アラサーの人が感じがちな不安や停滞感、「クオーターライフクライシス」。このモヤモヤへの対処法を、yoiでの連載も人気のコラムニスト・ジェラシーくるみさんにお聞きします。インタビュー後編では、20代後半以降の読者からよく声が上がる、恋愛や結婚、出産についてのモヤモヤにスポットをあててお話を伺いました。

ジェラシーくるみ

コラムニスト

ジェラシーくるみ

会社員として働く傍ら、X(旧Twitter)やnote、Webメディアを中心にコラムを執筆中。著書に、『恋愛の方程式って東大入試よりムズい』(主婦の友社)、『そろそろいい歳というけれど』(主婦の友社)、『私たちのままならない幸せ』(主婦の友社)がある。

「クオーターライフクライシス」とは…?
20代後半から30代中盤にかけて多くの人が感じるといわれている、漠然とした不安や人生に対するモヤモヤのこと

ケース① 同世代が次々と結婚や出産をして、自分だけ取り残されているように感じる

──インタビューの後編では、「恋愛や結婚・出産」についてお話を伺えればと思います。読者からは「同世代の友人が次々と結婚・出産していくなかで、自分だけが停滞しているように感じてしまう」という悩みが上がることもありますが、くるみさんのもとにもそのような声が届くことはありますか?

ジェラシーくるみさん 私のフォロワーにも、同じ悩みを抱えている人はすごく多いです。でも私は、「人って本当に必要なものがあればおのずとその方向に進んでいくし、逆に本当に無理なことからは抜け出そうとする性質がある」と思っているんです。だから、今パートナーがいなくて特に探す気にもなれないけれど、その状態でヘルシーに過ごせているのなら、今のあなたに恋愛は必要ないのでは?と感じます。

これって、明らかに“ダメ”なパートナーの沼にハマっている人にも同じことが言える気がしていて。私自身、20歳くらいのときにその沼にハマってしまったことがあり、半年くらいダラダラと悩んでいたんです。そのことを当時出会った人生の先輩に相談したら、「それは、実はくるみさん自身が今居心地がいいと感じているからだと思うよ。本当に抜け出したくなったらあなたは自分から動くから大丈夫」と言われたのをよく覚えています。

その先輩のアドバイスは衝撃的でした。「あいつだけはやめな」と周りから猛烈に止められていたので…。結局、時が経ち半年後くらいにふっと冷静になり、毒素が抜けるみたいに相手から離れられることになりました。あの言葉は正しかったなと思います。

──なるほど。本当に抜け出したくなったら自分から動くはず、というのはその通りかもしれませんね。

ジェラシーくるみさん 恋愛に限らずキャリアなどに関しても同じな気がして、「理想の自分」の姿っていくらでも大きく考えられるんです。でもその「理想」は、無知だった過去の自分が生み出した単なる張りぼてであることも多い。だったら、「実際に自分の身体や心がどんな状態を居心地よく感じるか」のほうがずっと大事じゃないですか。

その上で「やっぱりパートナーが欲しい」「もっといい人とつき合いたい」と身体の髄で感じるときがきたら、自然と自発的に行動してしまうと思うんです。まずはじっくり悩んでみて、自分をよく知る人や尊敬する人に思い切って悩みや劣等感をさらけ出してみること。そして、もらったアドバイスへの自分の素直な感想や反応を感じ取ること。それを繰り返すうちに、“今の自分”が本当に欲しているものがクリアになってくると思います。

ケース② 今のパートナーと家族になりたいが、相手の考えがわからない。別れるべきか、関係を続けるべきか

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──また別のケースとして、「長くつき合っているパートナーといずれ家族になりたいけれど、相手が次のステップに進みたいかわからない。思い切って別れるか、現状の関係を続けるかで迷う」という悩みも聞かれます。このモヤモヤに、くるみさんならどのような言葉をかけますか?

ジェラシーくるみさん 前提として、まずはその気持ちを率直にパートナーに伝えたほうがいいのではないでしょうか。顔色をうかがう必要がある相手なのであれば、そこには上下関係が生まれていて、やや不健全な関係かも…と私は思います。

パートナーの結婚願望や家庭観がかまだわからない、という段階であれば、まわりの友人のエピソードや芸能人の結婚のニュースなどを小出しにして、「そういう選択肢も考えたりする?」と軽く聞いてみるのがいいと思います。

仮に、自分の気持ちをはっきりと伝えてもパートナーがまともに取り合ってくれない場合は、思い切って次の人を探すほうがいい場合もあるかもしれません。もし将来的に妊娠や出産を考えるなら、女性の肉体にはある程度のタイムリミットがあるので…。後悔しないように、私なら「◯月◯日までに、この人とのつき合いを続けるかの決断を下そう」と期限を設定するかもしれません。

──具体的な期限を設けて決断を下してみる、というのはユニークな方法ですね。

ジェラシーくるみさん どちらを選んだとしても、手放した選択肢を思い出して後悔する瞬間が、何度か訪れるかもしれません。でも、期限を設けて強制的に決断することで、「あの瞬間に自分の心はこっちを選んだから仕方ない。私は私のためにきちんと決断をしたのだ」と“納得ポイント”をつくることができる。その経験が大事なのかなと思います。

ケース③ 自分もパートナーも結婚願望がなく、ライフイベントがないことにモヤモヤ

──クオーターライフクライシスでよく聞かれるまた別のケースとして、「パートナーはいるけれど、自分にも相手にも特に結婚願望がなく、子どもが欲しいとも感じていない。ライフイベントがないために、なんとなく停滞感がある」という悩みもありますよね。

ジェラシーくるみさん その気持ちは、私も以前感じていたことがあるんですよ。これはあくまでも自分のケースなのですが、少し前に忙しい日が続いて、ふと「このまま消えてなくなりたい」と感じてしまったことがありました。でも、日々の仕事や生活が自分にとっての「確固たる生きる理由」にならないんだとしたら、自分と世界をつなぐ楔(くさび)のようなものが私には必要なのかもしれない、と思った。そのひとつが家族なのだとしたら、私の場合は子どもがいる人生を考えてみてもいいのかもしれない、と感じたんです。

自分の声や予感に耳を傾けてみると、現状のままでも心地いいのか、それとも思い切って違うライフステージに進むことを選びたいかのヒントが見えてくるんじゃないかと思います。

ケース④ 結婚してみたら、人生の選択肢が狭まったと感じるようになった

──最後は、「結婚して幸せを感じてはいるものの、人生の選択肢が狭まってしまったような気持ちになるときがある」というパターンのお悩みです。

ジェラシーくるみさん 私も少し前に結婚したのですが、この気持ちもすごくわかります。以前よく一緒に合コンをしていたグループがあって、その友達から楽しそうな連絡がくると、やっぱりいいな、楽しそうだなと思いますね。

でも、その子たちと話していると、彼女たちは彼女たちで違う人生を羨ましく思っていたりもして。だから、どちらの分岐点を選んだとしても、「選ばなかったほう」の選択肢に目を向けてしまうタイプの人っているんですよ。私自身がまさにそうです。自分はもう、そういう性質を持って生まれてきちゃったから仕方ない、と割り切っていますね。

それから、人生において激動のタイミングが訪れる時期というものは、本当に人によってバラバラだと感じています。人生には無数の季節があって、季節が巡るタイミングや回数も人によって違うなと。

中には、このお悩みとは逆に、新婚の時期をずーっと幸せそうに過ごしている人もいますよね。その場合、その人にとって結婚は“夏”だった、というだけ。自分にとっての結婚が、そこまでテンションの上がらない“冬”のタイミングだったなら、仕事や家族の変化によってまた季節が変わるかもしれない。だから一旦は季節が巡ることを信じて、次の季節の訪れを待てばいいんじゃないかなと思います。

──人生を季節でとらえる、というのは面白い考え方ですね。その考え方を覚えておくと、クオーターライフクライシスの波が仮にまたやってくることがあっても、少し冷静に対処できる気がします。

ジェラシーくるみさん そうですね。人生において悩みやモヤモヤは何度でもやってくる台風みたいなものだと思うので、私たちにできるのは、それに備えて自分の屋根を強固にしておくことだけだと思います。

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イラスト/中村桃子 構成・取材・文/生湯葉シホ 企画/種谷美波(yoi)