「yoi」ではSDGsの17の目標のうち「3. すべての人に健康と福祉を」、「5. ジェンダー平等を実現しよう」、「10. 人や国の不平等をなくそう」の実現を目指しています。そこで、yoi編集長の高井が、同じくその実現を目指す企業に突撃取材! 第11回となる今回は、ポーラが手がける美の食材にこだわった冷凍宅食惣菜「BIDISH(ビディッシュ)」について、BIDISHプロジェクトリーダーの大塚真輝さんにお話を伺いました。
◆「BIDISH」とは?
2023年7月に誕生したポーラの新プロジェクト。「ご自愛」をコンセプトに、働く女性たちに寄り添う、美と健康を考えたメニューを開発。現在は惣菜13品目、スープ5品目がラインアップ(2024年7月5日時点)。いずれも価格は1食食べ切りサイズで700円。公式サイトから購入でき、定期購入プランもあり。
(左から)高井編集長とBIDISHプロジェクトリーダーの大塚真輝さん。
たった3人でスタートした新市場企画プロジェクト
高井 「BIDISH」を実際に購入して食べてみたら、そのおいしさと美しさに感動しました。この冷凍宅食惣菜を新規事業として立ち上げた経緯から伺えますか?
大塚 当社は2029年に100周年を迎えますが、今の事業の延長線上だけで継続的な成長ができるのかという危機感を持っていました。「私たちは、美と健康を願う人々および社会の永続的幸福を実現します。」という企業理念を体現する選択肢は、化粧品以外にもあるのではないか──そんな思いから、2020年7月に新市場企画プロジェクトが発足しました。私は発足時からのメンバーとして在籍しています。
高井 新市場企画プロジェクトの発足当時、メンバーは何人いらっしゃったんですか?
大塚 最初は3人です。私がいちばん年下で、九州エリアで営業を担当していました。それから、店舗スタッフへの教育を担当していた30代半ばの方が一人。プロジェクトのリーダーは40代で、営業や物流などの経験もあり、異動前はマーケティング領域の部門長を務めていました。新規事業は基本的に失敗するものなので、失敗をしても立ち上がれるメンタルのタフさと、他の人や会社全体を巻き込むことができる人間を中心に選ばれたそうです。
高井 失敗をしても立ち上がれること、そしてまわりを巻き込めること。確かに、このふたつは新しいプロジェクトを進める立場として、とても重要な要素ですね。
大塚 よく「千三つ」と言われますが、新規事業は1000のアイデアから3つ事業化できればいいほうだと。ただ、我々3人で1000のアイデアを出すのは難しいので、社内の新規事業コンテスト型というポトムアップ制度を立ち上げることにしました。今年も第5期目の公募がもうすぐ始まります。
最初は制度をつくるノウハウも何もないので、まず自分たちでやってみようと。3人がそれぞれに自分のアイデアを磨く中で、私が着目したのが食品事業。そこから色々と形態を変えながら、最終的に今の冷凍食品に至りました。
300人へのヒアリングから見えた「ご自愛」というコンセプト
高井 初回のみ20%オフのお試しセット、LINEのお知らせ、自販機の設置に至るまで、スタート時からとてもサービスが完成されていると感じました。それから、私の中でポイントが高かったのは、容器から器にうつす際も容器に具材が残らず、すごくキレイにストレスなく出せること。スープも野菜がちゃんとゴロゴロしていて食感がいい。中学生の子どもにも「お味噌汁よりこれがいい」「もっと食べたい」と大好評でした。
大塚 ありがとうございます。事業化に向けて300人ほどの方を対象にヒアリングを行ってみると、多くの人が忙しい日々の中で帰宅後に自炊する時間も気力もないこと、本当はがっつり食べたいけれど罪悪感を感じてサラダやスープといった妥協策を選んでいることなどがわかりました。栄養バランスがよくて、おいしくて、体にいいものを食べたい。そんな彼女たちの願いを、我々なら叶えることができるのではないかという思いで、「ご自愛」をコンセプトに開発を進めてきました。
社内のターゲットに近い人たちを呼んで何度も試食会をやりながら、1年ほどかけて最初の7品を作り上げました。その過程で食事の色みや、先ほどおっしゃっていただいた具材の食べごたえの重要性もわかってきて。その満足感を追求した形が、現在のラインアップです。
高井 なるほど。しかもサプリメント的な栄養の観点ではなく、すごくいい意味でちゃんと“食事”のアプローチになさっていますよね。
大塚 実は我々も、栄養を補うサプリメントや美容ドリンクと組み合わせた完全栄養食品セットをつくってみるのもいいのでは…と考えたこともありました。ただ、検証を重ねる中で、食事というのは、その時間や味わいを楽しむこと自体に価値があるということがわかってきたので、ポーラが提供する“食事”をつくる方向に振り切りました。
一人一人のストーリーから生まれたコラボメニュー
高井 食事を通じた豊かな時間は、セルフケアにもつながりますものね。フジテレビや神戸女学院大学とのコラボレーションメニューもとても魅力的です。
大塚 ありがとうございます。ポーラは、「Science」「Art」「Love」という3つの軸を独自価値として持っています。BIDISHにおける「Science」は栄養素。「Art」は、彩りや味といった体験の時間。「Love」が「ご自愛」を提供すること。フジテレビとのコラボ「わたしのための、BIDISH。」では、Loveを際立たせました。やってみて感じたのは、「ご自愛」という言葉をご本人たちがどうとらえるかが重要であるなと。
高井 おっしゃる通りだと思います。「ご自愛」を、ちょっと気分が上がるような食事だと考える方もいれば、胃に優しくて疲れない食事をイメージする方もいらっしゃいますよね。
大塚 本当にそうなんです。例えば、「生姜でほっこりごろっと7種具材のごちそう豚汁」は、1日に必要な食物繊維の80%ほどがとれます。開発された方は当時、情報番組の制作に携わっていて、帰宅が遅くなることが多いという背景がありました。「夜遅くに食べすぎると、翌日のむくみが気になる」ということで、腸活動を意識した胃に優しい豚汁で、お肉も豚バラだけではなく脂の少ない豚モモも使っています。今回のコラボ商品は、ひとつひとつにそうしたストーリーがあります。
高井 神戸女学院大学とのコラボレーションについてはいかがですか?
大塚 BIDISHの「Science」にあたる栄養素の監修を神戸女学院大学の高岡素子教授にお願いしている縁で生まれた、どちらかというとSDGsに近いコラボレーションです。というのも、実は学生さんたちは、座学で学んだものが就職先につながりづらいという現状があります。キャリアを描くきっかけに貢献できればと、高岡教授のゼミで私が企業の視点から講義をして、そこから一緒に製品企画開発を行いました。
「自分のために。が、誰かのためになる世界」を成し遂げたい
高井 それは素晴らしいですね。ポーラが100周年を迎えるまであと5年。今後の展望についても伺えますか。
大塚 ポーラの新規事業という広い文脈でいくと、BIDISH以外にも実は新規事業の種がたくさん動いているので、美と健康を体現する可能性を拡張していきたいという方向がまずひとつ。BIDISHとしては、もちろん事業として大きくしていくことはもちろんですが、先ほどもお伝えしたように「食品事業」なので、冷凍食品とは違う、次の課題を持った人たちにフィットする食品を提供していくことが次の構想ですね。
BIDISHの根本には、「自分のために。が、誰かのためになる世界」を成し遂げたいという思いがあります。BIDISHで解決したい課題を持つ方たちは、誰よりもまわりに気遣いができて、人や組織、ひいては社会のために頑張れる人たちでもあります。だからこそ、心も体もすり減っていってしまうんですよね。それを僕たちは食事で補いたい。BIDISHで「ご自愛」を提供できた先に何が起きるかというと、自分が満たされることでもっと人に優しくなれる。その好循環な世界を、食事というアプローチで成し遂げたいと考えています。
取材を終えて…
BIDISHは既婚か非婚か、子どもがいるかいないかにかかわらず、すべての働く女性が「おいしい」から健康や幸せを得られるサービス。サプリメントの摂取も大切な習慣ですが、「食べる」行為そのものが幸せである、ということも改めて感じました。私のイチ押しはスープ類。栄養豊富でカロリーも80〜100kcal程度(100gあたり)なんです。夜遅い食事でも600Wの電子レンジで3〜4分温めればでき上がり。見た目がアートのように麗しいので(長年ポーラ美術館を愛している身としてはグッときます)、お友達が遊びに来たときやホームパーティにもおすすめです!(高井)
撮影/露木聡子 画像デザイン/坪本瑞希 取材・文・構成/国分美由紀 企画/高井佳子(yoi)