出産後の女性やそのパートナーには、それまでとは違ったさまざまな変化が訪れます。産後の体や心、パートナーとの関係性、セックス、産後うつ…。そうした産後のさまざまな問題を、多くの女性が一人で抱え、誰にも相談できずに悩んでいるという実態があります。

そんな中、こうした産後問題の解決を目指す認定NPO法人マドレボニータが、コロナ禍に出産した女性とそのパートナーを対象にアンケート調査を実施。654名の回答データを『産後白書4』としてまとめ、WEB上で公開しました。ここでは、その中から「パートナーとの関係」「メンタル」についての一部をご紹介。今まさに産後のカップルや妊娠中の人はもちろん、あらゆる立場の人が産後の課題を知ることで、それらを予防・解決するための対策やコミュニケーションの必要性を学べる貴重なデータです!

産後女性の3割が「離婚」を意識!?

産後女性の3割が離婚を意識(グラフ)

“幸せの絶頂”をイメージしがちな出産…ですが、この時期に関係が悪化するカップルは決して少なくありません。産後女性の実に34%が、「産後に“離婚”の二文字が頭に浮かんだ」と回答しています。調査結果からは、“パートナーのサポートへの満足度”や、“パートナーとの会話の満足度”が高いほど、離婚を意識する人が少ないことが判明。

ちなみに、同調査では、ほぼすべての女性が出産後に何らかの体のトラブルに悩んでいると回答しています。おもな内容は肩こり、お腹のたるみ、体力の低下、腰痛などですが、そのほか産後特有の悩みとしては尿もれや痔、デリケートゾーンのトラブルを抱えている人が少なくないよう。

また、産後の体の不調についてのパートナーの理解について尋ねると、「すべて知っている」が29%、「少しは知っている」が68%、「まったく知らない」が8%。当然ともいえますが、こうした産後の不調への理解度が高いほど、パートナーとの関係性の満足度が高いという結果に。

産後カップル654名の実態調査でわかった! パートナーとのセックス、産後うつ…「産後」の悩み、みんなどうしてる?_2

※画像は、ユーザー ローカル テキスト マイニングツールによる分析を参考にして、出現頻度が高い言葉を大きく表示

では、そんなパートナーとの関係をよくするために行動に起こしたいことは? という問いに、産後女性は「コミュニケーション」、パートナーは「経済」と考えている傾向があることがわかりました。産後女性の自由回答で上位に出てきた言葉は、「伝える」「話し合う」「パートナー」など。具体的には、「家事、育児でやってほしいことをちゃんと伝える」「子育てに対する考え方を伝え合うこと、確認し合うこと。伝え方もケンカ腰にならないよう冷静に話すよう努める」「お互いにほめ合う。一緒においしいものを食べる」などの声が挙がっています。

このように、産後女性はお互いの考えや望みを伝え合うことが必要だと感じているのに対し、パートナー側の自由回答は、「資産運用」「効率化」「食洗機の購入を検討」など、経済に関するキーワードが多数…。意識の違いが顕著です。

パートナーとの関係が良好だと思うのはどんなとき?(データ)

一方で、パートナーとの関係が良好だと感じるときについては、産後女性、パートナーともに、トップ3は上図のように共通していました。そのほかの回答では、「自分の心身のメンテナンスができている」「ひとりの時間がある」「経済的な不安がない」などが挙がっています。

産後のパートナーシップを考えるうえで、“家事育児の協力”と“コミュニケーションの時間と質”がポイントであることがうかがえますね。

産後カップル654名の実態調査でわかった! パートナーとのセックス、産後うつ…「産後」の悩み、みんなどうしてる?_4

ちなみに、パートナーとの会話が「足りていない」と感じている産後女性の割合は、パートナーの約4倍。そして、話し足りない内容の1位・2位は「将来のこと」「子どものこと」誕生した大切な命をこの先どうやって守っていくのか、自分はどう生きていきたいのか、もっと話し合いたいと思っている人が多いようです。

そのほかに産後女性から挙がった“話し足りない内容”は、「自分の気持ちや体調のこと」「今お互いが悩んでいること、感じていること、考えていること」「セックスやデートなど男女関係としてのコミュニケーション」「他愛ない世の中のこと」「面白い出来事、最近のニュースなどリラックスできる会話」など。話さなくても生活に支障がないことでも、日々の“何気ない雑談”が、二人の関係をより豊かにできるのかも?

多くの人がモヤモヤを抱えている産後のセックス

産後カップル654名の実態調査でわかった! パートナーとのセックス、産後うつ…「産後」の悩み、みんなどうしてる?_5

産後カップル654名の実態調査でわかった! パートナーとのセックス、産後うつ…「産後」の悩み、みんなどうしてる?_6

続いて、気になる「産後のセックス」問題について。この1カ月のあいだにパートナーとセックスをしたと答えた人は約3割にとどまり、そのうち、セックスに違和感があったという人が73%とかなりの数にのぼりました。心身がデリケートな状態にある産後のスキンシップ・セックスについては、具体的にはこんな声が挙がっています。

【セックスをしていない人の声】
・気が乗らない。
・パートナーとは“同志”のようになっているため、スキンシップがなくなった。

【セックスをした人の声】
・愛情がわかない。
・濡れにくい、感じにくい。
・気持ちいいと思わない。
・母乳が出ないか心配だった。
・産後の体型変化で自信を失った。
・次に妊娠するのが怖くて集中できない。

しかし、現在は悩みや違和感があるものの、「今後、パートナーとセックスしたいと思うか?」の質問には、76%がYESと回答していて、前向きな女性が多いことがわかりました。

セックスは、性的欲求や承認欲求、癒しなど、さまざまなニーズが満たされるコミュニケーション。心身や生活が激変する産後だからこそ、コミュニケーションの時間を増やして夫婦の考えをすり合わせることが、二人が心地よい関係を築いていくきっかけになるのでは、と『産後白書4』は説いています。

二人に一人が 「産後うつ寸前」~「 産後うつ」を自覚

産後カップル654名の実態調査でわかった! パートナーとのセックス、産後うつ…「産後」の悩み、みんなどうしてる?_7

もうひとつ、よく耳にする「産後うつ」についても、同調査では詳細にリアルな声を集めています。

産後2週間から1年程度のあいだに産後うつになったかという問いに対して、「産後うつと診断された」「診断は受けていないが産後うつだったと思う」「産後うつの一歩手前だったと思う」と回答した人は計44%にのぼり、それは初産のあとであると回答した人が約8割でした。

その期間については、「1カ月以上~6カ月未満」(37%)、「1週間以上〜4週間未満」(36%)が多いものの、「6カ月以上」と答えた人も10%いました。

産後のダメージやトラブルをめぐるアンケートの自由回答

※画像は、ユーザー ローカル テキスト マイニングツールによる分析を参考にして、出現頻度が高い言葉を大きく表示

産後うつ状態になったことで日常生活において生じた支障は、「パートナーとのかかわりについて」(62%)、「子どもとのかかわりについて」(50%)、「自分の食事や睡眠時間など」(48%)などですが、自由回答ではこんな悲痛な声も…。


「自分を責めて自分の頬を叩く。髪の毛を抜いてしまう」
「子どもの泣き声が常に空耳で聞こえる」
「赤ちゃんが泣くのが怖くてずっと緊張していた。笑った記憶がない」
「年子を家庭保育。子どもたちの要求に応えきれず、うるさい、しんどいと感じてつらくなり、手をあげたり怒鳴ったりした」
「ちょっとしたことで毎日泣いていたので家事も育児も進まず、子どもが泣いていてもすぐに動けなかった」
「夫に“1日何をしていたの?”と聞かれてスマホを投げつけた」
「精神状態がジェットコースターのようで、普段は傷つかないような夫の言葉で傷ついて泣いたり、口論になった」
「自宅の2階の窓から飛び降りたくなることが何度もある」

産後カップル654名の実態調査でわかった! パートナーとのセックス、産後うつ…「産後」の悩み、みんなどうしてる?_9

「産後うつにならなかった人」「産後うつ寸前/産後うつになった人」のアンケート回答の比較から、『産後白書4 』では、“パートナーとの関係性や会話に対する満足度が高ければ、産後うつにはなりにくい”、または”睡眠が足りないと産後うつになりやすい”という結果も読み取ることができたとしています。

こうした産後うつからの回復のきっかけとして、経験者からは「パートナーの理解と家事育児への参画」「産後ケア教室の受講」「外部との交流」「外部支援の利用」「話を聞いてもらう」などのアプローチ例が寄せられています。

医療機関や自治体の子育て支援センター、保育園、児童館、オンライン交流イベントなどで話し相手ができたことで、「気持ちが晴れやかになった」「私だけじゃないと思えた」という人が多く、パートナーや実父母、義父母はもちろん、助産師や保健師、カウンセラー、小児科の看護師、出産後にできた友人などと話すことが“産後うつ”の回復のきっかけに。自由回答では「自分のつらい状況をパートナー、病院、保健センター等に相談。家事支援の方に来てもらったりした。自分のこり固まった考え(こうすべき、こうしないといけない)を徐々に手放すことでラクになれた」という経験談もありました。どうやらポイントは、「大人と話をする」ことのようです。

誰もがなりうる「産後うつ」ですが、医療や周囲の適切なケアとサポート、赤ちゃんの成長、そして時間の経過とともに回復することもわかっています。それを自覚しつつ、一人で悩みを抱え込まないことが大切。また妊娠中から、産後に赤ちゃん連れでも参加できるコミュニティやサポート先を見つけておくことで、予防・対策ができそうです。

全44ページに及ぶ『産後白書4』では、そのほか「産後の体 実態調査」「コロナ禍による出産・産後の変化」「パートナーから見た産後」などの詳しい調査結果もご覧になれます。

認定NPO法人マドレボニータ発行『産後白書4』


<調査概要>

調査方法:ウェブアンケート(無記名)
調査期間:2021年4月1日~10月31日
調査対象:産後1年未満の女性とそのパートナー※
※産後女性回答者のパートナーのうち、産後女性からの依頼により回答した方
サンプル数:産後1年未満の女性613名、パートナー41名

構成・文/宮平なつき Copyright© 2022 NPO 法人マドレボニータ All Rights Reserved.