世界の生理事情をのぞいてみると、より広い視野で自分の体と向き合えるのでは…? そう考えたyoiは、世界5都市に暮らす女性たちに、“半径10mの生理事情”をリサーチ。トップバッターとなる第1回は、インド北東部にあるアッサム州出身で、SNSを通して日本の情報を発信しているクリティさんが登場。ベンガル人であり、ヒンドゥー教を信仰している彼女に、多種多様な民族が暮らすこの地域における生理事情を聞いてみました。
※今回の記事はクリティさんへの取材をまとめたもので、インドのすべての生理事情を代表するものではありません。
タブー視されてきた生理の、守るべき3つのルール。最近は変化の兆しも
Q.クリティさんの半径10mで、「生理」はどのようにとらえられていると感じますか?
インドでは、一部で“生理は不浄なもの”という考えがあり、生理がきたときに従うべき3つのルールがあります。それは、①「お寺に入ってはいけない」②「キッチンに入ってはいけない」③「父を含めた、男の人に触ってはいけない」です。最近は後者ふたつの風習はなくなりつつありますが、ひとつ目の「お寺に入ってはいけない」は、宗教に関わることなので、現在も基本的には守られています。
私の祖母のエピソードですが、昔は結婚後は相手方の実家に住むという風習がありました。そのときに、“不浄”とされている生理が来ると、祖母は寝室に入ることができず、ベランダや廊下で寝ていたそうです。また、生理期間中は、体を清めるために毎朝5時にシャワーを浴びなくてはいけなかったとのこと。私の母が結婚する年齢の時代になるとこの風習はなくなりました。
現在は、母が20代だった頃の話と比べると、Z世代を中心に「生理」についてパートナーとオープンに話す人が増えていると感じます。例えば、生理用品をパートナーに買ってきてもらうという人もいます。まだまだ、“生理はタブー”“生理は恥ずかしい”という価値観も根強くはありますが、少しずつ話せる雰囲気が醸成されていると感じます。
Q.クリティさんが、生理について向き合いはじめたのはいつ頃でしょうか?
初潮が来て、母から「生理は何のためにあるのか」「どのように自分をケアするのか」について教わってからです。学校で学んだのは中学生以降で、すでに生理が始まったあとでした。内容も、ナプキンの使い方など実践的なことではなく、生理の仕組みや体の変化などの生物学的な面の教育のみ。ただ、男女のグループに分けられることはなく、全員で一緒に授業を受けた記憶があります。
Q.生理用品はどういうものを使っていますか?
私の半径10mでは、ナプキンが主流な印象があります。スーパーや薬局で購入できる、インドで生産された『P&G』の「ウィスパー」や『ユニ・チャーム』の「ソフィ」が人気で、私も愛用しています。価格は、6個入りで32ルピー程度(日本円で約55円。※首都デリーの大卒の初任給は、約4〜5万円)。現在43歳の母親が10代、20代の頃は、ナプキンが高価で残布をナプキン替わりに使っていたそうです。ちなみに、インドの都市部以外では、今も布をナプキン代わりに使っている人がいると聞きます。
「インド製の『ウィスパー』は、吸水面がプスチック製で吸収力が高く、漏れの不安がないので経血量が多い日に愛用。コットン製でフワフワの日本のナプキンは、生理が終わりかけのときに使っています」(クリティさん)
最近は海外からの影響で、タンポンや月経カップ、吸水ショーツなどのアイテムを開発するインドのスタートアップ企業も増えてきている印象があります。ただ、実際に使っている人はまだまだ少ない気も。
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Q.生理期間はどんなふうに過ごしますか? ルーティンがあれば教えてください。
経血の量が多い1〜2日目は、生理痛がひどければ鎮痛剤を飲んで、湯たんぽで体を温めながらよく休息を取るようにしています。また、特に生理中は無性に辛いものが食べたくなるので、スパイスが効いた料理を作ることも多いです。実家にいた頃は、母が作ってくれる体を温める効果のあるシナモンティーも飲んでいました。生理時によく飲まれるドリンクのひとつなのですが、作るのが結構難しいんですよね。
生理痛を緩和してくれるとされる「シナモン」で作る紅茶。
「タンドリーチキンやカレーなど、スパイシーな食べ物を食べて気分を上げます。疲れたときに甘いものを欲する感覚で、生理中は辛いものが欲しくなりますね」(クリティさん)
まだまだあります! 生理にまつわるエトセトラ
1.初潮を迎えたら、人を招いてお祝いする
アッサム州に暮らすヒンドゥー教の方々の中には、家族や友人などを招いて、初潮をお祝いするパーティを開く風習があると聞いたことがあります。伝統衣装で着飾り、その日の主人公は来客からプレゼントを受け取ることも。ただ、その場で生理について大々的に話されることはなく、ただ楽しくみんなで食事をするそうです。
2.カマキヤ寺院では、月経を祝うお祭りが毎年6月に開催される
アッサム州にあるカマキヤ寺院には、ヒンドゥー教の神であるシヴァ神の妻・パールヴァティーの性器が祀られています。毎年6月にそこで生理を祝うお祭りが開催されるのですが、いつも多くの人でにぎわっています。
構成・取材・文/海渡理恵 企画/種谷美波(yoi)