避妊や月経困難症などに用いられる「ピル」は、女性が主体的に選択できる避妊法のひとつ。今回は、産婦人科医の高橋幸子先生に、ピルを含む女性が選べる避妊方法について伺いました。

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Q.女性の場合、ピルを飲む以外の避妊方法ってありますか?

お話を伺うのは…
高橋幸子先生

性教育産婦人科医

高橋幸子先生

埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター助教、埼玉医科大学医学教育センター、埼玉医科大学病院産婦人科助教を兼任。「サッコ先生」の愛称で、全国の小学校・中学校・高等学校にて年間120回以上の性教育の講演を行う。著書に『マンガでわかる!  28歳からのおとめのカラダ大全』(KADOKAWA)『自分を生きるための〈性〉のこと-性と生殖に関する健康と権利(SRHR)編』(少年写真新聞社)など。

A.最強の組み合わせは「ピル」+「コンドーム」、ピル以外の選択肢なら「IUD」や保険適用の「IUS」である「ミレーナ®」も。

これから妊娠・出産の可能性がある人には、ピルとコンドームの併用がおすすめです。ピルは飲み忘れさえしなければ、ほぼ確実に避妊できます。そして、コンドームには性感染症の予防というメリットがあります。女性のセックスにまつわる2大健康リスク「望まない妊娠」と「性感染症」から自分の体を守るには、このふたつが最強の組み合わせです。

一方で、ピル以外の選択肢を望む人にご紹介したいのが、 「IUD(子宮内避妊具)」と「IUS(子宮内避妊システム)」。どちらもT字型で、大きさは3cmほど。IUDのほうが最初に開発されましたが、より避妊効果をア高めるために、T字の軸部分に銅のコイルを巻きつけた銅付加型IUDが登場しました。

2014年に保険適用となった「ミレーナ®」は、IUDの銅にあたる部分が黄体ホルモンになっているものと考えてください。子宮内で持続的に黄体ホルモンが放出されるので、高い避妊効果に加えて、経血が激減する、約2割の人は生理がなくなる、といった効果もあります。そのため、月経困難症と過多月経の方は健康保険が適用されます。

●IUD(子宮内避妊具):「ノバT ®」など
銅付加型IUDの「ノバT®」は、銅イオンが持続的に放出されることで高い避妊効果が得られる。効果は5年続く。ただし、2024年12月に出荷終了となり、日本では使えなくなる予定。

●IUS(子宮内避妊システム):「ミレーナ®」
黄体ホルモンを持続的に放出する仕組みで、高い避妊効果に加えて生理が軽くなる効果も。効果は約5年続く。

タイプ別・おすすめするのはこんな人

ピル、IUD(銅付加型)、IUSはどれも高い避妊効果が得られますが、おすすめする人のタイプには少し違いがあります。また、子宮筋腫や子宮腺筋症がある場合など、子宮の状態によっては、IUDやIUSが装着できない場合もあります。

●ピル
・出産経験がない人も、ある人もOK
・生理による下腹部痛や経血量を軽くしたい人
・PMSを軽くしたい人

●IUD(銅付加型) 
・毎日錠剤を飲むのが苦手な人
・黄体ホルモンによる副作用(軽い吐き気など)を避けたい人
・出産経験がある人

●IUS
・毎日錠剤を飲むのが苦手な人
・出産経験がある人(ただし出産経験がなくても挿入相談にのってくれる医療機関もある)
・生理による下腹部痛や経血量を軽くしたい人

IUDやIUSは婦人科で装着後、次の生理の後に一度チェックして問題がなければ、1年ごとに再度チェックする程度でOK。装着のタイミングは事前検査の後で病院側から「生理初日から1週間以内」や「生理初日から10日以内」のように時期を指定されるので、予定を確認しておきましょう。

構成・取材・文/国分美由紀 出典/『マンガでわかる!  28歳からのおとめのカラダ大全』(KADOKAWA)