yoiでもおなじみの性教育YouTuberシオリーヌさん&つくしさん夫婦。不妊治療、妊娠を経て、今年の夏頃に第一子を出産されました。シオリーヌさんの体と心の変化をいちばん近くで見ていたつくしさんが、パートナーの妊娠、出産を経験して感じたこととは? 今回は、産休中のシオリーヌさんに代わって、つくしさんのスペシャルインタビューをお届けします!

シオリーヌさんとつくしさん、赤ちゃんの写真

つくし/TSUKUSHI●1997年生まれ、北海道室蘭市出身。看護師資格を有し、現在は医療系企業に勤務。仕事柄、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)やパートナーシップに関心あり。今夏、シオリーヌさんとの家庭に第一子を迎え、一年間の育休中。

理解している"フリ"をして相手の言葉を奪わない

シオリーヌさん妊娠中のつくしさんとのカット

ーーご出産おめでとうございます! まず、シオリーヌさんの妊娠を知ったとき、つくしさんはどのような心境だったのでしょうか?

ありがとうございます! 自分たちの場合、シオリーヌから「30歳には子どもがほしい」と聞いていたので、それを踏まえてライフプランを話し合ったうえで不妊治療を始めました。だから、実際に子どもを授かって感じたのは「これから先、シオリーヌには心身ともにストレスが増える分、自分がしっかりサポートしなきゃいけない」という責任。二人で妊娠を望んだのだから、喜びだけでなく負担もできるかぎり共有したいという気持ちでした。

ーー大きな変化を経験する妊娠期間中、お二人のあいだで、それに戸惑ったり、衝突が起きてしまう、ということはなかったのでしょうか。

そういうことがある、という話は聞いていたのですが、そこまでピリピリすることはなかったですね。というのも、これは過去のインタビューでも話していたことですが、普段からお互いのあいだで「察してよ」のコミュニケーションはなしにしようと言っているんです。どちらかが不満やモヤモヤを抱えたら、その時点で言葉にして話し合う。それは妊娠中も同じでした。

ただ、"理解しているフリをして相手の言葉を奪わない”というのは、特に意識していたことかもしれません。自分でも、妊娠、出産、産後の母体の変化について調べたりしていましたが、実際に体に変化が起きているのはシオリーヌで、そのつらさは本人にしかわからない。聞くことしかできないと思っていたので。

ーー「察してよ」をやめて、相手の話をしっかり聞いたり、自分の気持ちを言葉にするのって、意外と難しいですよね…。

自分たちも、もちろん最初からできていたわけではなくて、「察してよ」合戦のケンカをしていたこともあります。でも、その都度話し合って、コミュニケーションの練習をしてきた土台があったから、妊娠してからもギクシャクせずに過ごせたのかなと思います。

不安が多い妊娠初期。信じるのはあくまでかかりつけ医だけ

シオリーヌさんとつくしさんがデザートを食べているカット

ーー妊娠中、お二人のあいだのコミュニケーションで意識していたことはありますか?

コロナ禍でなかなか一緒に診察室に入れなかったのですが、妊婦健診にはほぼ毎回つき添っていました。どうしても自分の勤務と受診が被ってしまう日は、出勤前や昼休みのタイミングで受診を入れられないか、シオリーヌにスケジュールの相談をして調整していましたね。

毎回受診後に、帰りの車の中でその日の診察内容を共有することで、子どもの成長とシオリーヌの体に起きる変化を把握するように努めていたと思います。というのも、特に妊娠初期は不安になることも多くて。まわりの人からいろいろなことを言われて、「正常な範囲から逸脱していないか」が気になってしまうときもありました。なので、「あくまでも、信用するのはかかりつけ医の言葉だけ」というのは二人で決めていたことです。

「立ち会い出産」実際どうだった…? パートナーつくしさんから見たシオリーヌさんの出産とは_4

ーー出産に向けては、どのように情報収集していましたか?

ベビー用品店でパンフレットをもらったり、母子手帳をもらいに行ったり、子どもが生まれる前の準備リストをネットで見たりとか…。あとは、パートナーと妊娠期間の情報を共有できるアプリを使っていて、それも便利でした!


でも、やはりそのなかで感じたのは、男性に向けた情報の少なさ。ネットでベビー用品の買い物をしたときに「ママになるあなたへ」というメールが届くなど、妊娠・出産の現場においてまだまだ男性の参画が進んでいないと実感することはよくありました。

こっそりシオリーヌの動画を見て、立ち会い出産について勉強しました(笑)

つくしさんとチビリーヌさん

ーーお二人は立ち会い出産を選択されたんですね。

子どもを持つと決めた時点で、お互いそうしたいなと思っていました。生まれる瞬間に一緒にいたいという思いもありましたが、親しい人がそばにいることで、できるサポートもあるはずだと感じていたので。

ーーどのように立ち会い出産の情報を集めたのでしょうか。

自分たちの場合、コロナ禍で両親学級がなかったんですよね。なので、シオリーヌの両親学級シリーズ動画を見たりして勉強していました。ちょっと恥ずかしいので、向こうが寝たあと一人でこっそり…(笑)。

ーー実際に立ち会ってみて、いかがでしたか?

想像以上に、自分の無力さを思い知らされた経験でした。事前にあらゆる情報をインプットしたし、体験談もかなり読んだつもりでしたが、実際に自分ができたことはあまりに少なかった…。目の前でパートナーが叫ぶくらい苦しんでいるのに、腰をさすったりお茶を差し出すしかできないのはけっこうつらかったです。
当たり前だけど、助産師さんの腰のさすり方や、無駄のない動きが素晴らしくて、「同じようにサポートしたい!」と思ってもなかなかできないんですよね…。陣痛の痛みが来る前に、自分がどういう動きをしたらベストか、陣痛中はどんなふうに声をかけてほしいかなど、本人にもっと聞けばよかったなと反省しています。

自分としては至らぬ点ばかりでしたが、あとから本人に聞いてみたところ「"一緒に産んだ感"があった」と言ってくれて。それを聞くとやはり、立ち会えてよかったと思います。

立ち会い出産を通して増した、二人の「タッグ感」

「立ち会い出産」実際どうだった…? パートナーつくしさんから見たシオリーヌさんの出産とは_6

ーー立ち会い出産を振り返り、今思うことは?

パートナーがいちばん大変なときにそばでコミュニケーションを取れたことで、「ひとつのチーム」としての結束が高まった気がします。新しい家族が増えたこともうれしいですが、何よりも家族としてのタッグ感が増したというか。今回の妊娠・出産を経て、これから先、お互いが困難に直面したときに、どのように乗り越えるか、ひとつの指針ができた気がします!

次回は、新たな家族を迎えたリアルな生活について、
引き続きつくしさんに伺います!

取材・文/野崎千衣子 写真提供/つくし 企画・編集/種谷美波(yoi)