「yoi」ではSDGsの17の目標のうち「3. すべての人に健康と福祉を」、「5. ジェンダー平等を実現しよう」、「10. 人や国の不平等をなくそう」の実現を目指しています。そこで、yoi編集長の高井が、同じくその実現を目指す企業に突撃取材! 第10回となる今回は、超吸収型サニタリーショーツブランド「Bé-A〈ベア〉」が取り組む「生理セミナー」について、代表取締役CEOの髙橋くみさんにお話を伺いました。

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◆「Bé-A〈ベア〉」とは?
「Girls be ambitious. 望めば変わる。人生も、世界も。」をコンセプトに、女性をはじめ、すべての人の心身の健康と活躍を応援する超吸収型サニタリーショーツブランド。ブランド立ち上げから生理セミナーやショーツ寄贈などの支援を行っており、2024年からは女性をエンパワメントし、女性につながるすべての人々とともに豊かに生きる社会を築くことを目的としたソーシャルプロジェクト「GBA(ジービーエー)」をスタート。企業とのコラボレーション、国内外での生理セミナーや吸水ショーツの普及支援活動、情報発信などを行っている。

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(左から)高井編集長と代表取締役CEOの髙橋くみさん。

髙橋くみ

代表取締役CEO

髙橋くみ

UCL(ロンドン⼤学)卒業後、外資系映画会社、外資系アパレル会社を経て共同経営者の⼭本未奈⼦と共にMNC New Yorkを設⽴。シングルマザーに育てられたこともあり「ジェンダー平等」「⼥性のエンパワメント」には⼈⼀倍の関⼼と持論を持つ。2020年3⽉にBe-A Japanを設⽴。家族と暮らすアメリカ・ロサンゼルスと日本を⾏き来しながら経営を⾏う傍ら、生理や女性活躍推進に関してのセミナー等を積極的に行う。

高井佳子

yoi編集長

高井佳子

入社以来、『ノンノ』『バイラ』『マリソル』『エクラ』と、幅広い年代の女性誌媒体に編集者として携わる。2021年@BAILA編集長に就任、2023年6月より現職。

「次世代によりよい世界を手渡したい」という思いのもとスタートした「生理セミナー」

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高井 今回は、ブランド設立当初から行われている「生理セミナー」について、立ち上げのきっかけや思いはもちろんですが、中学校や高校での開催にいたるまでのお話も詳しくお伺いできたらと思います。

髙橋 ありがとうございます。生理セミナーは、女性支援のためのソーシャルプロジェクト「GBA(ジービーエー)」のひとつで、もともとブランド立ち上げ時のクラウドファンディングで1億円を達成したときから、「これだけ生理で困っている方たちがいて、期待してくださっているんだ」と強い使命感がありました。

そして、クラウドファンディングの目的のひとつだったジュニア用吸水ショーツをつくるにあたって、「生理を含めた性教育とセットで届けなければ伝えきれない」と考えたことがきっかけです。その思いを阪急阪神百貨店のバイヤーの方にお話ししていたら、「阪急うめだ本店で、親子向けの生理セミナーをやりませんか?」と言っていただいて。

高井 以前、ゲランの取り組みについて取材した際も、やはりスタートは百貨店での開催でした。そこから、どうやって学校での開催にこぎつけたのでしょう?

髙橋 生理セミナーを続ける中で、参加者の方たちから「これを学校でもやってほしい」という声が上がりはじめたんです。ちょうど同じ頃、親子向けセミナーが紹介された記事を見てくださった湘南学園中学校高等学校(神奈川県)の高校生から「うちの学校でやってほしい」とご連絡をいただき、2022年に実施することができました。

また、私たちはユーザーの方を中心とした「ベア サークル」という生理ライフをよくする会を運営しているのですが、メンバーに全寮制の中高一貫男子校である海陽学園(愛知県)で保健体育を担当している女性がいらっしゃって。彼女が2年がかりで学校を説得して実現してくださり、それらの記事を見た方たちからも声をかけていただくようになりました。

「生理セミナー」で話してほしいこと、不安なことを事前に生徒からヒアリング

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高井 取り組みがきちんと当事者に届いて反響が生まれ、次のステップへとつながっていったのですね。学校での開催にあたって工夫されたことはありますか?

髙橋 学生向けの生理セミナーでは、事前にオンラインミーティングを行い、生徒さんたちにヒアリングしています。例えば、2023年に千葉の県立高校の先生からご依頼があったときも、生徒会の学生さんたちに、どんなことを話してほしいか、どんなことを恥ずかしいと思うかといったことをヒアリングしたうえで行いました。

高井 そうした声は学校によっても違うものですか?

髙橋 同じ高校生でもまったく違いますね。初めて生理セミナーを開催した湘南学園中学校高等学校は、男の子たちが「パートナーができたときに大切にしてあげたいから、生理のことをちゃんと知りたい」というスタンスだったんです。ですから、生理中にはどんな痛みや症状があるのか、そのときにどういうふうに声をかけてあげたらいいのか、といったことを知りたいということでした。

また、中高一貫男子校の本郷中学校・高等学校(東京都)で開催した際は、「医師を目指しているので、女性の体について知りたい」など、医学的・社会的な側面に興味を持つ生徒さんが多かったですね。どの学校でも、皆さん本当に真剣に聞いてくれます。

知識を持つことで、災害時などの女性への対応も変わっていくはず

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高井 発信する場を持つからには、相手にフィットさせた内容を提案することが大切なのですね。

髙橋 そうですね。例えば、2024年3月に生理セミナーを開催した福島県立川俣高等学校がある川俣町は、東日本大震災の際に町自体も被災しながら、原発周辺の市町村から避難してきた4万人以上の方を受け入れました。その数は、町の人口(当時)の約3倍にあたります。

当時は備蓄品の生理用品が不足し、自治体の方々が1軒1軒回りながら生理用品を集めたそうです。ですから、生理セミナーでは生理についての理解はもちろん、災害時のことも理解したいというリクエストをいただきました。このように、さまざまなシチュエーションに合わせて開催しています。

高井 能登半島地震でもさまざまな困りごとが起きたと聞きますし、生理がある女性にとって、災害への備えは本当に大切なテーマだと思います。

髙橋 「避難所で生理用品が1〜2枚しか配られなかった」というニュースがありましたが、配布される担当の方が、そもそも生理中に何枚ぐらいのナプキンが必要かを知らなければ、わからないのは当たり前だと思うんです。そうしたことを生理セミナーで正しく知り、理解が深まれば、不要な行き違いも生まれなくなるのではないかと思っていて。

高井 おっしゃるとおりですね。生理セミナーの反応で印象的だったことはありますか。

髙橋 男子生徒の反応でいちばん多いのは、「こんなにナプキンの交換頻度が多いとは思わなかった」というものです。また、生理のときにイライラしたり腹痛が起きたりすることは聞いていても、眠くなる・お腹がすくといったほかの症状やPMS、排卵などについては知らなかったというケースが多く、男性の先生からも「知らなかった」という声があがりますね。

100人いれば、100通りの生理の悩みがある

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高井 2024年から、公立高校の受験では生理による体調不良が追試験の対象になりました。中高生のときにもし学校で経血が漏れたり、椅子についたりしてしまったら、本当に心が折れるようなショックだろうと思います。その点、先日アップデートしてリリースされたジュニア用の「ベア ペティート シグネチャー ショーツ 04」は本当に心強いアイテムですが、サイズ以外にも大人用との違いがあるのでしょうか?

髙橋 ショーツ自体の構造は同じです。ただ、ジュニア用は吸収体(肌に触れるクロッチ部分)がグレーになっています。というのも、始まって2〜3年は、毎月同じリズムでくるとは限らないので、いつきたか、どれくらいの量なのか、何日目が多いのか、クロッチの前側に溜まりやすいといった伝い漏れの傾向なども目で見て理解してほしいなと思って。

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高井 知ることの意義は本当に大きいですよね。先日、エチオピアでも生理セミナーを開催されたそうですが、文化が違う国での開催はいかがでしたか?

髙橋 学校教育で生理について学ぶ機会がほとんどないせいか、現地の女性たちがものすごく熱心に聞いてくださって、終了後も囲まれて質問を受け続るほど反響がありました。「タンポンを使うと処女でなくなるのでは…という心配があるけれど、実際はどうですか?」という質問もありました。

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エチオピアでの活動の様子。

高井 それは大きな一歩ですね。国内外で生理セミナーをスタートしてみて、想定とのギャップはありましたか?

髙橋 ギャップはありませんが伝えたいことがどんどん増えています。100人いれば、100通りの悩みがあるので。例えば最近は、生理用品の捨て方や伝い漏れが起きる仕組みから、大人でも意外と知らない痛み止めの種類についても伝えています。

また、経血が体外に排出されて鉄分不足になることで体がだるくなったり、朝起きられなかったりすること、鉄分を補給するだけでも体調が楽になるケースがあることなども伝えていくつもりです。今後もさまざまなパートナー企業様と一緒に、GBAの活動をサステナブルに続けていきたいと考えています。

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取材を終えて…こちらの取材のすぐ後に、中高一貫男子校の本郷中学校・高等学校で開催された生理セミナーを見学しました。生徒さんたちはナプキンを開いてみたり、タンポンを水につけてみたり。体の仕組みを学んだうえで、「生理がある女性の日常生活」を理解することが大変貴重だと感じました。ディスカッションタイムでは、“正解はない”という前提のもと、「もし、目の前を歩いていた女性のスカートに血がついていたら?」というお題も。生徒さんが一生懸命考えて答える姿に、目頭が熱くなってしまいました。この生徒さんたちが創る未来はきっと明るくなる、とも感じました。

おそらく、ナプキンやタンポンを生涯で1度も触ったことがない男性も多いのではないでしょうか。ちなみに「生理セミナー」では、実は女性の私も知らなかったり、知識があやふやだったことも学べるのです。体の性別、性自認、年齢問わず、すべての人が「生理セミナー」を受けられる環境を、yoiでも考えていきたいと思いました。(高井)

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撮影/露木聡子 画像デザイン/坪本瑞希 取材・文・構成/国分美由紀 企画/高井佳子(yoi)