「yoi」ではSDGsの17の目標のうち「3. すべての人に健康と福祉を」、「5. ジェンダー平等を実現しよう」、「10. 人や国の不平等をなくそう」の実現を目指しています。そこで、yoi編集長の高井が、同じくその実現を目指す企業に突撃取材! 第20回となる今回は、アジアで初めて「グリーン・サロン認証」を取得したサステナブルコスメブランド「Kruhi」について、代表の井浦 新さんとあいさんにお話を伺いました。

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「Kruhi(クルヒ)」とは?
“手のひらにのる自然”をコンセプトに掲げるサステナブルコスメブランド。排水の循環や肌への負担を考え、石油由来成分などの化学物質は使用せず、人にも環境にも配慮した自然由来成分にこだわり、自然に還るプロダクトを展開。原料には廃棄される果実等をアップサイクルするなど、人・社会・地域・環境に循環するものづくりを設計。2022年と2023年に「サステナブルコスメアワード」にて2年連続で最高賞のGOLD賞を受賞。デンマークの環境認証「Grøn Salon(グリーン・サロン)認証」をアジア・日本で初取得。ブランド名は、来る日(明日・未来)が必ずよくなること、悪いことが続いた後に幸運が開けるという意の『一陽来復』を願って命名。

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(左から)井浦あいさん、井浦 新さん、高井編集長。

井浦 新

ブランドファウンダー

井浦 新

1974年生まれ。東京都出身。俳優、ブランドディレクター、Kruhiファウンダー。 1998年に『ワンダフルライフ』で映画初主演。以降、映画を中心にドラマ、ナレーションなど幅広く活動。アパレルブランド「ELNEST CREATIVE ACTIVITY」のディレクターも務める。近年は各地にあるミニシアターを応援するプロジェクト「MINI THEATER PARK」の活動や、映画館のない地域へ映画を届ける『井浦新 自選映画上映会』などを主催。2022年、使う人の健康と流す水の循環に配慮した自然由来成分100%のサステナブルコスメブランド「Kruhi」をローンチ。

井浦あい

ファウンダー

井浦あい

1984年生まれ。趣味は料理、旅、宝塚歌劇鑑賞。大学卒業後、一部上場企業でIR、秘書を担当し、井浦との結婚を機に退職。2013年、専業主婦として家庭に従事している間、使うことでいい実感&健康が得られる製品の必要性を感じ構想を進める。2021年に夫の井浦新とともにValley and Windを創業、「Kruhi」ディレクターを務める。

高井佳子

yoi編集長

高井佳子

入社以来、『ノンノ』『バイラ』『マリソル』『エクラ』と、幅広い年代の女性誌媒体に編集者として携わる。2021年@BAILA編集長に就任、2023年6月より現職。認定フェムテックシニアエキスパート(日本フェムテック協会認定資格1級)。

「Kruhi」のプロダクトは僕ら家族の生活から生まれてきた

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高井 井浦 新さんはファッションモデルや俳優として活躍される一方で、ご自身のファッションブランドを含め、長くものづくりの旅をなさっている印象があります。2022年に立ち上げられたサスティナブルコスメブランド「Kruhi」は、どんな思いから生まれたのでしょうか。

井浦 新(以下、新さん) 僕個人はファッションモデルからキャリアをはじめて、俳優の仕事をし、ずっとやりたかった洋服の分野に携わり…と、これまで表現する仕事の中で挑戦を続けてきましたが、「Kruhi」は僕個人というよりも僕ら家族の生活から生まれてきたものなので、はじまりが少し違うんですよね。

僕と妻のあいは、子どもが生まれてから日常で食べるものや使うものが、どこで、どんなふうにつくられているのか、そして気候変動を目の当たりにして、自分たちの暮らしに与える影響を意識するようになりました。

「子どもたちや未来にどんなバトンを手渡せるだろうか」と考えながら日々使うものを選んでいても、ナチュラルプロダクト“風”な製品を手に取ってしまい、悔しい思いをしたこともたくさんあります。


自分たちの暮らしをよりよい方向にシフトしたくて動いているはずなのに、いろいろなものを試してゴミが増えていくことや、化学物質が排水として流れていくことに罪悪感があるから、体はきれいになっても心は全然晴れない。そんなとき、あいが「私たちでつくろう」と。そのひと言がすべての始まりでした。

井浦あい(以下、あいさん) 私たち家族はそれぞれに肌や髪の悩みを感じていて、それを払拭できる製品を数年かけて探しましたが、なかなか見つけられなくて。そんなとき、石鹸シャンプーに出合ったんです。石鹸シャンプーは洗髪中に髪がきしむし、香りも楽しくないけれど、1回の使用で髪の悩みが解消されたことにすごく感動して。

こんなに仕上がりは素晴らしいのに、どうして使い心地のいいものがないんだろう?と調べたみたら、製造にとても手間がかかることがわかって。さらに使用感を高めるための工夫をするには手間もコストもかかってしまうんです。

いろいろな工場にご相談しましたが、私たちが求める理想の石鹸シャンプーは「実現が難しい」と断られてしまって。1軒だけ、「面白いですね」と言ってくださったのが、鹿児島・南大隅町のボタニカルファクトリーでした。 

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Kruhiのプロダクトは5日間で98.9%が生分解される。リサイクルにかかるエネルギー・Co2排出量の低いアルミボトルを採用し、原料は規格外となったパッションフルーツとタンカンなど未利用資源を活用。また「1% for the Planet」を通じて、年間収益の1%を環境保護活動団体に寄付している。

(写真左から)自然由来成分100%でケミカルフリーの「ALWAYS NEW BALM」(35g・¥4950)。化学物質を使用せず、 自然由来成分だけでつくられた「シャンプー(ポンプ付き)」(400ml・¥4800)、「トリートメント(ポンプ付き)」(400ml・¥5470)。右端の「マウントナリン ボタニカルシャンプー」(250ml・¥4070)、「マウントナリン ボタニカルトリートメント」(250ml・¥4730)は、スイス生まれのナチュラルコスメ/ウェルネスブランド「nahrin」とコラボレーションした「Kruhi climbing nahrin」シリーズ。

「グリーン・サロン認証」は、自分たちのこだわりへの答え合わせ

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高井 ご自身の悩みや体感、そしてパートナーシップを結べる工場との出会いを経て誕生したのが「ボタニカル石けんシャンプー」なのですね。「サステナブルコスメアワード」では2年連続で最高賞のGOLDを受賞し、2023年には欧州で最も基準が厳しいといわれるデンマークの環境認証「グリーン・サロン認証」をアジアで初めて取得されました。

新さん いろいろ調べたり勉強したりする中で、世の中に広がる“認証ビジネス”の実情もわかったので、最初は僕らも正直、「認証」というものに対する疑問がありました。

そんなとき、あいが企業の規模や理念に関係なく、製品の成分だけをとても厳しく判断するグリーン・サロン認証を見つけたんです。そこで「自分たちのつくったものがどう判断されるのか、一度見てもらおう」と。

あいさん グリーン・サロン認証は、ヘアサロン業界をサステナブルにシフトすることを目指す「日本サステナブルサロン協会」の猿田哲也さんから教えていただいて、デンマークでの勉強会にも参加させてもらいました。

企業側が「うちの商品はこんなにいいんですよ」とアピールするのは当たり前ですよね。だからこそ第三者機関に公平に評価してもらうことも大切なのかなと思って、サステナブルコスメアワードとグリーン・サロン認証に挑戦しました。私たちのこだわりが独りよがりではないことの答え合わせをしてみたというか。

高井 使う側としても「グリーン・サロン認証ってなんだろう?」と調べて気づくきっかけにもなりますね。それこそKruhiのアイテムを全国の美容室で扱ってもらうこともひとつの方法かと思いますが、現在、広く展開なさっているというわけではないですよね。

あいさん そうなんです。ひとつひとつ、手間をかけてつくっているぶん大量生産ができないので、大きく広げることは難しいかなと思っています。

でも、一人一人が自宅で使うシャンプーを変えていくことが、自分の健康はもちろん地球の未来にとっても大きな貢献の第一歩になると信じているので、そこに届けることを大切にしています。 

目指したのは、どんな人でも使うことで環境への取り組みに参加できる設計

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高井 パートナー工場であるボタニカルファクトリーとの関係性も含めて、チームづくりで大切になさっていることはありますか?

新さん ボタニカルファクトリーはもちろんですが、原材料の生産者の方たちとも信頼関係をちゃんと築いたうえで、僕らが皆さんの姿や思いを伝えていかなければいけないと思っていて。ただ工場にお願いしてつくってもらうのではなく、僕ら自身も南大隅町に足を運び、手を動かし、根づいていくことを大事にしています。

高井 公式サイトでもそうした思いをきちんと説明されていますし、写真もとても素敵でよね。環境にまつわるトピックは「難しい」と感じる方も多いので、Kruhiのように素敵な入り口があると、日常に取り入れやすいなと感じます。

新さん 環境問題については、「よくわかんない」「自分には関係ないんじゃないか」と感じている人のほうが多いと思うんですね。だからこそ、どんな人でもKruhiを使うことによって、意識しなくても環境への取り組みに参加しているという設計を目指しました。

Kruhiのアイテムは100%自然由来で、排水として流れても5日で98.9%が分解されて自然に還りますし、アルミボトルは、分別ゴミとして出せば再びアルミ製品として活用される仕組みになっています。POP UPでも「Kruhiを使うことで環境を汚していることへの罪悪感がなくなって、ハッピーに過ごせるようになりました」という声をいただくことが多くて。

そういうお話を聞かせてもらうたびに、自分たちが取り組んできたことは間違っていなかったんだとうれしくなります。気づいたり、行動したりするのに早いも遅いもありませんから。

あいさん 私たちにとっては、Kruhiを使ってくださる方たちもチームの一員のような感覚なんです。特に「ALWAYS NEW BALM」は、実際に自分たちの肌を使って湿疹やにきび、傷などにもテストをしてきましたが、唯一テストできなかったのがアトピー性皮膚炎など重度の肌トラブルでした。

ところがリリースしてみると、「使い続けるうちに肌トラブルとさよならできました」というお声をいただけるようになって。本当につくってよかったと思いますし、そうした声に私たち自身も勇気をいただいています。 

初めてのスキンケアラインが誕生。「クレンジング」へのチャレンジ

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高井 新さんがおっしゃった「気づいたり、行動したりするのに早いも遅いもない」という姿勢も含めて、Kruhiは製品を使うこと自体が行動につながったり、気づきを得るきっかけになったり、自然な流れでカルチャーを育むブランドであるという点も、とても興味深いです。

新さん ありがとうございます。そう言っていただけるとうれしいです。

高井 最後に、新たなアイテムや香りの展開を含めて、今後の展望があればお聞かせいただけますか。

あいさん 4月25日に初めてのスキンケアラインとして素肌の土台を整えるジェルクレンジング「THE FACE CLEANSE」と、うるおいで満たす美容液「PURITY HARVEST LAYER SERUM」をリリースします。和歌山産のコメヌカとの出合いから生まれました。

新さん クレンジングって洗顔とは別物と思われがちですが、僕らがチャレンジしたのはメイクはもちろん毎日の洗顔としても使えるもの。泡立たなくても毛穴の汚れをしっかり落とせて、かつ栄養を与えられる設計になっています。香りも、今までの「キャンディフォレスト」とは違う、新たな香りになっています。

高井 それはとても楽しみです! 

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4月25日にリリースされるスキンケアラインは、ジェルクレンジング「THE FACE CLEANSE」(写真右・200ml・¥5445)と、美容液「PURITY HARVEST LAYER SERUM」(写真左・30ml・¥13200)の2アイテム。

取材を終えて…
井浦 新さんは、私が入社したときに『メンズノンノ』の専属モデルでいらっしゃいました。モデルや俳優としてのご活躍はもちろん、さまざまなカルチャーを発信されており、同じ時代を生きてきた身(同じ1974年生まれです)としては…まぶしい限り!

取材中、熱を込めて「Kruhi」を語る新さんのお姿から感じたのは、「サステナブルコスメブランドを起業した」ではなくて「今、ものづくりをしている」。あいさんも同じく、いちばん大切なものを形にしようとしていらっしゃる。お二人が会話しているその雰囲気から、とてもいいチームで仕事してらっしゃるんだろうなと感じました。

Kruhi」には、熱量の高さと居心地のよさが同居しています。そして、新しいカルチャーのワクワク感も光っていて、人を巻き込む魅力があります。

ちなみにアイコニックな「ALWAYS NEW BALM」は日々愛用しておりまして、新製品はちょうど発表会への出席を控えているところ。楽しみです!(高井)

Kruhi 井浦新 グリーン・サロン認証

ヘア&メイク/山口恵理子(井浦新さん) 撮影/露木聡子 画像デザイン/齋藤春香 構成・取材・文/国分美由紀 企画/高井佳子(yoi)