「いつかは…」と思いつつ、仕事やキャリアを考えると妊娠や出産がまだ現実的ではなかったり、現時点ではパートナーがいない、という人も多い20代後半~30代前後のyoi世代。そこで、実際にSNSで届いた読者の不安やお悩みを、専門家に取材します。今回は「仕事」にまつわる疑問について、女性の働き方やキャリアに精通する『doda』副編集長の川嶋由美子さんに伺いました。

お話を伺ったのは…
川嶋 由美子

doda副編集長

川嶋 由美子

2002年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。派遣・アウトソーシング事業の法人営業として、派遣先の新規開拓・スタッフフォロー業務に従事。その後、キャリアアドバイザーとして12年間、転職希望者のキャリア支援に携わり、2007年にマネジャー着任。2019年には組織開発統括部 エグゼクティブマネジャーに就任し、人材育成と組織開発を牽引。2023年4月、『doda』副編集長 兼 プロジェクトエージェント統括部 エグゼクティブマネジャーに就任。プライベートでは2児の母。女性のはたらき方やキャリアにも精通している。

Q. 転職して1年以内の妊娠は避けたほうがいいって本当?

転職を考えていますが、年齢的にも近い将来子どを持ちたいと思っています。転職して1年以内の妊娠はよしとされないと聞いたのですが、本当でしょうか? タイミングが重なりそうで心配です。

A. 在職1年未満は育児休業などの制度が利用できない可能性あり

よしとされるかどうか」というよりも、企業によっては在職期間が1年未満だと育児休業などの育児支援制度を利用できない場合もあるので、よく調べておきましょう。産休は労働基準法で定められているので6週間前から取得できますが、育児支援制度を利用できない場合、産後1カ月ほどで復帰しなければならないのでベビーシッターなどを手配する必要があります。

とはいえ、もちろん出産を終えないと転職できないわけではありません。出産後、育てながら仕事を変えていく人もかなり多いですし、人材不足の時代に突入しているので、それが受け入れられる社会になりつつあります。ただ、制度のことを考えると、タイミングは意識したほうがいいかもしれません。また、たとえ縛りがなかったとしても復帰後のことを考えて、ある程度の実績を積んだ上でライフステージの変化を選択する人も多いです。

Q. 妊娠・出産のブランクってどのくらい?

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妊娠や出産で、通常どのくらいブランクができると考えればよいのでしょうか。会社にもよると思いますが、皆さんどのくらい産休・育休を取っているのでしょうか? また、2人以上子どもが欲しいと思っている場合、昇進などに支障があるのでしょうか。

A. 子どもが多いからキャリアが築けない、ということはありません!

産休は母体保護のための制度で、出産予定日の6週間前からと、出産翌日から8週間まで取得できることが決まっています。育児休業は子どもが1歳の誕生日を迎える前日までの間で取得でき、一定の条件を満たす場合は延長が可能です。保育園入園が決まるまでの1年ほど休業するケースが多いのではないかと思います。

価値観や状況、経済力、パートナーや家族のサポートなど、個々のケースによるので一概には言えませんが、子どもが2人以上いるからキャリアが築けないということはありません。私自身、子どもが2人いますが、上の子がいることで遊び相手になったり留守番ができたりすることを考えると、多いほうが大変ともいえませんし、一人っ子ゆえの大変さもあります。

産み育てて会社に復帰するまでの時間はブランクのように見えるかもしれませんが、すべてが止まっているわけではないんです。実務でPCに向かっていなくても、社会とのつながりが増えて視野が広がったり、スキルが増えたりと、違う意味での能力アップにつながっているので、キャリアにとってもマイナスではありません。仕事に復帰してから、そこに気づける時期が訪れるはずです。

Q. フリーランスへのサポート制度はありますか?

現在フリーランスで、産休・育休中に仕事ができなくなることが不安です。サポート制度などはあるのでしょうか?

A. 会社員に比べて支援制度が少ない分、備えが必要です

フリーランスは雇用されているわけではないので、よくも悪くも収入の増減があるのが働き方の特徴のひとつです。働けない時期があることや、子どもの預け先がなくて働けない場合などを想定した上で備えていくことが必要になってきます。

会社員と同じ支援制度はなくても、出産育児一時金や妊婦健診の助成、子どもの医療費無償や減額といった国や行政のサポートは同じように活用できますよ。

Q. 今は仕事中心の人生。出産後、好きな仕事を続けられるか不安です。

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出産後、好きな仕事を続けられるか不安です。子どもができるまで仕事中心の人生だった場合、どのように家事、育児と仕事とのバランスを取ればよいのでしょうか? ちなみにパートナーも激務です。

A. 自分たちにとってベストなバランスを話し合い、選択を

「子どもが可愛いからそばにいたい」と勤務時間が短い仕事に転職する人もいれば、親に移り住んできてもらって仕事に邁進する人、「小学校入学までの数年間だから」と割り切って夫婦でバリバリ働きながら保育園&ベビーシッターのW体制で子育てする人など、ベストなバランスはそれぞれの価値観によって異なるので、「これが正解」というものはないんですよね。働き方や育て方、サービスや制度などの選択肢も増えているので、自分たちのバランスを考えながら選べる時代でもあります。

そして、妊娠・出産・育児にかかわる時期は、節目節目で価値観が激動するとき。すべてが初めてで想定外…という日々の中でお互いの価値観も変化していくので、2〜3カ月に1度ぐらいのペースでパートナーと価値観のすり合わせや話し合いをしていくのがいいと思います。

Q. 上司に、妊娠したことをいつ伝えるのがベスト?

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妊娠した場合、どのタイミングで上司や同僚に伝えるのがベストでしょうか。また、安定期に入るまでは、働き方も調整したほうがよいのでしょうか? 急な体調変化で、仕事をドタキャンしてしまわないかなど心配です。

A. 体調などに支障がなければ安定期に入ってからでOK

一定の割合で流産も発生してしまうので、安定期の16週までは言いたくないという思いもあると思いますし、体調や仕事に影響がなければそれでいいと思います。ただ、どうしても体調不良によって仕事を調整してもらわざるを得ないこともあるので、その場合は上司だけに伝え、「周囲には言わないでほしい」と添えるのがいいでしょう。

妊娠中の体調変化は自分ではどうすることもできないことが多いので、前向きに割り切りつつ、中長期的な視点で考えるのがいいと思います。

●ライフイベントによる変化は持ちつ持たれつ
体調や通院などの事情で、同僚や後輩に力を借りる場面が増えることもあるかもしれませんが、数年後には自分がサポートする側になることもあるはずです。「持ちつ持たれつ」と考えましょう。

●信頼やキャリアは、積み重ねる時期と切り崩す時期がある
会社と自分の関係においても、スキルを磨いて貢献していく時期もあれば、ライフイベントによってストップしたり、積み重ねた信頼でサポートしてもらったりする時期もあるのだと考えてみましょう。サポートしてもらった分は、安定期以降や復帰後に少しずつ返していけばいいと思えば、気持ちも楽になり、周囲との信頼関係も築いていけるのではないでしょうか。

失うものにばかり目を向けず、5年スパンで考えてみる

キャリアや収入、子どもや社会的信頼、収入…すべてを手にしたい気持ちはわかりますが、妊娠・出産という1年ほどの間にそれらを詰め込む必要はあるのでしょうか。失うものやできないことにばかり目を向けていると、気持ちもつらくなってしまいます。「復帰して5年ぐらいのスパンで取り返せればいい」と考えてみましょう。焦らなくても大丈夫です。

イラスト/yukorangel 構成・取材・文/国分美由紀 企画/種谷美波(yoi)