リトル・シムズ アルバムジャケット写真

『Sometimes I Might Be Introvert』Little Simz¥2420/AGE 101/Beat Records
作詞・作曲/Simbiatu Ajikawo、和訳/池城美菜子

自分と向き合う時間が築く、確かな強さ

社会や自分自身、人間関係などに対して、怒り、不安、フラストレーションを感じたとき、あなたはどんなアクションを取るだろうか。湧き上がる感情が静まるのを待つ? その気持ちをSNSに吐露する? ナイジェリアにルーツを持つ、27歳のラッパー・Little Simz(リトル・シムズ)は、孤独を選び、自身の内面に深く深く潜り込むという。

リトル・シムズこと、シンビアツ・アジカウォは、生まれも育ちもロンドンという生粋のロンドンっ子。ドレイクがエグゼクティブ・プロデューサーを務める、ドラッグディーラーを描いたNetflixドラマ『トップボーイ』や映画『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(12月3日に全国公開)に出演したり、「ボッテガ・ヴェネタ」のコレクションルックに登場したりするなど、俳優、カルチャーアイコンとしても注目を集めている。

そんな才気あふれる彼女が、今年9月に発売した『Sometimes I Might Be Introvert(私は時々、内向的になる)』は、2021年度のベストアルバム候補筆頭との呼び声が高い傑作。ちなみに、タイトルの頭文字を取ると、彼女の愛称である“Simbi(シンビ)”が浮かび上がる。本作は、黒人女性として現代を生きる彼女のアイデンティティ、人種差別、家族との軋轢といったシリアスなテーマを、文学的なリリックとアフロビート、ヒップホップ、ジャズなど、多彩なジャンルのサウンドで表現している。また、曲と曲の間には、Netflixドラマ『ザ・クラウン』でダイアナ妃を演じた、女優エマ・コリンの気高きナレーションが差し込まれており、これが楽曲への没入度を高める。全19曲を通して聴くと、まるでシムズの自伝映画を観ているかのような感覚に陥るはず。そんな作品の幕開けを飾る曲が、威厳を感じるドラムロールと合唱団のコーラスで始まる、『Introvert』(日本語で、“内向性”という意味)だ。

Little Simz - Introvert (Official Video)
ロンドン自然史博物館で撮影されたMVは、本年度のUK Video Music Awardsで最多となる5部門にノミネート。映像の中には、公民権運動の映像やリトル・シムズのホームビデオなどが使われている。

『Introvert』は、内向性の真価に気づかせてくれる。人種差別やアイデンティティ、腐敗した政治などについて巧みな言葉づかいで語るこの曲の冒頭で、シムズは〈私が内向的になる時には 内戦が起きている〉と力強くラップする。つまり、内戦=社会や自分に対する心の混乱が起きたとき、彼女はまず、その混乱に一人静かに向き合うという。そうして、自分の内側に深く潜り、理解を深めた彼女は、〈自分の中に秘めた感情 さらけ出す時がきた〉と宣言し、混沌とする世界に揺るぎない強さで立ち向かっていく。この曲は、女優エマ・コリンが読み上げる、「旅路に乗り出しさえすれば、素敵な女性になれる」という内容のセリフで締めくくられる。自分の内面に向き合うことは、勇気が必要で、骨の折れる作業かもしれない。でも、自分が何者であるかを知り、譲れない信念に気づいた先には、理想とする自分の姿や未来が必ず待っているという希望をリトル・シムズは感じさせてくれる。

Little Simz: Tiny Desk (Home) Concert

アメリカの公共ラジオ放送 NPR(National Public Radio)による「Tiny Desk Concert」シリーズに出演。内面の世界のような空間で、アルバム収録曲を披露。

Little Simz『Sometimes I Might Be Introvert』の世界に没入して!

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