「yoi」ではSDGsの17の目標のうち「3. すべての人に健康と福祉を」、「5. ジェンダー平等を実現しよう」、「10. 人や国の不平等をなくそう」の実現を目指しています。そこで、yoi編集長の高井が、同じくその実現を目指す企業に突撃取材! 第3回は、女性がより豊かに暮らせる、暴力のない社会の啓発と実現を目指す「コスメデコルテ パープルリボンプロジェクト」について、「コスメデコルテ」の藤永あすかさんにお話を伺いました。

コスメデコルテ パーブルリボン DV リポソームアドバンスト SDGs

◆「パープルリボンプロジェクト」とは?
1994年、アメリカで女性に対する暴力の被害当事者によって生まれた草の根運動で、現在は国際的な運動へと広がっている。コスメデコルテでは、「Find your true beauty ~あなたの輝きは、やがて世界を照らす~」をキーメッセージとするサステナビリティ推進活動の一環として2022年にスタート。NPO法人「全国女性シェルターネット」と連携してブランド独自の基金を立ち上げ、「リポソーム アドバンスト パープルリボン セット」の売り上げの一部を寄付し、シェルターの運営維持や活動を支援している。

コスメデコルテ パープルリボン リポソーム アドバンスト SDGs 

コスメデコルテの藤永あすかさん(写真右)と高井編集長。

藤永あすか

コスメデコルテ

藤永あすか

ブランドマネージャー/商品企画課課長。2007年にコーセー入社後、営業、商品企画、経営企画を経て2019年より現職。DECORTÉのブランド戦略策定から商品の企画立案、開発、広告などのクリエイティブ業務を統括。これまで手がけてきた商品は約1000品。「ナンバー1でオンリー1を叶えるものしか発売しない」をモットーに日々商品づくりに励む。

高井佳子

yoi編集長

高井佳子

入社以来、『ノンノ』『バイラ』『マリソル』『エクラ』と、幅広い年代の女性誌媒体に編集者として携わる。2021年@BAILA編集長に就任、2023年6月より現職。

ブランドの軸となる「人」を想うプロジェクト

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高井 2022年にスタートした「コスメデコルテ パープルリボンプロジェクト」ですが、まずは立ち上げの経緯について伺えますか。

藤永 コスメデコルテは、長い年月をかけて培ってきたものづくりの誇りを注ぎ込んだ商品とサービスを通じて、一人ひとりが何にもとらわれることなく、自分らしく輝ける社会の実現を目指しています。そこで「ウーマンエンパワメント」というテーマを掲げ、ジェンダーにとらわれず活躍できる社会に貢献するための活動を具現化して生まれたのが、「コスメデコルテ パープルリボンプロジェクト」と「KIHIN to the future」です。

高井 「KIHIN to the future」ではどんな活動をされているのですか?

藤永 3月8日の国際女性デーに合わせて、日本の伝統工芸の分野で活躍する女性の活動や後継者の育成活動を支援しています。コスメデコルテは「満ちてくる誇り、美の勲章」というメッセージのもと、「人」を輝かせたいと願ってきたブランドなので、どちらも「人」を想うプロジェクトになりました。そもそもコーセーという企業自体が、戦後に創業者の小林孝三郎の「女性の心が明るくなれば、世の中全体が活気づく」という考えから生まれているんです。

高井 だからこそ「人」がキーワードになっているのですね。

藤永 はい。そしてSDGsというとまず「環境」が浮かびますが、ものづくりをする企業としてプラスチック量の削減やエシカルな原料の積極活用はすでに実施していました。ほかにできることを考えたとき、やっぱり「人」に貢献していきたいなと。1970年にコスメデコルテが誕生して依頼、ブランドを育ててくれたお客さまやスタッフの多くが女性だったこともあり、そこに恩返しをしていきたいと思いました。

「A light of true hope」というメッセージに込めたもの

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高井 yoiでも配偶者やパートナーからの暴力(DV)やハラスメントなどに関する記事を掲載していますが、シェルターに避難せざるを得ないケースも含めて、とてもデリケートな問題だと思います。藤永さんたちがプロジェクトを実施する上で大切にされていることはありますか。

藤永 おっしゃるとおり、実はかなり勇気がいる活動なんです。内閣府の調査では、およそ4人に1人が配偶者やパートナーから精神的暴力や経済的暴力、性的暴力など何かしらの形で暴力を受けた経験があるにもかかわらず、約半数の方が相談できずにいる現状があります。暴力撤廃の啓発活動をしていきたいけれど、それが当事者の方を苦しめるきっかけになってしまったらどうしよう…と、すごく悩みました。色々考えた結果、まじめに、そしてやわらかい光で包み込まれるようなトーンで取り組もうと決心したんです。

高井 プロジェクトの「A light of true hope すべての女性に、自分らしく生きる権利を。」というメッセージは、やわらかな光のイメージから生まれたのですね。

藤永 はい。希望の光を灯すという意味の「Light」と、すべての女性が自分らしく生きる権利としての「Right」、その両方の意味を込めました。

高井 素敵なダブルミーニングですね。DVやハラスメントなどは、家庭内の暴力と思われがちですが、「デートDV」という言葉があるように、誰にでも起こり得る問題です。このプロジェクトを通じて、そういった気づきにつながるケースもあるのではないでしょうか。

藤永 まさに、「こういうことも暴力なんだと気づけた」「私がモヤモヤしていたことは間違いじゃなかったと自信が持てた」「関係性についていい・悪いの判断がなんとなくできるようになった」という声をいただいています。

高井 気づくことは本当に大切ですよね。例えば、当事者の身近にいる誰か一人が気づけていれば、「それっておかしいよ」と言うことができますから。

藤永 実際、社内でも「そういえば私も過去にこういう経験があった」という会話が生まれているので、暴力を繰り返さないための予防線にもなれるのではないかと感じます。

ゴールは個々の意識と行動が変化し、社会が変わること

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東京の渋谷区立宮下公園では今年もパープル・ライトアップ「DECORTÉ Purple Lightup 2023」を実施(2023年11月10日~12月25日)。


高井 エイジレスに愛されるブランドだからこそ、多くの方々に知っていただくきっかけになるでしょうね。プロジェクトの具体的な施策についても伺えますか。

藤永 社内では、女性に対する暴力についての教育を実施しています。そして、今年も内閣府が毎年11月に推進する「女性に対する暴力をなくす運動」に賛同し、渋谷区立宮下公園でのパープル・ライトアップやNPO法人「全国シェルターネット」への寄附など、社会に対する啓発と被害当事者支援の両面から取り組み、女性に対する暴力のない社会の実現に貢献していきます。

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11月1日発売の限定セット「コスメデコルテ リポソーム アドバンスト パープルリボン セット 2023」の売り上げの一部を寄付。

高井 活動は2年目ということですが、社内外でのポジティブな変化は感じていらっしゃいますか。

藤永 感じますね。お客さまからは商品購入の際に活動への共感や賛同の声をいただきますし、店頭に立つBC(ビューティコンサルタント)からも「よりブランドへの誇りが持てた」「自分が働いている意義を感じられてうれしい」といった反響がありました。チームや社内でも「こういうことをやったら、もっと社会がよくなりそうだよね」という会話や、サステナブルな活動につながるアイデアが生まれるようになっています。

高井 それは素晴らしいですね。逆に、現状で課題のようなものはあるのでしょうか。

藤永 大きな課題はまだありませんが、繊細な問題を扱う活動なので、被害に遭われた方に受け入れていただけているか、サポートになっているのか、どのように情報を届けていくかといったことは慎重に考えなければいけないと思っています。そして、何か違和感があればすぐに方向転換や改善をしていきたいとも考えています。そのためにも、全国女性シェルターネットとはこまめな情報交換をしています。

高井 今後の展望として考えていらっしゃることがあればぜひ。

藤永 この活動のゴールは、一人一人の意識や行動が変わり、社会全体が変わっていくことなので、まずは続けることが大事かなと。そして、「コスメデコルテ パープルリボンプロジェクト」と「KIHIN to the future」以外にも新たなチャレンジをしていきたいので、アイデアを練っているところです。

取材を終えて…
今回、とても心に残ったことがあります。それは、今回の取り組みについて店頭のBCさんなどが仕事に誇りを持てる、働いている意義を感じる、とおっしゃっていること。そういった方は、きっと商品のよさだけでなくブランドのメッセージも、心をこめて私たち消費者に伝えてくれるのでしょう。BCさんはもともと熱量高く商品の説明をしてくれますし、なんだかとても、あたたかい気持ちになりそう…と想像しました。「人」と「人」の心のこもったやりとりや共感こそが、社会が善く変わることの第一歩なのだと感じました。(高井)

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撮影/露木聡子 構成・取材・文/国分美由紀 企画/高井佳子(yoi)