「yoi」ではSDGsの17の目標のうち「3. すべての人に健康と福祉を」、「5. ジェンダー平等を実現しよう」、「10. 人や国の不平等をなくそう」の実現を目指しています。そこで、yoi編集長の高井が、同じくその実現を目指す企業に突撃取材! 第6回は、心・からだ・肌にアプローチする「THREE」のホリスティックケアについて、ブランドマネージャーの桝 浩史さんにお話を伺いました。
◆「THREE」とは?
「FIND YOUR BALANCE」というブランドメッセージのもと、矛盾や迷いを受け入れ、自分の振れ幅を見つめながら、心地のよいバランスを楽しむことを提案。植物が持つ力とサイエンスをかけ合わせたホリスティックケアアイテムは、確かな手応えと心地よさを与えてくれる名品が揃う。
桝 浩史さん(写真左)と高井編集長。
THREE/FIVEISM × THREE ブランドマネージャー
大手化粧品メーカーを経て2021年にACROに入社。2022年1月にTHREEとFIVEISM × THREEのブランドマネージャーに着任。プロダクト開発からクリエイティブ、VMDなどブランディング全体を統括する。
「創造」を意味する数字から生まれたブランド
高井 2009年にTHREEが立ち上がったときのことは今もよく覚えています。自然由来の成分が特徴的でありながら、”ほっこりオーガニック”ではなく、とてもスタイリッシュで新鮮でした。まずは、ブランドに込められた思いの部分から教えていただけますか。
桝 THREEというブランド名は、数学を使った学問である数秘術からヒントを得ています。数秘術において「3」は「創造」を意味する数字であること、そして相反するものをかけあわせて1×1=3となるような新しい価値を生みだしていくブランドになりたいという思いから名づけました。
高井 当時はヨガ教室などが増え、ヴィーガンが知られ始めた時期でもありましたよね。THREEが大切にされているホリスティックケアについても伺えますか。
桝 「心・からだ・肌のバランスを感じて、自分本来の美しさを総合的に引き出す」というホリスティックケアの考え方は、ブランドメッセージの「FIND YOUR BALANCE」とも重なりますが、“真逆に思える価値観や自己矛盾は誰の中にもある”ということを肯定するメッセージだと私は受け止めています。
例えば、日々すごく健康を意識した食事をしていても、月に1度のチートデーにはピザをコーラで流し込んだっていい。それを含めてあなたなのだから、そのバランスを大切にしてほしい。「どちらが正義か」ではなく、その矛盾も楽しみましょうというスタンスです。
精油の力をエフォートレスに取り入れてほしい
高井 まさに今の時代に必要なメッセージですね。THREEのそういった考えは、使う人や社会にどんな影響を与えると思われますか。
桝 心・からだ・肌は連動しているからこそ、どれかひとつではなく丸ごと整えることが健康や美しさにつながるというのがホリスティックケアの考え方です。それは自分の機嫌を心地よくとるための視点であり、自分に対しても、他人や社会に対しても優しくなれるセルフリトリートにつながるものだと感じます。
高井 確かに、大人になると自分の機嫌をとることが難しい場面も増えますよね。
桝 ライフステージによっては自分の時間が取れない方がいたり、仕事ですごく責任が伴うキャリアステージにいる方がいたり。ストレスフルで、自分を大切にすることがままならない方も多い現代において、ホリスティックケアの考え方やアイテムは「自分をどれだけセルフラブできるか」という点で力になれるのではないかと思います。
その思いは創業から変わらない部分であり、ケアのひとつの手段として、精油の力をエフォートレスに取り入れていただきたいという思いが強くあります。
高井 THREEといえば香りですが、リニューアルした「バランシング シリーズ」や昨年秋に登場したオードトワレ「THREE エッセンシャルセンツ」も素晴らしいですよね。
桝 ありがとうございます。THREEでは精油が持つ力のエビデンスをきちんと取得し、“いい香り”を超えた、現代を生きる上での力強いパートナーとなってくれるものとして配合しています。
アロマテラピーをする時間は取れなくても、クレンジングやオードトワレを使うことで、お守りのような感覚で精油の力を取り入れながら、自分の機嫌をとっていただけたらと思います。
高井 機嫌をとるといっても、ストイックにケアをすることではなく、たまにバランスを崩す自分もいることを受け止めるということですものね。そういう視点を知ることも、リトリートにつながる気がします。
桝 そうですね。義務感はいちばんのストレスというか、負担になりますから。
美意識が導き出したサステナブルなアップサイクル
高井 そういう思いがアイテムに込められているTHREEだからこそ多くの人に愛されるのだなと、しみじみ腑に落ちました。そしてTHREEが掲げていらっしゃる開発ポリシーについてもぜひ聞かせてください。
桝 THREEでは3つの開発ポリシーを掲げています。1つ目が「Natural×Science」。グローバルかつニュートラルな基準である「ISO自然由来指数」に基づいた90%以上のナチュラル成分に、必ず1%以上のサイエンスをかけ合わせ、確かな実感にこだわっています。
実は、純度100%のものって自然界には存在しないそうなんです。ですから「ナチュラルが上」とか「サイエンスが上」ではなく、ハイブリッドというか、賢く選択してキュレーションして、心地よさへと昇華するようなものづくりを心がけています。
高井 THREEは動物実験実施原料やマイクロプラスチックなどの配合フリーも実現されていて、声高にはおっしゃらないけれど、かなりストイックにものづくりをされている印象があります。
桝 ありがとうございます。2つ目は「Japan×World」で、「身土不二」の思想を大切にしています。「身土不二」とは、土地とそこに暮らす生命は切っても切り離せないという視点です。
例えばベルガモットはシチリア、フランキンセンスはソマリアなど、植物ごとに最適な「身土不二」があります。世界中の最適なものを厳選しながら、キーとなる精油や植物エキスはできるだけ国産にこだわるようにしています。そして、3つ目が「Upcycle」です。
高井 アップサイクルは、ファッションも含めて意識される方が増えていますよね。
桝 そうですね。ただ、私たちの場合は社会からの要請で取り組んだわけではなく、自分たちの美意識を追求した結果、環境への配慮にもつながっていたという自然な流れだったので、無理なくサステナブルに続けられるのだと思います。
例えば、創業から使っている「ティーシードオイル」は、茶畑で放置されていたお茶の実に着目したところ、高い美容保湿効果が明らかになりました。また、「バランシング シリーズ」のガラス容器は、精油を光から守るためにリサイクルガラスを80%以上採用しています。
高井 素敵なボトルですよね。ガラス表面や角の表情なども含めて、すごくこだわっていらっしゃるんだろうなと思います。
桝 リサイクルガラスは配合率が高いほど表面が濁る特性があるので、業界平均は30%程度といわれます。このボトルは、その濁りを“奥行き”に変えられないかという発想から生まれました。リサイクルガラスを使うことで、40%前後のCO2排出削減にもつながっています。
リサイクルガラスの配合率をコントロールできないからこそ生まれる揺らぎも、絶妙な表情のニュアンスに。
次の世代に日本のクリエイションを伝えていきたい
THREE ホリスティックリサーチセンターでのハーブ収穫。
高井 すでにさまざまな取り組みを実践されていますが、今後の展望についてもお聞かせいただけますか。
桝 いくつか進めたいことはあるのですが、いちばん強化したいのが、先ほどお話しした「身土不二」の考えに基づく国産精油の開発です。2022年9月に自社のリサーチ機能としてTHREE ホリスティックリサーチセンターを設立し、研究や原料開発を行なっています。
原料開発の一環として、佐賀県や熊本県などで自治体や地域企業とパートナーシップを組んで、耕作放棄地などを活用した国産ハーブ栽培に土づくりから取り組んでいます。ハーブは生命力の強さと短期間で栽培できることが魅力なので、高齢化した地域でも、比較的取り組みやすいという利点があります。
高井 これからますます注目されそうな取り組みですね。
桝 国産精油の開発に力を入れることで、いい商品づくりだけではなく、雇用機会の創出などに還元できたらという思いもあります。そして、リサイクルガラスをつくる力や精油をつくる力の根幹に、実は日本の「手仕事」というクリエイションがあるということを次の世代に伝えていきたいですね。「日本のものづくりってクールじゃん」と思ってもらえたらいちばん嬉しいなと思っています。
取材を終えて…
コロナ禍を経て、精油の香りの人気が高まっています。スキンケア製品としての実力も、環境への配慮もトップクラスの「THREE」。けれど、いつも静かで落ち着いて、使う人の心と肌を癒し、いい状態で満たしてくれます。ふと、今季ファッションで注目されている「クワイエット ラグジュアリー」※という言葉を思い出しました。また、「THREE」はコスメのジェンダーレス化も、世の中に先駆けて発信していました。バランシングステムシリーズやFIVEISM × THREEなどは、パートナーにプレゼントしたらホリスティックケアを知ってもらうきっかけにもなりそうです。(高井)
※過剰に主張せず、上質な素材で控えめかつエレガントなデザイン。
撮影/露木聡子 構成・取材・文/国分美由紀 企画/高井佳子(yoi)