妊娠しても「私」は「私」。シオリーヌ × つくし パートナー対談Vol.2「子どもができて見えてきた違和感」_1

不妊治療を経て現在妊娠中の、助産師兼性教育YouTuberのシオリーヌさん。人気連載「シオリーヌのSAY(性) HELLO!」Vol.13からは、妊活の体験談や、妊娠してからの気づき、子育てについて今思うことなどを、パートナーのつくしさんを迎えて3回にわたって特集します。第2回は、シオリーヌさんが妊娠したことでふたりが感じるようになった"小さな違和感"と、それを受けて今私たちができることについて、じっくりお話を伺いました。

つくし/TSUKUSHI●シオリーヌさんのパートナー。1997年生まれ、北海道室蘭市出身。看護師資格を有し、現在は医療系企業にも勤務。仕事柄、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)やパートナーシップに関心あり。今夏、第一子を迎え入れるべく、最近は育児のお役立ち情報の収集に励む。

妊娠しても「私」は「私」のままで、何も変わっていない

妊娠しても「私」は「私」。シオリーヌ × つくし パートナー対談Vol.2「子どもができて見えてきた違和感」_2

ーー昨年秋に、妊娠したことを公表したシオリーヌさん。体や心が変化していく中で戸惑ったことはありますか?

シオリーヌ 正直、体の変化に気持ちが追いついていかず、自分のボディイメージがものすごく混乱しています。ふと鏡で自分の姿を見て、「妊婦がいる!」と思ってびっくりしちゃうことも(笑)。胸のサイズも、おなかのふくらみも、見るからに「母親仕様」に体が変わっていくことに、今でも違和感がありますね。私は私のままで何も変わっていないつもりなのに、体がどんどん「ママ」になっていくから、そこにギャップを感じてしまいます。

つくし 急に「ママ」という新たな属性を付与されたみたいで、戸惑っている感じ…?

シオリーヌ そうそう。体型が変化した結果、周囲からも、私という個人じゃなくて「ママ」として扱われるようになった感じがするんだよね。そこにも違和感があるのかも。

ーー男性は体の変化はないですが、つくしさんは「パパ」の属性を与えられているなと感じることはありますか?

つくし パートナーが妊娠していることを公表すると、急に「これからパパになるんだからしっかりしないとダメだぞ」と言われたりしますね。最近、病気になって通院し、麻酔をかけて胃カメラを飲んだのですが、その話を何気なくしたら、「大変だと思うけれど、パパになるんだから頑張れ」と言われたことがあって。「『パパであること』は関係ある!?」と思いました。

シオリーヌ 別に「パパ」じゃなくたって、自分の体のために頑張るのにね(笑)。

つくし でも、こういうことは女性のほうがもっと言われるんだろうなと思います。

シオリーヌ まだ妊婦の段階で、すでに社会から「ママ」として扱われている感じはあって。先日、役所に母子手帳をもらいに行ったときも、「ここにママの名前を書いてください」と言われてちょっと戸惑いました。でも、「ママ」と呼ばれて心からうれしい人もたくさんいるはずだから、どちらが正しいということではないんです。ただ、何気ない言葉かけひとつでも一度考えてから発言しようと、改めて考えさせられた経験でもありました。

ーー言っている側も、何気なく口にしてしまったという可能性もありますよね。

シオリーヌ そうそう。私も当事者になって初めて気がつくことが多くて。マタニティウェアや妊婦用の下着に、なかなか好みのデザインが見つけられないことも新たな発見でしたね。

つくし たしかに洋服も、小さいリボンがついていたり、フェミニンなデザインが多い気がする。もしくは天然素材のナチュラル系とか。

シオリーヌ かっこいいテイストのマタニティウェアって、なかなか見つからないんですよね。派手でギラギラしたマタニティウェアがあってもいいと思うのにな〜!

世の中には「妊婦さん用世間話」のフォーマットがある?!

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ーー普段の生活ではどんな変化を感じますか?

シオリーヌ 何と言っても、「何カ月?」「おなかの子は男の子? 女の子?」と毎日のように聞かれるようになったこと。「世の中には、妊婦さん用の世間話のフォーマットがあるのか?!」と思ってしまうくらいです(笑)。かなりプライベートな質問なのに、妊娠しているというだけで、わりと遠慮なく聞かれるなと…。

ーー悪気なく聞いてしまいがちな質問ではありますよね。

シオリーヌ 私自身も、妊娠するまでは世間話として聞いていた部分もあったので、自分が言われてみて、ハッとしたんです。以前、日本で暮らしているミックスルーツの方が、「両親の出身国などいつも同じ質問をされる」と話しているのを聞いたことがありますが、たぶん、どんなことでも属性ごとに「されがちな質問」があるんじゃないかな。

「何カ月」と同じように、「男の子? 女の子?」も聞かれがちな質問ではありますが、私たちは性別をあえて聞かないことにしています。性別を聞いて公表することで、「女の子だったら一緒にお洋服を選べるね」とか、「男の子だったらパパとキャッチボールできるね」など、そこから発展する話に、世間のジェンダーバイアスを感じてしまいそうなので…。

つくし 男の子とだって一緒に洋服を選ぶのは楽しいし、女の子とだってキャッチボールを楽しめる。逆に、男の子だからってみんなキャッチボールが好きだとは限らないですよね。

シオリーヌ あとは、「(週数のわりに)おなかが大きいね/小さいね」と言われることもあって。でも、一目見ただけでそんなことわかるはずはないんです。ただでさえ心配が多い妊娠期間に、不用意に不安にさせられたくない。主治医の先生が問題ないと言っているのだから、もう誰のジャッジもいらないはず。Twitterでその話をつぶやいたら、共感してくれた人がめちゃくちゃたくさんいて、うれしいと言っている人は誰もいなかった。「じゃあ誰のための話題なんだ?」という気持ちになりましたね。

「できることがあったら言ってね」の優しさ

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ーー当事者になって、初めて感じる「小さな違和感」があるんですね。

シオリーヌ そうですね。たとえば「マタニティーライフを楽しんでくださいね」というのも、よくかけてもらった言葉です。でも、妊娠する前も毎日の生活を楽しんでいたし、今だって楽しい日や悲しい日、やる気が出ない日もあるのは変わらないと思うんですよね。「妊娠している」となると急に「楽しんでね!」と言われるので、ちょっと不思議な気分になりましたね。

もちろん、マタニティーライフを思いきり楽しむつもりでいる人や、妊婦あるあるトークをするのが楽しい人だってたくさんいますし、その気持ちは本当に素敵だと思います。ただ、一般に「おめでたいこと」とされている妊娠や出産を、必ずしも喜ばしく思えない状況の人もいるはずだから、自分も含めて、言葉選びを改めて考えないとな、と思いますね。

ーーでは、妊娠の報告を受けたら、どんな言葉をかけるといいんでしょう?

つくし 
「何かできることがあったらいつでも言ってね!」とか…?

シオリーヌ それだ! 実際に私も、友人や仕事関係の方たちからそう言ってもらえて、本当にうれしかったことをおぼえてる。相手がポジティブな反応をしなきゃいけない、と感じてしまう言葉の代わりに、そっと寄り添ってあげるような声かけをしてもいいかもしれませんね。

授乳室に入れない、男性用トイレにベビーベッドがない…。「男性が育児の場から排除されている」問題

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ーーつくしさん目線で、子どもができてからの気づきはありましたか? 

つくし 男性が育児の場に入ることが想定されていない、ということがまだまだ多いなと思います。先日、ベビーザらス(トイザらスのベビー・マタニティ用品総合専門店)の店舗に、母子手帳を持ってひとりで会員登録に行ったら、「登録も、利用できるのも奥さまだけです」と言われてしまったことがありました。自分がひとりで買い物に来る機会も多いから、企業の問い合わせフォームに意見を送ってみたのですが、とても素早く対応してもらえて、父親も会員登録ができることになったんです!

ーー行動してみるものですね〜。でも、まだまだそういった現状はある、と。

つくし 出かけた先のトイレに男性が使えるベビーベッドがあるか、男性トイレの個室にベビーチェアがあるか、また男性も使える授乳室があるかといったことも、妊活を始めた時点から気にするようになりましたね。大きいショッピングモールなどでは、男性トイレの個室にベビーチェアがあるところもありますが、オムツを替えたり授乳をしたりできるところはほとんどなくて。たまに男性も使える授乳室のある商業施設を見つけると、ものすごくうれしい。「子どもが生まれてからも絶対来るぞ!」と心に誓います(笑)。

シオリーヌ 子どものいる男性の友人は、外のベンチでミルクを飲ませたりしているそうです。授乳中の女性の安全が最優先なのはもちろんですが、最近は、設置型の授乳ブースもあるから、公共の場にそういう個室が増えてほしいな!

社会が変わるために、小さなことから声を上げる

つくし 今までの社会では、性別ごとに役割を押し付けがちだった状況があって、現在育児をする人は圧倒的に女性が多いわけだから、女性向けの商品やサービスが多いことに関してはある意味では仕方ないこと。でも、Amazonでベビーグッズを頼んだときも、「ママになるあなたと赤ちゃんへ」というメッセージが書いてあって、思わず「ママだけじゃないよ〜!」と(笑)。父親がいない家庭もあるので、「パパへ」と書いてほしいわけじゃないんです。「親になるあなたへ」というニュートラルな表記になっていったらいいなと思います。

シオリーヌ 本当にね。授乳室など、子育ての場から男性が排除されているように感じる背景には、過去に性被害や迷惑行為があったという事情もあるのだと思います。でも、ごく一部の人たちのせいで、多くの男性が育児の場に入りづらくなっている現状は、やっぱり変えていくべきなんじゃないかな。女性も男性も「みんなで一緒に、社会を変えていこう」という視点が大事だなと、改めて感じますね。


次回は、育児と仕事の両立や役割分担など、子育てプランについて伺います。お楽しみに!

シオリーヌ

助産師/性教育YouTuber

シオリーヌ

総合病院産婦人科、精神科児童思春期病棟にて勤務ののち、現在は学校での性教育に関する講演や性の知識を学べるイベントの講師を務める。また、性教育YouTuberとして性を学べる動画を配信するほか、オンラインサロン「Yottoko Lab.」運営。著書に『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』(イースト・プレス)、『こどもジェンダー』(ワニブックス)、新刊『やらねばならぬと思いつつ〈超初級〉性教育サポートBOOK』(Hagazussa Books)など。

撮影/山根悠太郎 取材・文/板垣千春 企画・編集/種谷美波

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