yoi読者から寄せられた生理にまつわる疑問や悩みに、専門医がアドバイス! 今回は、お悩みの中でも症状が多岐にわたる「PMS(月経前症候群)」の原因について伺いました。

生理 PMS 婦人科 お悩み 小野陽子

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読者のお悩みエピソード:もしかして、これがPMS?

「生理の10日前ぐらいからドカ食いが始まり、あごの周辺に吹き出物がでてきます。眠気とだるさ、むくみ、そして毎回ではありませんが気分の落ち込みがあります。これがいわゆるPMSというやつでしょうか? そもそもの原因って何ですか?」

お話を伺うのは…
小野陽子先生

産婦人科医/心療内科医

小野陽子先生

日本産科婦人科学会専門医。心身医療専門医。日本女性医学学会ヘルスケア専門医。日本女性心身医学会認定医師。女性の心身の不調の背景には社会的・環境的要因が影響していると感じ、産婦人科研修後、心療内科でも研修。女性が自分自身で心と体の対話を大切にできるようサポートしていく女性医療を心がけている。2020年にAddots GINZAを設立し、女性のためのオンライン相談室「女性の心と体の相談室」をスタート。

原因:実は、原因やメカニズムは未解明

PMS(月経前症候群)の原因には諸説ありますが、今のところその原因やメカニズムはまだ明らかになっていません。

ただ、妊娠を助ける女性ホルモン「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が分泌される「黄体期(排卵後から月経が始まるまでの期間)」に症状が出現し、プロゲステロンが低下する月経の時期にはやわらいでいくことから、排卵後に卵巣から分泌されるプロゲステロンがなんらかの影響を与えていると考えられています。

PMSの原因について、「女性ホルモンの過不足」や「ホルモンバランスの乱れ」だと勘違いされている方もいらっしゃいますが、じつは、きちんと女性ホルモンが分泌されていて、排卵があり、月経周期が整っている女性に起こる症状なのです。


「PMS」と診断される症状は?

PMSは、月経の3~10日前の間に症状が現れることが多いといわれ、月経が始まると症状が弱まる、またはほとんどなくなることが特徴です。月経のある女性の実に70~80%が、月経前に何らかの症状を抱えているともいわれます。

その症状は多岐にわたりますが、主に体に現れる「身体症状」と、心に現れる「精神症状」とに大きく分けられます。下のような症状が月経前の5日間にひとつでもあり、3周期以上連続した場合はPMSと診断されます。

「PMS」の代表的な身体症状

●胸の痛みや張り ●腹部膨満感 ●手足のむくみ
●体重増加 ●頭痛 ●腹痛
●腰痛 ●にきび ●口内炎
●便秘や下痢 ●のぼせ ●動悸
●倦怠感 ●食欲減退あるいは亢進 

「PMS」の代表的な精神症状

●落ち着きがない ●攻撃的 ●怒りっぽくなる
●落ち込む ●自責感 ●人に会いたくない
●集中力低下 ●判断力低下 ●眠気
●不眠

対処法:月経リズムと体調を記録してみて

これらの症状を感じている人は、アプリや手帳などで月経周期と体調を記録してみると、それがPMSかどうかわかってきます。まずは2~3周期分の状態を記録して、体のリズムと症状が生じるタイミングをチェックしてみましょう。アプリなどによっては基礎体温の記入欄があるかもしれませんが、最初は割愛しても大丈夫です。婦人科では不快な症状に対する対症療法、漢方薬、低用量ピルやIUS(黄体ホルモンを子宮の中に持続的に放出する子宮内システム)を含むホルモン療法で対応していきます。内診(婦人科的な診察)は必須ではないので、まずは相談だけでも受診していただけたらと思います。

また、PMSの症状は体調や精神状態、周囲の環境からの影響を受けやすく、過労やストレスがあると強く現れる傾向があります。症状の記録をつけることで症状が出現しやすい時期は無理をしないようにできるだけスケジュールを調整し、体と心をしっかり休めることが大切です。

構成・取材・文/国分美由紀