか?

ひとつは、完成したマップを見返すこと。優先すべきことがルーティンになるまで、自分自身にリマインドし続けましょう。もうひとつは、ジャーナリングを日常に取り入れてみる。イラッとしたことやモヤっと感じたことなど、書き出して整理する作業を続けると自分の感情にすごく敏感になり、嫌なことを続けられなくなるはずです。

——嫌なことを続けないって、すごく健康的ですね。

そうなんです。やりたかったこと、無理だと思っていたことがどんどん具現化されると、気持ちが楽になったり、気分がよくなったり、眠りが深くなったりと、感覚としても変化が現れます。自分が選んだ方法でハッピーになれると、自分自身にも人生にも肯定的になれる。他人の感情や社会の価値観による選択では絶対に得られない、揺るぎない自信が身についていきますよ!

取材・文/中西彩乃 写真/HITOMI Kunihiro 構成/種谷美波(yoi)