25名の“フェムテック賢者”たちによって、2023年3月以降に発売されたフェムテック&フェムケア商品が選出された「第2回フェムテック&フェムケアアワード」。その選出メンバーでもある『ラブピースクラブ』広報の山本あやのさんと、『Mood is me.』を立ち上げた『アダストリア』の渥美昌子さんにお越しいただき、【セルフプレジャーの今】についての座談会を実施! ほかではなかなか聞くことのできない、専門的でディープなお話がたくさん飛び出しました。

フェムテックアワード 2024

参加メンバーはラブピースクラブ広報山本さんと、アダストリア渥美さん

フェムテックアワード 座談会 セルフプレジャー ラブピースクラブ 山本あやの Moodisme. 渥美昌子 ムードイズミー

左:渥美さん 右:山本さん

山本あやのさん

ラブピースクラブ 広報担当

山本あやのさん

学生時代にジェンダーについて学ぶ中で、デリケートゾーンアイテムやセックストイを輸入販売している『ラブピースクラブ』を知る。「セクシュアルヘルスの観点から女性支援ができるかも」という思いからアルバイトに応募し、そのまま就職に至る。営業職を経て広報担当となり、公式オンラインショップ以外にも着々と販路を拡大中。海外の買い付けも自ら行うなど、さまざまなアプローチでフェムケア業界を盛り上げている。

渥美昌子さん

アダストリア

渥美昌子さん

2004年にポイント(現アダストリア)入社。『Heather』のVMDとエリアマネージャーを兼任、『repipi armario』でブランドディレクターや事業部長に従事。2022年より新規事業の立ち上げ準備にかかわり、2023年にウェルネスブランド『Mood is me.』を立ち上げる。

セルフプレジャー業界では“吸引”人気が沸騰中!

山本:ここ数年のセルフプレジャーグッズ市場を見ていると、とにかく“吸引トイ”(クリトリスや乳首などを吸う感触が楽しめる)の人気がすごいですよね。特に、世界初の吸引トイを生み出したブランド『ウーマナイザー』が日本で認知されるようになってから。ショップの売上ランキングでもトップ3に必ず『ウーマナイザー』が入ってくる状況です。

渥美:『Mood is me.』でも『ウーマナイザー』は取り扱ってるんだけど、やっぱり人気がありますね。そもそも吸引タイプは、トイを使ったことがない人でも手に取りやすいですし。

山本:そうですね。吸引トイはクリトリスに直接当たらないので、痺れたり痛くなったりすることが本当にない。だけど『ウーマナイザー』が98%オーガズム保証をするくらい、オーガズムに達するパーセンテージは高いんですよね。しかも時間もかからないので、痛みはないのに時間をかけず気持ちよくなれる、というところが人気なんだと思います

セルフプレジャー プレジャートイ 吸引トイ ウーマナイザー ファンファクトリー

今回山本さんが用意してくれた吸引トイ。
(左上)エニグマウェーブ ¥41800/LELO(右上)メア ¥41800/ファンファクトリー(左下)ウーマナイザー ネクスト ¥32610・(右下)ウーマナイザーリバティ2 ¥15540/ウーマナイザー

渥美:『ウーマナイザー』の中にもグレードがあるじゃないですか。初心者向けの「リバティ」(画像右下)と「ウーマナイザーネクスト」(画像左下)だと、やっぱりネクストのほうが生き物っぽいというか、機械っぽさが少ないですよね。どんどん進化してる。

山本:お値段もやはり上がりますが、それだけの価値があると思います。あと『ファンファクトリー』の吸引トイ「メア」(画像右上)もおすすめですよ。

渥美:デザインがすごく可愛い! この生っぽい質感と、揉まれるような独特の吸引もすごいですね。

山本:『ファンファクトリー』はピストンバイブ(バイブの中に埋め込まれたモーターが上下運動をすることで、リアルなピストンの動きを再現)を生み出したドイツのブランドなのですが、こちらが満を持して発売した、ドイツの技術力を結集した吸引トイです。お値段はお高めですが、それくらい技術が詰め込まれているし、吸引の技術は特許も取っているので、『ファンファクトリー』でしか味わえないんです。

渥美:それは値段だけの価値がありそう! あと全体に言えることだけど、音を静かに作っているものが多い気がします。昔のトイは“ウィーン”と音が鳴るイメージが強いけれど、最新のものはとにかく静か。音が聞こえたら困る人もいるだろうし、自分の気持ち的にも機械音がないほうが盛り上がりますよね。

山本:音が大きいと冷めちゃいますよね。ノイズレスっていうのは確かに最近のトピックかもしれません。

セルフプレジャーグッズのサステナビリティとは

渥美:個人的にすごくいいなと思っているのが『Love Not War』。バッテリー部分とヘッド部分が別売りになっていて、バッテリーをひとつ持っていればヘッドを付け替えて色々な楽しみ方ができるんですよね。パッケージもおしゃれ。

フェムテックアワード 座談会 セルフプレジャー バイブ LoveNotWar

(左)バッテリー POWER OF LOVE ¥8800・(右)カーマ ヘッド ¥8800/Love Not War

山本:しかもバッテリー部分はリサイクルアルミを使用しているんですよね。セルフプレジャーグッズは基本的にリサイクルできないので、作るところからリサイクル素材を取り入れよう、という考えだそうです。

渥美:世界で戦争が起きている今、「Love Not War=戦争じゃなくて愛を」というブランド名も素敵です。

山本:もともとこういったバイブレーターのことを、形が似ていることから「バレットトイ(bullet=弾丸)と呼ぶこともあるんです。そことも意味がかかっているそうですよ。

あと専門的なことを言うと、ネオシリコン素材を使用しているのも革命的なんです。シリコンローションってツルツルしていて潤滑が長く続くので、トイと一緒に使うとすごくいいんですが、シリコン素材を溶かしてしまう性質があるんです。でもネオシリコンはシリコンローションでも溶けない独自の素材なので、どんなローションも一緒に使えます。

渥美:さすがの知識量! ちなみに、このガラス製のディルド(膣への挿入を目的とした非電動のセルフプレジャー&セクシャルグッズのこと)もすごく可愛いですよね。前に紹介してもらったけど、温めて使うっていうのがすごく新鮮だなと思ってて。

フェムテックアワード 座談会 セルフプレジャー ディルド ガラス

セシー ¥7150/biird.

山本:これ本当に可愛いですよね。耐久性の高いガラスを使用しているので電子レンジでも温められるし、湯船に浸かりながら一緒に温めるのもおすすめです。ガラス製だから温かさもけっこう持続します。

渥美:ガラス製だとシリコンのものとどこがいちばん変わりますか?

山本:どんな素材のローションでも使えることと、ガラス特有の硬さやツルッとした質感がいちばんの違いですかね。あと温められるという点では、年齢を重ねて膣が萎縮してしまった方が、温めながらローションと一緒に使うことで腟を緩ませるという使い方もあるそうです。プレジャーというよりは腟ケアに近いですね。

渥美:たしかに挿入するタイプは腟トレにもいいですよね。腟マッサージもできるし、汎用性が高い気がします。

ユーザーは高級志向⁉︎ デザイン性の高さにも注目

フェムテックアワード 座談会 セルフプレジャー biird. バイブ 

ジー ¥17160/biird.

山本:最近はパッケージや付属品がおしゃれなものも増えています。先ほどのガラス製ディルドと同じオランダの『biird.』というブランドなのですが、ポーチやアイロンで付けられるワッペンも付属しているんです! 

渥美:色使いもおしゃれで元気をもらえますね! 一見セルフプレジャーグッズには見えないし、部屋に置いてあってもいやらしくないものが本当に増えたと思います。『biird.』はトイ自体も細めで誰でも使いやすそう。

山本:セルフプレジャー初心者の方にもおすすめしたいですね。カーブがついているから挿入しやすいし、Gスポットにも当てやすくなっています。お値段もこのデザインや機能に対して17,000円くらいとお手頃なので、ギフトにもいいかと。

渥美:17,000円はあんまりお手頃じゃない気もしますが(笑)、『ラブピースクラブ』では高級トイもたくさん扱われているから、その中では手に取りやすいかもしれないですね。

山本:すみません、でもそれだけの価値があるんです…!

渥美:私も最初、セルフプレジャーグッズは手に取りやすい価格のほうが売れるんじゃないかと思っていたんです。でも『Mood is me.』の動きを見ていると、意外と30,000円を超えるようなものも売れているんですよね。「せっかく買うなら性能が高いものを」とか、「体に使うものだからある程度値段が高い信頼できるものを選びたい」といった意見もありました。

山本:そのとおりだと思います。保証がついているものも多いので、家電だと思って選んでほしいですね。

フェムテックアワード 座談会 iroha 水原希子 RURI バイブ

『iroha』と水原希子さんが共同開発した「iroha mai RURI」 ¥16000

山本:セルフプレジャーグッズの進化でいうと、昔あった塩化ビニール製のバイブってわかりますか? クマの顔がついていたり、こけしみたいになっているもの。ああいったものはもほとんど見なくなったし、代が変わったなと思います。

渥美:それこそ今は『iroha』が水原希子さんと共同開発したグッズを販売していたり、使ったことがない人でも手に取りやすく、間口が広くなっている。興味はあるけどまだ持っていない人にも、ぜひこの機会に試してみてほしいですね。

取材・文/堀越美香子 画像デザイン/坪本瑞希 企画・構成/木村美紀・種谷美波(yoi)