私たちの心と体にまつわる悩みや課題を解決してくれる「フェムテック」の基礎知識について、医療ライターで『365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック』の著者でもある及川夕子さんに教えていただきました。今回は、「避妊」とフェムテックについて。
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Q5.「避妊」に役立つフェムテックにはどんなものがあるの?
医療ライター
ライター/エディター。メノポーズカウンセラー。医療、健康、女性の社会課題をテーマに、雑誌、WEB、書籍などで幅広く活躍。著書に『365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『はたらく細胞LADY 10代女性が知っておきたい「性」の新知識』(講談社)など。
A5.現在の日本では、女性が主体的に選べる避妊法は限られています
妊娠を予定しないカップルにとって、避妊はとても大切なこと。妊娠するのは女性であり、日常生活や進学や仕事に影響が出るのも女性なのですから、女性自身が安心して確実な避妊ができる環境が整っていることは、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)の観点からもとても重要なことです。
では、避妊に役立つフェムテックにはどのようなものがあるでしょうか。残念ながら、現時点では選択肢が多くあるという状況にはなっていません。日本では、長い間、男性用コンドームでの避妊法が主体となっています。つまり私たちの避妊は、妊娠することのない男性のコンドーム装着に圧倒的に委ねられているということです。
女性が主体になって選ぶ避妊法には、低用量ピル(OC)、避妊リング(IUD)、子宮内避妊システム(IUS)などがありますが、低用量ピルの普及率はわずか数パーセントという状況。これには、性教育が十分でない、情報が行き届いていない、薬価の値段が高いといったさまざまな理由が考えられます。
世界を見ると、OCや避妊リング以外にも、避妊注射や皮下に埋め込む避妊インプラント、避妊シールなど、女性が自らできる避妊法がたくさんあり、避妊に関する選択肢は、フェムテックも含めて海外の方が充実しているといえます。
避妊に役立つフェムテックの一例
●オンライン診療+避妊薬の郵送サービス
低用量ピルや緊急避妊薬をオンラインで診療・処方し、処方箋や避妊薬を自宅に発送してくれるサービス。オンライン診療を行う医療機関を探せるアプリや、医師にオンラインで相談できるサービスなどがあります。
ただし、このサービスが向いているのは、低用量ピルを定期的に服用している場合や、過去に服用したことがある場合、または緊急避妊薬が今すぐ必要な場合など。注意点として、低用量ピルを初めて使う場合や初診時には、婦人科系の病気のチェックなども併せて受けたほうがよく、対面での診察が望ましいといえます。
●ピルリマインダー
低用量ピルの効果を得るには、きちんと決められたスケジュールで服用していくことが重要です。うっかり飲み忘れしないために、スマートフォンのアプリと連携した薬の飲み忘れ防止デバイスが登場しています。
新たな避妊法の開発も盛んに進められています。スウェーデン発の「Natural Cycles」は、 FDA(アメリカ食品医薬品局)が認証した避妊アプリです(日本では未承認)。毎朝、基礎体温を測りアプリに入力。生理周期やLHテスト(排卵日予測検査)などの追加データから分析し、妊娠しにくい日と妊娠しやすい日を色分けで表示します。驚くのは、避妊効果3%という高い避妊率が実証されていることです。
このほか、唾液からホルモンレベルを測定し、妊娠しやすい日・しにくい日を予測するアプリ(ドイツやカナダ)、体内に埋め込んでリモコンで避妊効果をコントロールできる避妊インプラント(皮下インプラント/米国)などが誕生しています。
避妊する権利は女性にとって大切な権利
WHO(世界保健機関)は、2018年に「意図しない妊娠のリスクに直面するすべての女性と少女は、緊急避妊の手段にアクセスする権利がある」と各国に勧告しました。また、2020年4月には、緊急避妊薬へのアクセスを薬局での販売の検討も含めて確保するよう提言しています。SNSを通じて性暴力に巻き込まれる、身近な相手から性暴力を受けるなど、さまざまなケースにあわせて、意図しない妊娠を自ら回避できる方法が必要です。
「産む・産まない」を自分で決め、その方法も自ら選択できるように、より多くの避妊手段を提供することや緊急避妊薬へのアクセスを改善すること、経口中絶薬の導入など、日本には解決していきたい課題がたくさんあります。私たち一人一人が当事者です。一緒に考えていきたいですね。
取材・文・構成/国分美由紀
出典/『365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)