石川県の能登半島、その内海に浮かぶ能登島に、北陸初の鮨オーベルジュ「一 能登島 HITOTSU NOTOJIMA」がオープン。地元食材を堪能できる鮨と、海を望むプライベートサウナ、全8室のオーシャンビューのゲストルームで過ごす大人の隠れ宿に、サウナー&旅好きエディターの東原妙子さんが訪れました。

こんにちは。
座右の銘は「SUSHI IS MY LIFE」の東原妙子です。
そんなわけで、前回に続き、今回も鮨の名店がひしめき合う石川旅をお送りいたします。
能登島にある「一 能登島 HITOTSU NOTOJIMA」は、北陸では初、そして日本でもまだ珍しい“鮨オーベルジュ”。
そのうえ、絶景オーシャンビューの貸切サウナがあると聞きつけ、鮨好き&サウナ好きがアイデンティティの東原としては(ファッションなくて大丈夫そ?)黙っていられず、早速お伺いしてきました。
全室オーシャンビューの8室限定ゲストルーム

能登半島の東側、七尾湾に浮かぶ能登島は、周囲約72キロメートル、人口約2500人の自然に恵まれた小さな島。
能登島まで橋が通っているので、「一 能登島 HITOTSU NOTOJIMA」までは和倉温泉駅からタクシーで能登島大橋を渡り、10分ほどで到着します。
海風にたなびく白い暖簾をくぐってロビーへ入ると、そこにはど~ん!と青い海のパノラマがお出迎え。
目の前に広がる美しい景色を眺めながらウエルカムドリンクをいただきます。


ノンアルコールのスパークリングワインをチョイス
8組限定のゲストルームは、全室オーシャンビュー。
ゲストルームの名前は能登島の町名からとっているそうで、今回はそのなかでも専用のサウナとテラスを有する特別室「SUSO」に宿泊しました。
鍵を開けて中に入ると、そこは開放感満点な2面採光の角部屋で、床は畳敷きになった落ち着く空間。
石川県出身の建築家・中永勇司氏が手がけていて、木材や石材など自然のマテリアルがシックに調和しています。
客室のプライベートサウナも大人が寝そべって入れる十分な広さ。温度もセルフロウリュウで好みに合わせて自由に調整できます。

サウナ付き客室「SUSO」


客室のプライベートサウナ
アメニティも洗練されたこだわりを感じるラインナップ。
陳皮や桂皮などの生薬をブレンドした植物由来100%のオリジナルサシェが置かれていて、客室での入浴時間もラグジュアリーな癒しのひとときに。
バスアイテムは北海道・余市町の白ブドウ由来成分を用いた「クロノシャルム」、スキンケアはポーラの最高峰ブランド「B.A」シリーズを採用しているのもうれしい。
館内着として、持ち帰りOKなTシャツと、肌触りが心地よいオーガニックコットンのカーディガン&パンツが用意されていて、滞在中はどこでもこの格好でリラックスして過ごすことができます。

香り高い「クロノシャルム」のシャンプー、コンディショナー、ボディソープ

柔らかな肌触の館内着、Tシャツ、たびソックス
海景を望む開放的な貸切スパ・サウナでリラックス

一息ついたら、事前に予約していた貸切利用の温浴スパ・サウナへ。
大きな窓から七尾湾の絶景が広がる広々としたサウナ室には、立派な薪サウナが設置されていて、自分で薪をくべ、セルフロウリュウで自由に温度調節しながら楽しめるスタイル。
この際、温石にかけるロウリュウウォーターには、石川県らしく加賀棒茶を使用。
サウナ室に漂う香ばしいほうじ茶の香りと薪の爆ぜる音が五感を刺激し、より深いリラックス状態へと導いてくれます。
香ばしい加賀棒茶でセルフロウリュウ
屋外には、香り高い薬草湯の露天風呂と水風呂、そしてたくさんの椅子が並ぶととのいスペース。
今月の「由美たえこ」は、温&冷の2パターンをご用意しておりますのでお楽しみください。(いつにも増して誰得?)
屋内の専用ラウンジもあり、ととのいのあとは、火照った体にうれしいオロポ(=オロナミンCとポカリスウエットを混ぜて作るサウナーに人気のドリンク)や、地元で人気の「能登ミルク」のジェラートをゆっくり楽しむことができ、すべて貸切利用の料金にインクルーシブ。
90分の事前予約制で利用時間は先着順なので、希望時間がある方は早めにお問い合わせするのがおすすめ。
ちなみに宿泊者でなくても利用できる120分貸切デイユースプランもあります。

今月の「#由美たえこ」【温】薬草湯バージョン

今月の「#由美たえこ」【冷】水風呂バージョン


地元で人気の「能登ミルク」のジェラート。湯上りに最高
北陸の極上ネタを名店出身の職人が握る鮨コース

珍しい赤西貝の握り
“鮨オーベルジュ”と銘打つ「一 能登島 HITOTSU NOTOJIMA」。
オーベルジュというと一般的にはフレンチやイタリアンのイメージですが、鮨に特化したオーベルジュは日本でもまだ珍しく、私のように鮨に人生をかけている人間にとってはまさに待望の宿!
夕食は、金沢の鮨文化を牽引する名店「鮨みつ川」の大将・光川浩司氏が監修した鮨とつまみのおまかせコース一本。
能登半島は新鮮な海産物の宝庫。通年獲れるのどぐろや、県外にほぼ流通しないという赤西貝、夏は天然の岩牡蠣や黒アワビ、冬はもちろん蟹、蟹、蟹……はぁ、うっとり♡
そんな四季折々の極上のネタを、銀座や金沢の名店で腕を磨いた職人さんが握ってくださいます。

最初のひと皿はつまみの加能蟹。しょっぱなから口福♡

ぶりんっぶりんの能登牡蠣の握り
ひと通りコースが終わったら、おかわりのリクエストまで。お腹の容量MAXまでパンパンに鮨を詰め込んだら、食後はバーラウンジで一杯飲んでほろ酔いで就寝。
ちなみに、バーラウンジや客室内だけでなく、夕食時のアルコールなども含めてすべてがオールインクルーシブです。
鮨に合う地酒やワイン、地元のフルーツや野菜を使ったオリジナルカクテル、こだわりのソフトドリンクなど種類も豊富で、気兼ねなく楽しめるのがいい。

握りの腕前だけでなく、人柄も素晴らしい職人さんたちのおかげで楽しい時間に
翌日の朝食は、地産地消にこだわった「鮨職人のあさげ」。
彩りよく盛り付けられた「NOTO高農園」の新鮮な野菜サラダに、焼き魚、ご飯、味噌汁、焼き立てほかほかのだし巻き卵と、シンプルながらここでしか味わえない特別な朝食を、朝日輝く海を目の前にいただきました。

朝食は「NOTO高農園」の野菜サラダからスタート

「鮨職人のあさげ」。この日の焼き魚はのどぐろの一夜干し
自然の恵みに感謝して。洗練された大人の隠れ宿

翌朝は日の出とともに目覚め、部屋付きのサウナで軽く2セット。美しい朝焼けを全身に浴び、水平線と一体化するような開放感を味わいながらのととのいを体験を堪能しました。
こんなに静かに満ち足りたリトリートステイは、豊かな自然に囲まれた小さな島、そして8室限定のスモールラグジュアリーだからこそ叶う贅沢ですよね。

2023年9月に開業したこちらは、わずか3カ月で能登半島地震の被災で休業を余儀なくされましたが、クラウドファンディングやチャリティーイベントを通じて2024年春に営業を再開。
今回、素晴らしいおもてなしをしてくださった支配人の麻里さんにお伺いしたところ、地震で崩落した天井や壁のひび割れの修復作業は現在も続いているそう。いまだ能登のほとんどの宿泊施設がクローズするなか、少しでも地域に貢献できればという想いから、日々奮闘しながらゲストをお迎えしてくださっています。
そんな困難があったからこそ、改めて今この瞬間にも享受している自然の恵みに感謝しながら、穏やかな波に癒され、美食とプライベートサウナで心身ともにととのう——「一 能登島 HITOTSU NOTOJIMA」は、そんな大人の隠れ宿でした。

笑顔が素敵な支配人の麻里さん。ラウンジでのお話も楽しい時間でした

宿に向かう車中から能登大橋の風景
画像デザイン/齋藤春香 イラスト/木村美紀 写真提供・構成・取材・文/東原妙子