セックスやセルフプレジャー(マスターベーション)などでオーガズムを得られない「女性オーガズム障害」。女性医療クリニックLUNAネクストステージの中村綾子先生に具体的な治療法やアドバイスを伺いました。
女性医療クリニックLUNAネクストステージ院長
横浜市立大学医学部卒業。横浜市立大学附属病院勤務等をへて、女性医療クリニックLUNAネクストステージ院長に就任。女性骨盤底のエキスパートとして、尿漏れや腟のゆるみなどのフェムゾーン疾患やフェムゾーン美容の診療を日々行う。日本で数少ないフェムゾーン医療美容外来や女性性機能外来を立ち上げ、情報発信も積極的に行っている。
- Q1.女性オーガズム障害かも…と思ったら何科を受診すればいいですか?
- A1.女性性機能外来もしくは婦人科がおすすめです
- Q2.女性オーガズム障害の治療法は? セルフケアでも改善できますか?
- A2.自分のフェムゾーンに向き合い、オーガズムに達する経験を積むことが大切です
- Q3.メンタルが原因で起こる女性オーガズム障害の場合はどうすれば?
- A3.一人で解決しようとせず、カウンセリングでゆっくり向き合いましょう
- Q4.女性オーガズム障害のカウンセリングを受ける場合、事前に準備することはありますか?
- A4.症状が現れた時期や薬の内服歴、生理周期などがわかるとスムーズです
- Q5.セックスのたびにオーガズムに達することができるか不安になります…
- A5.ちいさな快感もオーガズム。気持ちよさを感じているなら不安にならないで
- Q6.女性オーガズム障害の治療にまつわる最新情報が知りたい!
- A6.腟レーザーや腟ヒアルロン酸注入に改善の可能性があることがわかってきました
Q1.女性オーガズム障害かも…と思ったら何科を受診すればいいですか?

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A1.女性性機能外来もしくは婦人科がおすすめです
いちばんスムーズなのは、性にまつわることや女性特有の機能についての相談ができる女性性機能外来ですが、まだそれほど多くないので、婦人科または泌尿器科でも大丈夫。ただし、泌尿器科の医師は男性が多いので、女性の医師を希望される場合は事前に確認しておきましょう。
Q2.女性オーガズム障害の治療法は? セルフケアでも改善できますか?
A2.自分のフェムゾーンに向き合い、オーガズムに達する経験を積むことが大切です
女性オーガズム障害に推奨される薬物療法は今のところありませんが、適切な治療と支援によって改善することが可能です。LUNAネクストステージでは、まずセクシャルトイを使ったセルフプレジャーの指導をしています。どうやったら自分がオーガズムを得ることができるのかを知り、オーガズムに達する経験を積むことがとても大切なので、性感帯のひとつであるクリトリスを刺激するものを紹介したり、フェムゾーン(デリケートゾーン)にまつわるアドバイスをしたりします。また、骨盤の血流が悪くなるとオーガズムが得られにくくなるので、股関節の回旋運動など適度な運動も重要です。また、プランクなどの体幹トレーニングは、骨盤底筋も一緒に鍛えられると言われています。
欧米では、多くの人が10代後半になるとフェムゾーンケアを始めます。母親から娘へフェムゾーンケアがすすめられるほど、「フェムゾーン」はオープンなものなんです。日本では、「“デリケート”ゾーン」という言葉のとおり、できるだけ触らないほうがいいものとして扱われがちですよね。ほとんどセルフケアもしないし、相手からのクリトリスや性器への刺激が痛くても我慢してしまう。フェムゾーンは女性にとって第二の顔。もう少し自分のフェムゾーンに興味を持ってほしいと思います。
Q3.メンタルが原因で起こる女性オーガズム障害の場合はどうすれば?
A3.一人で解決しようとせず、カウンセリングでゆっくり向き合いましょう
心理的要因が強い場合、特に「自分が悪いのかもれない」といった自責感情がある人や性的な物事を“けがれている”と考える傾向がある人は、幼少時からの環境(家族や身近な大人など)による影響が強いので、カウンセリングが必要です。クリニックの臨床心理士が担当する場合もあれば、「カウンセリングルーム Esolve」などのセックスカウンセリングにつなぐこともあります。
幼い頃から受け続けてきた影響を取り除くには時間がかかりますが、自分でフェムゾーンのケアをしながら慣れていくことも必要です。ただ、性への嫌悪感が強い場合、婦人科で診察のために医師が触れただけで泣いてしまう人や、自分の性器に触れない人もいます。セルフケアが難しい場合は、理学療法士などがサポートに入るクリニックもあるので、無理をせずに相談してほしいと思います。
Q4.女性オーガズム障害のカウンセリングを受ける場合、事前に準備することはありますか?

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A4.症状が現れた時期や薬の内服歴、生理周期などがわかるとスムーズです
状況によって難しい場合もありますが、下記をまとめておいていただけると話がスムーズに進められると思います。
・症状が現れた時期
・薬の内服歴
・生理周期の記録
・婦人科疾患の有無
・過去のパートナーとの間で症状が起きたかどうか
それから、例えば「親が厳しかった」といった教育的環境やプレッシャーがあった場合、あるいは親からのDVや性加害を受けていた場合は、無理のない範囲で構いませんので、共有していただけると治療方法を判断する手がかりになると思います。一人で抱え込まず、早めに相談してください。
Q5.セックスのたびにオーガズムに達することができるか不安になります…
A5.ちいさな快感もオーガズム。気持ちよさを感じているなら不安にならないで
パートナーとの関係でストレスを溜めないことや、意思疎通のためのコミュニケーションも大事ですが、まずお伝えしておきたいのが「気持ちいい=オーガズムである」ということ。アダルトビデオの影響で、女性も男性の射精と同じく一気に激しいオーガズムに達するものだと勘違いしている人が多いのですが、ちいさな快感の波が続く人もいますし、むしろそちらのほうが多いので安心してほしいと思います。気持ちよさを感じているなら、それは十分オーガズムに達しているので不安にならないでくださいね。
また、女性の場合は性欲を満たすためだけでなく、愛情を感じるためにセックスをしている人も多くいるので、セックス=オーガズムと考える必要はありません。そしてセックスは恥ずかしいものではなく、楽しむものです。具体的な工夫としては、男性は視覚的な刺激でオーガズムを得られますが、女性は言語的な刺激が効果的なので、パートナーから「すごく気持ちいい」などの声がけをしてもらったり、普段と違うシチュエーションなどで“特別感”をつくったりすることも有効です。
Q6.女性オーガズム障害の治療にまつわる最新情報が知りたい!
A6.腟レーザーや腟ヒアルロン酸注入に改善の可能性があることがわかってきました
産後の腟の緩みなど、機能的な問題からオーガズムが得られなくなった場合、腟トレだけでは改善されないケースもあります。LUNAネクストステージではそうした場合の治療として腟レーザーや腟ヒアルロン酸注入などを行っています。これらの治療によって腟の壁がふっくらとし、潤いも改善されることでオーガズムを得られやすくなる可能性があります。実際に治療して症状が改善されたケースもありました。