「いつかは…」と思いつつ、仕事やキャリアを考えると妊娠や出産がまだ現実的ではなかったり、現時点ではパートナーがいない、という人も多い20代後半~30代前後のyoi世代。そこで、実際にSNSで届いた読者の不安やお悩みを、専門家に取材します。今回は「お金」にまつわる疑問について、ファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さんに伺いました。

お話を伺ったのは…
井戸美枝さん

ファイナンシャル・プランナー

井戸美枝さん

社会保険労務士、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、DCプランナー。難しいお金の話をわかりやすく解説するプロフェッショナルとして、さまざまなメディアで活躍中。『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!増補改訂版』(日経BP)など著書多数。公式サイトでは、オンライン講座も配信中。

Q. 妊娠・出産にかかる費用が知りたい

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妊娠から出産まで、どれくらいお金がかかるものですか? おおよその金額が知りたいです。

A. 出産にかかる費用の平均は46万8756円

【出産費用の平均額(異常分娩含む)】
●公的病院 42万482円

※国公立病院、国公立大学病院、国立病院機構など

●私的病院 49万203円
※私立大学病院、医療法人病院、個人病院など

●診療所 48万2374円
※官公立診療所、医療法人診療所、個人診療所、助産所など

妊娠が判明すると、出産までに14回前後の妊婦健診(妊婦健康診査)を受ける必要があります。保険適用されないため、1回につき3000円〜1万円程度、約15万円かかるケースが多いようです。ほとんどの自治体で平均10万7792円の助成や補助を受けられるので確認を。

また、厚生労働省によると2022年度の帝王切開や吸引分娩なども含めた出産費用の平均で公的病院の費用は42万円、私立病院は49万円。全施設は46.8万円。正常分娩(自然分娩)の平均費用と内訳は下記の通り。また、無痛分娩を希望する場合、病院によって金額は異なるものの、通常の分娩費用+10〜15万円がひとつの目安に。

【正常分娩の場合:約48万2000円】
内訳は…
・入院料:11万8236円

・分娩料:28万2424円
・新生児管理保険料:5万52円
 生まれた赤ちゃんの健康管理や保育のための検査・薬剤・処置・手当にかかる費用
・検査・薬剤料:1万4739円
・処置・手当料:1万6753円
・室料差額:1万7441円
 個室などを希望した場合のスタンダードな部屋との差額
・産科医療補償制度:1万1820円
 出産時に重度の脳性麻痺や後遺症を患った赤ちゃんとその家族に対して経済的負担を補償する制度
・その他:3万4242円
 文書料や材料費、医療外費用(お祝い膳など)など、上記項目に含まれない費用
※総額は室料差額、産科医療補償制度掛金、その他の費目を除く出産費用の合計額

平均費用は施設によって異なるほか、都道府県によっても大きな差が。例えば、公的病院の平均費用(正常分娩)を見ると、最も高い東京都は56万2390円、最も低い鳥取県は35万9287円で、その差は20万3103円。里帰り出産を考える場合の目安となりそうです。

出典:厚生労働省保健局 第167回社会保障審議会医療保険部会「出産費用の見える化等について」

Q. 50万円近くの妊娠・出産費用、自分で払える気がしません…

出産費用は保険適用されないって本当ですか? そんな大金、払えるかどうか不安です…。

A. 健康保険の手厚いサポートでほぼ全額まかなえることも

妊娠・出産は病気ではないため健康保険が適用されず、原則すべて自費になりますが、健康保険の手厚いサポートが受けられるので、自己負担はそれほどかかりません。2023年からは「出産・子育て応援交付金」もスタートしています。

●出産育児一時金:子ども1人につき50万円
妊娠4カ月(85日)以上で出産した子ども1人につき、健康保険から50万円が支給される。双子なら100万円。残念ながら流産や死産となった場合も、妊娠4カ月を経過していれば受け取ることができる。出産した医療機関が産科医療補償制度に加入していない場合は1人につき48万8000円となる。一時金より出産費用が少なかった場合、申請すれば差額分が戻ってくる。

●出産・子育て応援交付金:子ども1人につき10万円相当額
自治体への妊娠届出時に5万円、出生届出時に5万円が支給される制度。自治体によって次のいずれかの方法で支給される。
①出産・育児関連商品の商品券(クーポン)
②妊婦健診交通費やベビー用品等の費用助成
③産後ケア・一時預かり・家事支援サービスなどの利用料助成や減免

Q. 子ども1人あたりの学費はだいたいどのくらい?

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子どもが高校・大学まで進学した場合、学費ってどのぐらいかかるものですか?

A. 高校卒業までの学習費の平均は574万4201円

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文部科学省の調査によると、幼稚園から高校まで15年間の学習費(学校教育および学校外活動のために支出した経費総額)は、オール公立の場合は平均574万4201円、オール私立の場合は平均1838万4502円と約3.2倍の差があります。大学進学する場合も、国立・公立・私立や学部によっても授業料に大きな差があります。

一方で、子どもが中学を卒業するまで支給される「児童手当」やひとり親世帯などに支給される「児童扶養手当」といった制度もあるので、使わずに積み立てておけば大きな資金になります。

出典:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」、旺文社 教育情報センター「2023年度 大学の学費平均額」

●児童手当 子ども1人につき198万円
子ども1人につき、0歳〜3歳未満は月額1万5000円、3歳〜中学生は月額1万円(第3子以降は小学生まで1万5000円)が支給される。第1子・第2子は総額198万円。養育者の年収が約960万円以上の場合は月額5000円が支給される。

●児童扶養手当:第1子の場合は月額1万160円〜4万3070円
ひとり親世帯、または親代わりとして養育している人の子育てサポートとして支給される。支給額は所得に応じて決定し、子ども1人の場合は月額1万160円〜4万3070円。支給対象となる子どもの年齢は18歳まで。

Q. 産休中の給与ってどうなるの?

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産休・育休を取った場合、毎月のお給料ってどうなるのでしょうか? もしかして収入ゼロ!?

A. 会社員や公務員であれば給付が受けられます

会社員や公務員は「出産手当金」や「育児休業給付金」などの給付が受けられます。企業によっては独自の支援制度を設けていることもあるので、就業規則で確認を。また、育児休業中は社会保険料が免除されます。自営業やフリーランスは対象となりませんが、働き方の違いによる支援制度の格差状態を解消するため、育児期間中の給付創設が検討されています。

●出産手当金:約52万円(月収24万円の場合)
健康保険に加入している会社員や公務員が対象。産休中に給料が減額あるいは無給になった場合、健康保険から標準報酬日額の約3分の2が支給される。支給期間は産前42日間+産後56日間の計98日間。
※標準報酬日額:基本給や諸手当、賞与、通勤定期券などを含む3カ月分の給与を平均した標準報酬月額の30分の1に相当する額。

●育児休業給付金:約146万円(月収24万円で10カ月休業した場合)
会社員の場合、育児休業を取得すると雇用保険から支給される。最初の半年間は休業前の賃金の67%、それ以降は50%が支給される。支給される期間は、「出産手当金」支給後の産後57日目から子どもの1歳の誕生日の前日まで(条件により最長2歳まで)。

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大図解 届け出だけでもらえるお金/井戸美枝(プレジデント社)

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イラスト/yukorangel 構成・取材・文/国分美由紀 企画/種谷美波(yoi)