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学生時代からなにかと悩むことの多い友達との関係。大人になった今も友達との距離感に悩み、「しんどい」と感じている人は多いはず。後編となる本記事では、アドバイスを聞かない友達、マウンティングしてくる友達、ネガティブな話題ばかりの友達など具体的な例をもとに、そんな友達とのつき合い方を臨床心理士の南舞さんにお聞きしました。

お話を伺ったのは…
南舞

公認心理師・臨床心理士・ヨガ講師

南舞

ヨガスタジオ・カウンセリングルームに行くことが難しい方のために、オンラインの活用やこども家庭支援センターなどの行政機関、学校、企業への訪問などを中心に活動中。また、各イベント出演、メディアへの出演・記事の監修など活動の場を広げている。メンタルヘルスやセルフケア、深刻になる前の予防への関心を高めてほしいという想いから、2023年に法人化(株式会社WWL)。カウンセリングとヨガを通してメンタルヘルスをサポートするサロン【Sati.】を立ち上げた。

お悩み①自分の話ができない…。“話題泥棒”をする友達

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お悩み…
話題泥棒をする友達。何かを話したときに、こちらへのリアクションより先に自分の話を始める人がいます。例えば、「旅行に行ったんだよね」とこちらが話し始めると「私もこの前○○に行って〜」と自分の話を始めてしまい、結果的に話題の大部分がその人の話になってしまいます。私の話も聞いてほしいのに…。

南さん相手の話ばかりされたらいい気はしないですよね。コミュニケーションは対等さも大事だと思うので、遮る勇気も必要。ある程度聞いたところで「話戻るんだけどさ」と会話の舵を切ることにも臆せずチャレンジしてみてほしいです。弾丸トークしてしまう人は、悪気なく本人も気づかずやっている人が多いと思うので、意外と相手もすんなり話を戻してくれるかも。「私の話も聞いてよー!」と言える関係性ならベストですね。

あとは少し聞こえが悪いかもしれませんが、「この話はこの人とする」といったように、友人関係にも手札を持っておくと、「話を聞いてもらいたい」という自分のニーズを満たせて、気持ちが楽になれるかもしれません。少数の友達と密につき合う、いわゆる親友文化も素敵だけど、広く浅い関係が好きな人はそれでいい。友達関係にルールはないから、ニーズに合わせて関係を変えていくことも間違いではないと覚えておきましょう。 

お悩み②同じことを何度も相談してくるのに、まったくアドバイスを聞かない友達

お悩み…
友達に何度も同じような悩み相談をされて、アドバイスをしてもまったく聞かない友達。相手のためを思って伝えても、結局自分の思ったことしかしないため、失敗を繰り返し、また愚痴と相談のループで疲れてしまいます。友達の求めている言葉を言ってあげることもできますが、それは私が本心で思っていることではないため、何のために会話しているんだろうと思ってしまいます…。

南さんせっかくアドバイスしたのに、まったく聞いてくれない、そしてまた同じような話を繰り返されるのは、なかなかしんどいものですよね。しかし、大抵の場合、表面的にはアドバイスを求めているように見えても、実はそうではなかったり、もうすでに自分の中に答えがある場合がほとんどのような気がします。アドバイスというのはよっぽどの場合じゃないと相手の心に入らない。自分にどうにかできることはほとんどない、変えられるのは本人しかいない、と線を引いておけば、少し気持ちが楽になるはず

また自分の意見を言う前に「あなたはどう思っているの?」と聞いてみたり、何度も相談を聞くのがつらいときは、声をかけられた時点で「あなたのことが嫌なわけではなくて、今の私は(メンタルや体調、忙しさの事情などで)ちゃんと話を聞ける状況じゃない」と伝えるという手もあります。あくまでも、相手ではなく「自分が聞ける状態ではないから」という理由を伝えることで、距離を置きやすくなるのではないでしょうか。

お悩み③これって対等じゃない?「利用されている」と感じる友達

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お悩み…
「会いたい〜」などの連絡はしてくるわりに、具体的な日程調整やお店探しはすべて人任せの友人。旅行に行っても、予約したり場所を調べたりなどはせず、こちらがツアーガイドのようになってしまいます。それで後から「こっちがよかった〜」などと言われてしまうと、さらにがっかりしますし、友達なのに、利用されているような気になってしまい悲しいです。

南さん二人のことなのに、自分ばかりが負担を背負うとか、それに対して「こっちのほうがよかった〜」なんて言われてしまったら、気持ちのいいものではないですよね。 これまで仲がよかったのに、旅行がきっかけで仲違いするという話もよく聞きます。

これは、いつもとは違う環境に置かれることで、普段見えていなかった価値観の違いが浮かび上がってくるからなのではないでしょうか。普段の距離感だったら折り合いをつけられることも、旅行中は距離がグッと近くなるので、不満がたまって折り合いをつけるのが難しいということが起きてしまうのだと思います。 だからこそ、お互いに察してもらおうとするのではなく、自分から気持ちを積極的に伝えるようにしたり、お互いが旅行に対してどんな考えを持っているのか、そしてその価値観が合わなかった時にどう擦り合わせるかを確認しておくという、この下準備ができてはじめて、旅行にいける関係なのだと思います

逆にそれができない相手とは、旅行に行ってもうまくいかない可能性があるので、そもそも旅行に行くということ自体を考え直してもいいかもしれません。 

お店の予約や日程の調整についても、「前回は私が決めたから、今回はあなたの行きたいところに行こう、予約もお願いしていい?」などと相手に投げる勇気も必要です。それで失敗されても、こちらは手を出さないのが大事。言えるのであれば、「実は私もちょっと大変なんだよ」と伝えてもいいと思います。

お悩み④もしかして下に見られてる?マウンティングしてくる友達

お悩み…
何かとマウンティングをしてくる友達。自分が仕事で評価されてうれしかった話をしても、「私はこんな役職にいて、こんな人に囲まれて、こんな暮らしをしてる」ともっとすごいエピソードを出されてしまい、悲しい気持ちになります。

南さんマウンティングしてくる人とは同じ土俵に立たないのが一番。やり返すとキリがないので、話を深めず「そうなんだ〜」と流してしまいましょう。誰かより優位に立たないと安心できないのはメンタル的にいい状態とは言えません。マウンティングしてくる友達に対して、「本当は自信がなくて、マウンティングすることで安心しているのかもしれない」「この人にも悩んでいる背景があるのかも」と考えることで、心に余裕が持てるようになることもあるかもしれませんね。

それでも、相手のことを考えるより、自分の心を守ることが第一。どうしてもつらいときは、自分を傷つける人からは離れるという選択肢も考えましょう。

お悩み⑤距離が近すぎ!ベッタリした関係性を求めてくる友達

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お悩み…
ベッタリした友人関係を求める友達。毎日LINEを何往復もするのは当たり前、会う頻度も多く、何でも話さなければならないような関係を求めてきます。「お互いに思うことがあるなら、泣きながらケンカして仲直りするのが友達!」というようなテンションも疲れます。毎日学校で会えた学生時代ならまだしも、大人になってからもその関係性を続けるのは、少ししんどく感じてしまいます。

南さん②のお悩みと少し似てくるかもしれませんが、「自分がこういう状態だから今会うのはしんどい」と伝えるのがいいのではないでしょうか。「仕事が忙しいから返信が減るかも」や、「この時期からなら落ち着くから、その時に話聞かせてね」と“今は無理だけど後で聞くよ”という意思を伝えることで後々の見通しがついて、相手も安心すると思います。

なんでも共有したい、本音で語り合いたいタイプの人は「フェードアウトされている」と感じたらより執着してしまうかも。先ほどお伝えした、「今は聞けないけど、後で聞くね」というようなメッセージを伝えつつも、前提として、「そもそも感情をぶつけ合うことが自分にとってはしんどいことなんだ」とわかってもらうことも必要なのだと思います。「あなたのことが嫌だから話を聞かないのではなく、感情的になることが自分にとってはしんどいことなんだ」ということを、アサーティブコミュニケーションを使って冷静に伝えていくという工夫も必要かもしれません。

もうひとつ、いつもは感情的になる相手が、感情的にならずに話せた場面はこれまでに一度くらいはありませんでしたか? いつもとは違う「例外」を探してみると、そこに解決のヒントが隠れていることも。相手の感情に飲まれそうになったら一呼吸おいて心身を落ち着けて、相手の行動を観察してみるのもおすすめです。 

お悩み⑥会うとなんだか疲れる…。ネガティブな話題ばかりの友達

お悩み…
話題のすべてが愚痴や悪口、批判など、ネガティブなものばかりな友達。時には共感できる悪口で盛り上がったり、愚痴を言いあって慰めあうことも必要だと思うけれど、その人と話すと話題のすべてがネガティブなものになってしまうので、気分がよくないことも…。

南さんあまりにネガティブな話題が続くと、疲れてしまいますよね。関係性にもよりますが、まずは「大変だよね」と受け止めたうえで、切り替えていくのも大事。「ところで最近楽しいことあった?」と話題を振ってみるとか。

「受け止めてあげないといけない」と思ってしまう優しい人も多いと思いますが、「この人のネガティブは変えられない、この人はネガティブを発信することで自分を保っているのかも」と考えて、聞き流すのもひとつの手です。受け止められない自分に罪悪感を抱いたりせず、「受け止められないものは受け止められない」と割り切っていいんです。むしろ、これだけネガティブな話を聞いたらしんどいよね、と自分を労ってあげましょう

関係性をとらえ直し、受け止めてくれる人だけがまわりに残っていく

——6つのパターンでお悩みに回答していただきましたが、どのお悩みでも、「自分の気持ちを伝える大切さ」を感じました。その方法もたくさんあるし、友達関係に正解はない、と考えると楽になる気がします。

南さん
大人の友達関係は、関係性の「とらえ直し」が大事だと思っています

変化した者同士わかり合えないことも絶対に出てきてしまうし、どうしてもつらかったら、お互いのために離れるのも必要なのではないでしょうか。限界が来てプツンと切れてしまうと、自分の中にもしこりが残るし相手もつらいはず。相手と気持ちよく関係を保つための手段として、一度離れるという選択肢も持っておいていいと思います。

そして意見が食い違っても「あなたはこういうふうに感じているんだね」と受け止めてくれる人が本当の友達なのではないでしょうか。 自分の気持ちを伝えることで相手がどういう人なのかわかるし、それを受け止めてくれる人だけがまわりに残っていくと思います。必要な人間関係だけが残るのは、未来の自分にとってもプラスになるはずです。

イラスト/せかち 取材・文/堀越美香子 企画・構成/木村美紀(yoi)