Zen Eatingってどうやって行うの? 食べる物に決まりはあるの? 気になるZen Eatingのやり方を、yoiエディターが実際にランチで体験してみました! 食事の様子をリアルにレポートします。
Zen Eatingとは?
「何を食べるか」よりも「どう食べるか」を大切にした食事方法。
「どう食べるか」を大切にするためには、食べる場所を調えたり、五感やお腹など体の感覚に意識を向けたり、食べながら命の循環を感じたりして、食べることへ意識を集中させていきます。
Zen Eating代表・中央大学客員研究員
1991年生まれ。中央大学で鈴木大拙を中心に比較思想を学んだ後、株式会社星野リゾートでウェルネス事業に携わる。退職後、2年間のインド留学を経て帰国し、瞑想を土台にした「心がととのう幸せな食べ方(Zen Eating)」を編み出して起業。2023年に著書『食べる瞑想Zen Eatingのすすめ:世界が認めた幸せな食べ方』(笠間書院)を出版。法人を中心にウェルビーイング顧問やアドバイザリーとしての業務提供や、G20およびG7に民間人として初めて「ウェルビーイング」を提案するなど、精力的に活動している。
Zen Eatingを始める前に知っておきたいこと
Zen Eatingは食べ方の心がけなので、Zen Eatingを始めるときはいつものごはんで大丈夫。しかし、最初は一品一品を繊細に感じるほうがやりやすいので、一汁三菜のような食事がおすすめと教えていただきました!
また、丁寧にごはんを食べることに少し気が重くなる方も多いと思います。そのような方は、最初の3口だけで十分。慣れてくると、自然にそのまま、4口5口と続けられるようになるとのこと。
さっそく実践していきましょう!
エディターが実際にランチで「食べる瞑想」をやってみた!
いつものランチはYouTubeを見ながらの“ながら食べ”か、時間に追われてかき込むように短時間ですませることが多い私。一人でゆっくりごはんを食べる機会を作ってこなかったので、少し身構えながらですが、Momoeさんに教えていただいたことを実践してみました!
──まずはテーブルを調えるところから!
食事をする机が作業場になっていませんか? Zen Eatingでは「調うモード」で食事をするために、食事の前に机の上を拭くことをおすすめしています。
わたしもハッと机を見てみると、お菓子の箱が散乱し、郵便物や本、iPadが常に置いてありました。恥ずかしながら、空いているスペースでごはんを食べるのが日常。
散らかしていると思っていなかったのですが、余計なものを机から排除し、机を拭いてみると、空気がスッと変わったように感じました。
たったこれだけのことですが、自然と「ゆっくりごはんを食べたい」という気持ちが湧いてきます。
会社などのデスクで食べなければいけないときは、「ランチョンマットがおすすめ」とのこと。
たしかに、お家だと食卓がありますが、会社でのランチではなかなか切り替えが難しいところ。ですが、デスクを片づけて、机を拭いて、ランチョンマットを置くだけで、そこが食卓空間に変わるのであれば、ますます実践しやすいですね。
──体の準備も忘れずに
食事前の一呼吸も、Zen Eatingを始める前の大切なポイント。
教えていただいたように、スマホを見えない場所に置いて、椅子にきちんと座り、一呼吸してみます。
すると、いつも空腹に任せてガツガツ食べてしまう自分に、いったん「落ち着いて」と語りかけることができました。
さらに、頬から喉、喉からお腹までをなぞるように触れると、体の緊張がほぐれるのだそう。
試してみると、無意識に力んでいた力が抜け、ゆっくりと食事をする準備が体も調ったように感じます。
体の合図が聞こえたら、最初のひと口
いつものランチでもできるとのことなので、よく買っている市販のお弁当にしました。温かいスープやお茶があるといいとのことなので、お味噌汁も用意。
──においを嗅ぐ
まずは目を閉じて、ごはんのにおいを嗅いでみることから始めるのがZen eating。
クンクンと嗅いだり、スーッとゆっくり嗅いだりすると、香りの違いを感じます。三呼吸ほど繰り返してみました。
すると、唾液が舌の付け根からじんわり出てきたり、あごの付け根がキュッとしたり、お腹がゴロゴロ動いたりするのを感じます。
今まで体のサインを待たずにごはんを食べていたので、体も食べる準備をしている感覚は新鮮な体験!
──お味噌汁が食の通り道を教えてくれる
次は、お味噌汁の汁だけをゆっくり飲むことで、内側の感覚を研ぎ澄ませるのだそう。
実際にお味噌汁を飲むと、喉からゆっくり食道を温かいものが通る感覚が。
食道の動きなどを感じる間も無く飲んでいたので気づかなかったのですが、想像以上にお味噌汁が遅いスピードで食道を通るのだと実感。
そして、胃にじんわり広がる感覚も心地よく、食べものはこのように体に入っていくのだから、早食いは体に負担なのかも…と今までの食べ方を見直しました。
じっくり味わうことを楽しむ
── ひと口目は味覚を目覚めさせる
「いただきます」と言ってから、まずはひと口目。口の中に入れたらすぐには噛まず、食べものを舌の上に置いたままにしてみるのがZen Eatingの大切なポイントです。
やってみると、舌の上に味がじんわり広がっていきました。舌の側面で酸味や、舌先で塩味が感じられます。このように多くの味が一品に含まれていたのだと知ることができます。
豆腐が舌の上でほろほろと崩れていくのも感じました。当たり前だけど、舌ってこんな繊細なんですね。
── ひと口ずつ箸を置く
噛んでいる途中で、次の料理を口に運んでいませんか?
私もそうなのですが、いつも次々に料理を口に運んでいたので、丁寧に食べようと思っていても、箸を持ったままでした。
ひと口ごとに箸を置く。その余裕を持つことが、食べる瞑想の基本だとも教えていただきました。
── 二口目は触覚を研ぎ澄ます
二口目は噛みながら、歯で感じる感触に意識を向けてみます。
れんこんを噛んでみると、シャキッとした感触が歯からあごに伝わりました。静けさの中で噛んでいると、音が骨を伝って脳に響き、食べていることを全身で感じます。
また、噛むごとに細かくなりますが、しっかり噛まないと柔らかくなりません。いつも4回くらい噛んですぐ飲み込んでしまっていたので、胃に負担をかけていたかもと感じ、体を労わるきっかけにもなりました。
── 三口目は食べものに感謝する
食べもの=命だということを思い出し、その食べものはどうやって生まれたのか想像しながら噛み締めていくことも、食べる瞑想。
頭ではわかっていても、なかなか心が追いつかない、食べもの=命ということ。しかし、お米が生まれた過程を想像すると、命だということがじわじわ理解できてきました。
小さな種が土に植えられ、ぴょこんと芽吹き、太陽や雨など天の恵みを受けながらすくすくと育つ。今食べているお米一粒一粒は、その種であり、命ということ。
ながら食べをしているときは、そんなことも考えることなく、ただ空腹を満たすだけの食事だったなと改めて実感します。
「ごちそうさま」を言おう
食べ終わったら、箸を置き、手を胸の前で合わせて、「ごちそうさま」と言ってみます。
「ごちそうさま」は、多くの生き物の命を“ごちそう”になったこと、食材を育ててくれた人、料理を作ってくれた人への感謝や労いの言葉。
Zen Eatingの五感で食事を楽しんだあとは、いつもの「ごちそうさま」に力がこもり、ゆっくり味わえる自分の体にも感謝する気持ちになりました。
Zen Eatingで感じた3つの変化
①心の変化
普段、仕事の合間に貪るように食べていたり、スマホをいじりながら食べたりしていたので、食後も「疲れがとれない」という感覚が当たり前でした。
Zen Eating後は、ゆっくり食べることで、忙しかった時間に区切りができて、イライラしている自分を俯瞰で見ることができ、食後はリラックス状態になります。
②体の変化
食べるのが早い私は、いつもお弁当を15分くらいで完食します。焦って食べているわけではなく、早食いが癖になっていました。
Zen Eatingをして感じたことは、満腹を感じる前に食べきっていたということです。五感を研ぎ澄ましながら食べていたら、いつも軽々食べていたお弁当が、途中でお腹いっぱいに感じてひとつ食べきれませんでした。
③食の変化
私はレンコンが好きなのですが、Zen Eatingでゆっくり食べてみると、レンコンの苦味が喉の奥に感じられ、少し違和感を覚えました。
また反対に、おかずなしで白米を食べるのが苦手なのですが、風味をゆっくり味わってみると、甘みや香りを豊かに感じられ、「白米好きかも!」と食わず嫌いが発覚しました。
今後も続けられそう?
家でごはんを食べるときは、続けたいと思いました。食後の、心と脳がすっきりと調った状態は、Zen Eatingならではの体験です。
また、オフィスでする場合は、やはり五感で食べることは気が散ってしまいます。しかし、デスクを片づけてランチョンマットを敷くということ、スマホを見ないようにすることはやりやすいので、小さい心がけから大切にしていきたいですね。
撮影・構成・取材・文/高浦彩加