避妊や月経困難症などに用いられる「ピル」。言葉は知っていても、実はどんな薬なのか知らない人も多いのでは? 産婦人科医の高橋幸子先生に、ピルの仕組みやメリットについて伺いました。
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Q.そもそも、ピルとは? 何のために飲む薬ですか?
性教育産婦人科医
埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター助教、埼玉医科大学医学教育センター、埼玉医科大学病院産婦人科助教を兼任。「サッコ先生」の愛称で、全国の小学校・中学校・高等学校にて年間120回以上の性教育の講演を行う。著書に『マンガでわかる! 28歳からのおとめのカラダ大全』(KADOKAWA)、『自分を生きるための〈性〉のこと-性と生殖に関する健康と権利(SRHR)編』(少年写真新聞社)など。
A.ピルは、もともとは避妊のために開発された薬です
もともとピルは避妊のために開発され、経口避妊薬(Oral Contraceptives)の略で「OC」とも呼ばれます。妊娠や生理と密接に関わるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンが含まれています。エストロゲンの含有量に応じて、中用量ピル・低用量ピル・超低用量ピルに分類されます。現在一般的にピルと呼ばれるのは「低用量ピル」や「超低用量ピル」です。
これらの作用によって、脳が「妊娠中の状態である」と認識するため排卵がなくなります。子宮内膜も厚くならず、子宮頸管の粘液が粘性を増すことで精子の侵入を防ぐという複合的な働きによって高い避妊効果が得られます。妊娠したくなったときは、服用をやめればすぐに可能となります。
ピルの服用は、避妊以外にもさまざまなメリットがある
現在主流となっている低用量ピルには、高い避妊効果だけでなく、生理痛などの月経困難症やPMS(月経前症候群)が軽くなるという利点があります。生理のつらさやPMSによる気分の変調に振り回されない日々はとても快適なもの。自分らしくいられるので、安心して仕事や趣味にも打ち込めます。
【ピルのメリット】
●毎日1粒ずつ飲むと高確率で避妊できる(失敗率0.3%)
●女性が主体的に妊娠するかどうかを決めることができる
●生理周期を自分でコントロールできる(月経移動)
●月経痛が軽くなる、月経時の経血量が減る
●ニキビの症状が改善するなど避妊以外の利点がある
●妊娠を希望する場合は、服用をやめるだけでよい
●治療目的であれば健康保険の適用になる
月経困難症などの治療に用いられるLEP(治療用ピル)には種類があるので、症状によって選択を
月経困難症などの治療を目的とするピルは「LEP(Low dose Estrogen Progestin)とも呼ばれ、健康保険が適用されます。LEPは薬によって黄体ホルモンの種類が異なり、「世代」という形で分類します。改善したい症状や希望する服用方法などを医師と相談しながら、あなたにとってベストなピルを選んでもらいましょう。
【第1世代】
〈名称〉
・ルナベル® LD、ULD
・フリウェル® (LD、ULD)
※「LD」は低用量(Low Dose)の略、「ULD」は超低用量(Ultra Low Dose)の略。
〈特徴〉
・黄体ホルモンの種類:ノルエチステロン(NET)
・子宮内膜の増殖を抑える効果と、ニキビや肌荒れの改善効果に優れているといわれ、月経困難症や子宮内膜症の治療効果も高い。
・「フリウェル®」は「ルナベル®」のジェネリックで価格が低い。
〈服用方法〉
21日連続服用し、22日〜28日目は休薬(薬の服用を休む)。
【第2世代】
〈名称〉
・ジェミーナ ®
〈特徴〉
・黄体ホルモンの種類:デソゲストレル(DSG)
・ニキビや肌荒れに影響があるといわれる「男性ホルモン化作用」が少なく、ニキビや多毛症への効果が期待できる。また、血栓のリスクが他よりさらに低い。
〈服用方法〉
次の2種類の使い方が可能。
①21日連続服用し、22日〜28日目は休薬。
②77日連続服用し、78日〜84日目は休薬。
【第4世代】
〈名称〉
・ヤーズ®
・ヤーズフレックス ®
・ドロエチ®
〈特徴〉
・黄体ホルモンの種類:ドロスピレノン
・卵胞ホルモン量が少ない「超低用量ピル」で、PMSで悩んでいる人によく処方される。ニキビやむくみなどの副作用が起こりにくい。国内で避妊効果に関する検証が行われていないため、避妊目的での処方はされていない。
・「ドロエチ®」は「ヤーズ®」のジェネリックで価格が低い。
〈服用方法〉
実薬24日+偽薬4日服用または120日連続服用。
※偽薬:ホルモン成分が含まれていない錠剤
構成・取材・文/国分美由紀 出典/『マンガでわかる! 28歳からのおとめのカラダ大全』(KADOKAWA)