自然やリラックスを求めて一人で出かけたものの、結局、出かけた先も混んでいて疲れてしまった……なんて経験、ありませんか?今回は、東京・関東近郊のリトリートスポットを巡ってきたTRさんに、“時間・場所・過ごし方”をほんの少し“ずらす”ことで、混雑を避けながら快適に過ごせるコツを教えていただきました。

「ひとリート」とは…半日~日帰り・1泊2日程度の「一人で楽しむリトリート体験や旅」を表す造語。yoi発の、心と体のセルフケアに役立つ時間の使い方です。

TR

リトリート作家

TR

普段は雑貨・アパレル・家具ブランドなど複数のブランドのマーケターとして働きながら、自身が運営するメディア『Tokyo Retreat』を通して、東京・関東近郊のリトリートできるカフェ、レストラン、ホテル、サウナを巡る“癒しの旅”を発信中。日本で過ごすリトリートの意義を伝えながら、自分を整える時間や場所の提案を行っている。

“都市と自然と人とのバランス”はひとそれぞれ

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——まず、TRさんが“ひとリート”を始めたきっかけを教えてください。

TR 都会での生活や仕事って、毎日がスピーディで刺激的ですよね。私もそういう環境が嫌いなわけじゃないんですけど、ふとした瞬間に「自分や、大切なことと向き合う時間」がなくなっていると感じることがあったんです。

そんな時に目が向いたのが、日本の風景や、昔から大切にされてきた文化でした。もともとスノボや登山、サーフィンが好きで、自然の中にいるときは、自分の呼吸がゆっくりになるのを感じていたんです。いちばん素直な自分に戻れるというか……気がついたら、そこにある“静かな豊かさ”や、“本質的な心地よさ”を求めていました。

今は、そんな自然を愛する人や、自分の心の声をもう一度ちゃんと聞いてみたいと思っている人に向けて、リトリートの魅力を少しずつでも伝えられたらいいなと思ってInstagramで『Tokyo Retreat』を発信しています。

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——忙しく仕事する日々の中で、のくらいのペースで“ひとリート”時間を取り入れていますか?

TR “都市と自然と人との適切なバランス”ってあると思うんですよね。その比率は人それぞれで、どれが正解ってわけじゃないけど、うまくバランスを取れていない人が多いんじゃないかなって感じていて。正直、私自身もまだその途中にいると思います。

今は、月に1回くらいある出張の前後や、ふと時間が空いたときに、都内や日帰りで行ける距離感でサクッと“ひとリート”を挟むようにしています。いわゆるバカンスっていうよりは、日常の延長線上にそっと“非日常”を置いてあげるような感覚なんです。

大げさなことはせず、ほんの少し、自分の呼吸に意識を向ける。そんな、さりげない整え方が取り入れやすいし、無理なく続けられるのかもしれません。

——都内でもひとリートって満喫できるんですね。でも、混雑していない素敵な場所を見つけるのは大変じゃないんでしょうか?

TR そうですね。最初は「素敵だなぁ」と思って訪れた場所でも、やっぱり混雑していて。ゆっくり過ごすというよりは、コーヒーを飲み終えたらすぐ出ちゃう、みたいな少し忙しない感じがあったんですよね。

でも、いろんな場所に足を運んでみるうちに、時間・場所・過ごし方を少し“ずらす”だけでできる「混まない法則」みたいなものが、だんだん見えてきた気がします。

もちろん、遠出ができれば素敵でのんびりできる場所もたくさんあると思うんですけど、そうそう頻繁には行けないじゃないですか。

だからこそ、「あ、都内でもこんなにリラックスできる場所があるんだ」「日帰りでも十分満喫できるじゃん」ってわかると、それだけでふっと肩の力が抜けるというか。そういう安心感が、自分に穏やかさを与えてくれると思います。

【TR流】“ずらし”テクニック3つ!

TRさんがひとリートをもっと充実させるために実践しているのが、“ほんの少しのずらし”。都内から関東近郊まで、気軽に出かけられて、しっかりリフレッシュできる“ずらし”テクニックを3つ教えていただきました。

Technic 1. 時間をずらす

私がおすすめしたいのは、「オープン時間に合わせて行く」昼間のひとリート。自然光のやわらかい光に包まれた昼間ならではの景色は、本当に美しくて、心がほぐれていくのを感じます。自然の豊かさや造形の美しさを、まっすぐに味わえる時間だと思うんです。

オープン直後の時間帯なら、予約なしでふらっと立ち寄れるお店も多く
、混雑を避けられるのがうれしいポイント。ランチタイムなら価格もお手頃なので、気軽な“ひとリート”にもぴったりです。

そして、もし可能であれば「平日に行くこと」もぜひ試してみてほしい“ずらし”テクニック。混雑を避けて静かに過ごせるだけでなく、有給を使ってあえて平日に出かけることで、「この時間は自分のためだけのもの」と感じられる特別感が生まれます。

平日の有給は、ちょっとした贅沢。だからこそ、心に残る時間になります。バカンスのように完全に日常から切り離されたものではなく、どこか日常と地続きだからこそ、ライフスタイルにいい影響を与えてくれる。忙しく働く人にとって、平日の“ひとリート”は、きっと深く響くはずです。

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Technic 2. “泊まり”から“日帰り”にずらす

最近はホテルの価格がかなり高騰していますよね。以前なら気軽に泊まれた場所も、今はためらってしまうことが増えてきて。そんな時に見つけたのが、「日帰りでちょっとだけ贅沢をする」という選択肢でした。

例えば、軽井沢のラグジュアリーホテルのラウンジでお茶をしたり、景色のきれいなレストランでゆっくりランチをしたり。泊まりに行くと思えば、日帰りでその分の予算をかけると、十分にリッチな時間が過ごせるんですよね。

何より、泊まるとなると準備や翌日の予定も気になってしまうけれど、日帰りならその日の気分でふらっと出かけられる気軽さもある。無理なく、自分のペースで楽しめる“プチ贅沢”って、実はすごく今の気分に合ってるなって思います。

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Technic 3. 目的地をずらす

通勤ルート内の距離ではなくて、ひとリートのときは、あえて日常とちょっと距離をとってみるのがおすすめです。

例えば都内で働いているのであれば、普段の生活圏から電車で30分ほど離れている場所など、通勤途中や仕事では訪れないエリア。時間がある日は、関東近郊へ1〜2時間かけて小さな旅気分で出かけるのもいい。“少し遠い”たったそれだけなのに、不思議なくらい意識がふっと切り替わるんですよね。

だから、「このカフェ、素敵だな」と思ったら、たとえ周りに何もなくても、あえてそこに行ってみる。その場所だけを目的にして出かけることで、何にも急かされずに、ゆったりと流れる時間や空気をじっくり味わえるんです。

そして私にとっては、“移動時間”さえもひとリートの大切な一部。ポッドキャストやオーディブルを聴きながら、車窓の景色をぼーっと眺めているだけで、心がすっと静かになっていく。その何気ない時間が、じわじわと自分の内側を整えてくれる気がしています。

イラスト/AKIYO 構成・取材・文/高浦彩加