「心理カウンセリング」や「カウンセラー」「公認心理師」「臨床心理士」など、メンタルヘルスにかかわる職業や資格の名称は、知っているようで曖昧です。悩みの相談先を探すうえでも大切なカウンセリングにまつわる専門用語について、公認心理師・臨床心理士の井澗知美さんに伺いました。今回は、カウンセラーに必要な資質について。

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Q3.カウンセラーに向いているのはどんな人ですか?

お話を伺ったのは…
井澗知美

公認心理師、臨床心理士

井澗知美
大正大学心理社会学部臨床心理学科教授。専門は発達臨床心理学。国立精神・神経センター精神保健研究所児童思春期精神保健部の流動研究員としてADHDの臨床研究をチームで行う。研究所に在籍している際に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にてペアレントトレーニングの研修を受け、日本におけるペアレントトレーニングプログラムの開発に携わる。著書に『カウンセラーという生き方』(イースト・プレス)など著書多数。

A3.自分と違う立場の相手を理解したいと思うことが資質のひとつです

カウンセラーに必要な資質は、まず「人に興味がある」ということだと思います。ただし、その関わり方は学生時代のように仲よしグループをつくったり、好きな人とだけ話したり遊んだりするのとは訳が違います。世の中には色々な人がいますから、クライエントにも当然色々な人がいます。

わからないこと、理解できない考えに対して、「この人には興味があるけど、こういうところがちょっと理解できない」「この人は何を考えているかわからない。変な人だな」で人間関係を終わらせてしまう人は、カウンセラーには向いていないかもしれません。他者に関心を持ち理解したいと思う人、または理解しがたいことを“面白い”と関心を持ちかかわろうと思う人は、向いているかもしれません。

「あるべき論」にとらわれない、柔軟な思考も必要

人は、自分のメガネを通してしか他者を見られません。他者だけではなく、出来事もそうです。自分のメガネを通して人や物事を見ている自分というものを自覚して、俯瞰して見る。少し難しいことですが、これを心理学の世界では「メタ認知」といいます。

自分の考えを少し離れたところから見てみると、「自分だったらこう思うけど、違う場所から見ると、そこで起こったことはこうだったのかも。だからあの人は、ああいった行動をしたのかも」というように、自分の視点を持ちながらも、その視点にとらわれすぎることなく他者と向きあうことができます。

また、例えばカウンセラー自身がいじめを受けた経験があるとします。すると、学校や職場でいじめに遭っている人が相談に来たとき、自分がいじめられたときのことを思い出して、自分のメガネで話を聴いてしまう可能性があります。けれど、それはカウンセラーがいじめられた体験であって、「クライエントの体験とは別のものである」と意識して聴くことが大切です。

カウンセラーは「あるべき論」にとらわれず、柔軟に思考できることが求められます。そのためのトレーニングを受けることはもちろんですが、まずは違いを受け入れる、もっといえば違いを楽しみ、面白いと思えることが、求められる資質でしょうか。また、自分の意見や気持ちを適切に他者に伝えられる力があることも求められます。

構成・取材・文/国分美由紀
出典/『カウンセラーという生き方』(イースト・プレス)