「yoi」ではSDGsの17の目標のうち「3. すべての人に健康と福祉を」、「5. ジェンダー平等を実現しよう」、「10. 人や国の不平等をなくそう」の実現を目指しています。そこで、yoi編集長の高井が、同じくその実現を目指す企業に突撃取材! 第8回は、「ゲラン」が取り組むミツバチ保護活動を子どもたちに発信する授業「BEE SCHOOL」と、女性養蜂家の育成・支援プログラム「WOMEN FOR BEES」について、リテール マーケティング マネージャーの荒谷 雅さんにお話を伺いました。

ゲラン サステナビリティ BEE SCHOOL アベイユ ロイヤル 養蜂 SDGs ミツバチ

◆「BEE SCHOOL」とは?
次世代にミツバチ保護への意識を高めてもらうことを目的にスタート。日本では2022年から本格的にスタートし、2023年は小学校7校を含む全国12カ所で約560人の小学生が修了した。2024年は15カ所以上で実施予定。2023年末の時点でゲラン ジャパンの社員参加率は100%。


◆「WOMEN FOR BEES」とは?
ユネスコや現地のローカルパートナーと連携した女性養蜂家養成プログラム。養蜂業への女性の参画や、生物多様性の保全を推進することで、社会にポジティブなインパクトを生み出すことを目的に2020年より始動。日本では2022年からスタート。

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(写真左から)高井編集長とリテール マーケティング マネージャーの荒谷 雅さん。

荒谷 雅

リテール マーケティング マネージャー

荒谷 雅

マーケティング&コミュニケーション本部所属。日本におけるゲランのサステナビリティ活動をリードするほか、百貨店やポップアップで実施するイベントなどの企画・実行を担う。

高井佳子

yoi編集長

高井佳子

入社以来、『ノンノ』『バイラ』『マリソル』『エクラ』と、幅広い年代の女性誌媒体に編集者として携わる。2021年@BAILA編集長に就任、2023年6月より現職。

百貨店での開催から始まった「BEE SCHOOL」

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高井 ハチミツの修復効果に着目した「アベイユ ロイヤル」シリーズをはじめ、ゲランにとってミツバチはブランドの象徴でもありますが、長く取り組んでいらっしゃるミツバチ保護活動から「BEE SCHOOL」がスタートした経緯についてお伺いできますか。

荒谷 おっしゃる通り、ゲランにとってミツバチはブランドのシンボルであり、切っても切り離せない存在です。そもそもミツバチとの関わりの起点は19世紀まで遡ります。1853年に、ゲラン創業者であり初代調香師のピエール フランソワ・パスカル・ゲランが、ナポレオン三世の皇后ユージェニーのためにゲラン初のオーデコロン「オーインペリアル」を創作しました。そのとき献上した香水瓶に、ナポレオン家の紋章であるミツバチ69匹があしらわれたことが始まりです。

プロダクトを生み出すために自然から恵みをもらっているのだから、私たちも何か恩返しをしなければいけない。その思いがミツバチの保護活動につながっています。

小学生を対象にした環境教育活動「BEE SCHOOL」は、フランスで2018年から試験的に始まり、2021年には本格稼働する予定でしたので、日本でも2020年頃から準備を進めていました。ただ、ちょうどコロナ禍で小学校が外部の人間を受け入れることが難しい時期だったのと、動き出したばかりで実績がなかったこともあり、残念ながら2021年の実施にはつながらなかったんです。

高井 そうだったのですね。2022年に第1回を開催されていますが、これは小学校で実現できたのでしょうか?

荒谷 実は1回目は小学校ではなく、阪急百貨店との取り組みでした。サステナビリティに対して消費者の方の関心が高まっていたこともあり「一緒にやってみませんか」とお声がけをいただいて。トライアルとして阪急うめだ本店で開催しました。

高井 大人の私でも見てみたい!と感じるプログラムなので、とても人気だったのではないでしょうか。

荒谷 確かに大人の方の割合が多かったですね。「親子」を対象にしたところ、70歳のお母様と50歳の娘様が参加してくださったりして。こで「これは子どもに見せてあげたい」「こんなワークショップをやってくれるなら提携してみたい」といったお声をいただきましたし、実施例ができたことで小学校でも2022年12月に初めて開催できました。

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「BEE SCHOOL」を実施するうえで、次世代の意識変化にアプローチできるターニングポイントとして、虫に対する好き・嫌いなどが固定化されておらず、考え方に柔軟性がある小学生をターゲットに設定した。

子どもたちのピュアな目と心に感動

高井 小学校で初めて開催したときの反響はいかがでしたか。

荒谷 1クラス40人ほどの小学校で、4年生の2クラスに向けて実施したのですが、子どもたちのパワーというか好奇心に圧倒されてしまって。スクールが始まるときと終わったときで表情がまったく違うので、子どもたちの目や心はこんなにもピュアなんだ!と感動しましたね。

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ミツバチの巣に触れる子どもたち。授業は小学校の1コマと同じ45分で開催。2コマつなげて90分開催することも。

高井 実際に参加した小学生たちの反応はいかがでしたか?

荒谷 最初は怖がっていた子が「ミツバチって怖いと思っていたけど、全然怖くなくなったよ」と話してくれたり、ミツバチが植物の受粉を助けることで生物多様性を支えているという話のあとで「今までは怖いとか、ブンブンうるさいって思ってたけど、こんなに私たちの食べ物に関わっているなんて知らなかった」「帰ったら、お母さんに知ってる?って聞いてみる」と言ってくれたり、うれしい反応が多いです。

ゲランのコマーシャルにしないことを意識

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高井 それはうれしいですね。確か「BEE SCHOOL」は、全社員の方が参加されているのですよね。各国でもそういった流れがあるのでしょうか。

荒谷  2025年までに全社員が1回は「BEE SCHOOL」に参加するという目標があります。通常業務もあるのでなかなか難しい目標だとは思いますが、ジャパンチームはほぼ1年で達成することができました。私自身、実際に動き始めるまで「社員のみんなは参加してくれるのかな…」と思っていたのですが、実際にお子さんがいる社員も「子どもにこういう教育をさせてあげたかった」と積極的に参加してくれて。

営業やトレーニングチームなど、さまざまな部署から参加してくれるのですが、意外な人が子どもたちに向けて話すことが上手だったり、すごく優しく接していたりして新鮮でしたし、いい意味での驚きがありました。

高井 社内のコミュニケーションにもいい影響が生まれそうですね。

荒谷 そうですね。普段は話す機会が少ない部署の人たちが同じグループになることで、いい接点が生まれて横のつながりが広がるなど、活性化するきっかけにはなっているのかなと感じます。

それから、私たちはこの活動をゲランのコマーシャルにしないということも大切にしています。BEE SCHOOL」は、子どもたちに自分の生活とミツバチの関わりを伝えるための活動なので、最初に自己紹介として触れる程度で、ほとんどゲランの話はしません。コマーシャルにしてしまうと、メッセージが変わってきてしまうので。

女性をエンパワメントする「WOMEN FOR BEES」

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高井 それはとても大切なポイントですね。今日はもうひとつ、「WOMEN FOR BEES」についてもお伺いしたくて。

荒谷 ありがとうございます。「WOMEN FOR BEES」は、ミツバチ保護と女性のエンパワメントを目指す女性養蜂家育成プログラムで、東京と大阪で開催しています。2023年末の時点で18人の女性がプログラムを修了しました。

「BEE SCHOOL」も「WOMEN FOR BEES」も、NPO法人の「梅田ミツバチプロジェクト」「銀座ミツバチプロジェクト」という2つの団体とパートナーシップを組んでいます。

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高井 いろいろなバックグラウンドの方が参加されていましたよね。

荒谷 はい。東京では外国籍の方もお二人いらっしゃいました。日本では養蜂事業だけでなく、環境啓蒙活動などを含めて今後の道をどう提示していくかという課題もありますが、何人かの方はミツバチプロジェクトのメンバーとなって一緒に活動してくれています。

高井 研修期間はどのくらいなのでしょうか。

荒谷 月1回のペースで10カ月間、計10回のセッションを行います。法律も含めて養蜂に必要な基礎知識や技術を実地で学び、最後に理解度を確認するためのペーパーテストを実施します。国家資格などは特にないので、養蜂家として知っておかなければいけない内容が身につくよう、梅田ミツバチプロジェクト・銀座ミツバチプロジェクトの皆さんと一緒に構成を考えています。

未来に向けて、同じ価値観を持つ仲間を増やしたい

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リサイクルガラスの使用や、植物由来のアルコールをはじめ天然由来成分を90%以上配合するなど、ゲランは15年以上前からサステナビリティに取り組んでいる。荒谷さんが手にしているのは、2022年にフレグランス「アクア アレゴリア」シリーズがリニューアルした際に誕生したリフィル。

高井 基本的な知識やスキルを一通り身につけて修了された方は、ミツバチにまつわるワークショップやレクチャーといった活動ができるのですね。今後の展望についても伺えますか。

荒谷 「BEE SCHOOL」は多くのお子さんに届けたいので、年を追うごとにカバーする学校や都市の数も増やしていきたいと思っています。できるだけ全都市を巡れるように考えてはいるのですが、なかなか地方都市に行けない理由のひとつにミツバチへの負担があります。

例えば、大阪から和歌山まで車で2時間かけてミツバチの巣を運ぶとなるとミツバチへの負担が大きいので…。ですから、ローカルパートナーの存在がとても大事なんです。2023年は東京をメインに4都市での開催でしたが、2024年は札幌と名古屋でも新たなローカルパートナーを迎えて実施する予定です。少しずつネットワークをつくって場を増やしていけたら。

高井 そもそもミツバチに負担を強いては意味がないですものね。地方によっては後継者不足もあるでしょうし、ローカルパートナーを探すのは大変でしょうね。

荒谷 実はフランス以外で養蜂家とのパートナーシップを2カ所以上持っているのは日本のみで、女性養蜂家育成プログラムを2都市で開催しているのは、日本とイタリアくらい(2023年時点)。それほどローカルパートナーを見つけるって本当に難しいことなんです。ほかにも、例えばスズメバチが多い地域はミツバチが攻撃されていなくなってしまったり、東京のような都市養蜂はダニなどの病原菌が発生しやすかったり、その土地ごとに状況に応じた難しさがあると伺っています。

「WOMEN FOR BEES」でいうと、養蜂業は男性社会なうえにご年配の方が多いためか、ノウハウがシェアされないといった課題もあるそうです。パートナーである梅田ミツバチプロジェクトや銀座ミツバチプロジェクトとは、「ノウハウをシェアして、ネットワークを増やすことで一緒にミツバチを守っていこう」という価値観で一致しているので、同じ思いを持つ仲間を増やしていけるといいなと考えています。

取材を終えて…
「ゲラン」は憧れのラグジュアリーブランド、と感じている方も多いのではないでしょうか。もちろんその通りなのですが、そのイメージと同じくらいの規模で、サステナビリティへの取り組みに力を入れているブランドでもあります。
自然の恵みから製品を生み出すことへの感謝と還元の努力、次世代の子どもたちへの教育や女性へのサポート。ジャパン社の皆さんが一丸となって活動を広げていることにも感銘を受けました。製品を通してそういった背景に想いを馳せることこそ、心と肌を豊かにする一生もののビューティウェルネスであると思います。(高井)

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撮影/露木聡子 画像デザイン/坪本瑞希 写真提供/ゲラン 取材・文・構成/国分美由紀 企画/高井佳子(yoi)