年齢を重ねれば、体調や見た目が変化するのは当然のこと。女性の場合、ホルモンの影響もあって、その変化を大きく感じる人もいます。セックスに関しても10代や20代の頃とはまた違った悩みが生まれてくるもの。そこで今回、大人の女性ならではのセックスの悩みや疑問についてyoiでアンケートを実施※したところ、「痛みが気になるようになった」「以前のように性欲がわかない」「パートナーとの関係性が変わってきた」など、さまざまな声がたくさん寄せられました。
自身の体の変化によってセックスを楽しめなくなってしまったり、パートナーとの関係にも不安を感じたり…。そんな読者に、産婦人科医の高橋怜奈先生が寄り添い、アドバイスします! 第1回目は、なかでも特に多かった「痛い」「濡れにくい」といったお悩みについて。
※ 2022年12月〜2023年1月にyoi公式Instagramにてアンケートを実施。
3月8日の国際女性デーに寄せて、yoiは3月を「Self Love March」と位置づけ、女性の体・心・性をエンパワメントするコンテンツをお届けします。
年齢を重ねるなかでの体やセックスの変化について聞いたところ、「なんだか濡れにくい...」「痛みが気になる...」といったお悩みを抱く方が大多数。なぜ、そのようなことが起こるのでしょう?
- お悩み① 濡れづらくなって、痛いと感じることも。彼とのセックスを再び楽しむには?
- お悩み② 産後の性交痛が悩み。どう克服すればいい?
- ●ピルが性欲に関係している場合も。
- ●女性ホルモン量の変化で、濡れにくくなることがあります。
- ●産後の性交痛は、パートナーの理解と協力が大切。
- ●まずは、性交痛の原因を知ることが大切です。
- ●濡れやすくするためには、セルフプレジャーもおすすめ。
- お悩み③ 子宮・卵巣摘出後のセックスの変化が不安です。
- ●子宮摘出が、女性ホルモン量の変化に影響することはありません。
- ●セックスの再開は医師と相談して、徐々に。
- 年齢による変化は誰でも起こり得ること。ちょっとした悩みも産婦人科で気軽に相談を
お悩み① 濡れづらくなって、痛いと感じることも。彼とのセックスを再び楽しむには?
愛情表現としてももともとセックスが好きなほうだったのですが、同棲しだして約2年の今、気持ち的にはしたくても、体が反応せず、あまり感じなくなってきてしまいました。また、年齢のせいか濡れづらく、痛いと感じることも。でも、それを素直に伝えられずにいます。自分としては大好きな人とできることがとてもうれしいのですが、「したいのに、したくない」というツライ状況です。
今の自分の体との向き合い方、また、彼とのセックスに有効なセルフプレジャーがあれば知りたいです。セルフプレジャーは、いろいろな情報がありますが、なかなかハードルが高く、気軽にできることから知りたいです。(そんせんにんさん・26歳)
お悩み② 産後の性交痛が悩み。どう克服すればいい?
産後7年経ちますが、性交痛があります。頻度も2〜3カ月に一度だからなのか、毎回痛みがあります。産前は後背位が好きでしたが、とても痛くてできません。性交痛の克服の仕方が知りたいです。また、毎回シチュエーションが同じで、私自身がかなりマンネリ化してしまっています。(みーこさん・31歳)
高橋先生:性交時に濡れにくいという場合、更年期など加齢による女性ホルモンや体の変化、ピルなどの薬によるもの、性的興奮を感じていない、などの原因が考えられます。自分がどれに当てはまるのかを考えてみることで、解決策が見えてくるかもしれません。みーこさんのように、パートナーとの関係がマンネリ気味になると、どうしても性的興奮を感じにくくなって濡れにくくなってしまうということはあると思います。
●ピルが性欲に関係している場合も。
高橋先生:性欲の低下や濡れづらさに関しては、ピルの種類が関係していることも。通常、女性ホルモン量は月経周期に合わせて上下しますが、ピルはホルモン量をつねに「低め一定」に保つ効果があります。それによってPMS(月経前症候群)の症状をやわらげたり、子宮筋腫ができづらくなったりというメリットがあるのですが、その一方で、なかには濡れづらくなったり、性欲が減退したりする人もいるんです。もし困っているのであれば、一度産婦人科で相談してもいいかもしれません。ピルの種類を変えることで解決する場合もあります。
●女性ホルモン量の変化で、濡れにくくなることがあります。
高橋先生:そんせんにんさんの年齢では考えにくいですが、加齢によって濡れにくくなることもあります。女性は更年期にさしかかると女性ホルモンが減少しますが、女性ホルモン(エストロゲン)には子宮頸管や腟粘膜から出る粘液や分泌液を保つ働きがあるため、その働きが弱まることで、腟が乾燥し、摩擦によって痛みを感じることがあるのです。その場合は、ホルモン補充療法が有効なほか、潤滑ジェルを使用することで挿入時の摩擦が少なくなり、痛みが和らぎます。
●産後の性交痛は、パートナーの理解と協力が大切。
高橋先生:また、産後は女性ホルモンが急激に低下するため、性欲がなくなったり、濡れづらくなることで性交痛に悩む人が少なくありません。自然なことなので、時間が経過するのを待つことも必要ではありますが、パートナーの理解と協力が得られると安心ですね。
「セックスできないのはあなたが嫌いだからではなく、女性ホルモンの変化によるもので、誰でも起こること」だとパートナーに伝えることが重要です。キスやハグ、オーラルセックスなど、挿入することにこだわらずコミュニケーションをとるようにすると、パートナーもネガティブにとらえにくいと思います。
また、育児による生活リズムの変化や疲労、ストレスから性欲が減退し、セックスレスになるケースもあります。共働きの夫婦は、どうしても女性に負担が多くかかりがちなようです。育児もなるべく自分一人で抱え込まず、夫に積極的に参加してもらうようにしてください。心に余裕ができれば、マンネリ化した関係も変化してくるかもしれません。
●まずは、性交痛の原因を知ることが大切です。
高橋先生:性交痛とひと口に言っても、腟の入口が摩擦によって痛いのか、挿入は問題ないけれど腟の中や奥が痛いのか、痛みの場所によって原因も異なります。奥を突かれると痛いという場合には、子宮内膜症や子宮筋腫、性感染症による癒着など、子宮や卵巣の病気の可能性もありますので、原因を知るためにも、まずは産婦人科の受診をおすすめします。原因となる疾患があればその治療を。またそれと並行して、潤滑ジェルを使ったり、体位の工夫をしたり、ピストン運動の速度や挿入の深さをパートナーと話し合うといったことも必要です。
最近は、「濡れにくい」「性交痛がある」という相談で病院を受診する方が今まで以上に増えてきたように感じます。生理痛が「あって当たり前」という時代から「より快適に」と変わってきているように、セックスに対する考えも変わってきているのかもしれません。ただ残念ながら、こうした問題について、すべての病院に快く相談にのってくれる先生がいるとは限りません。ネットの情報や知人の評判などを頼りに、自分に合った病院を探してみてくださいね。
●濡れやすくするためには、セルフプレジャーもおすすめ。
高橋先生:セックスやセルフプレジャーをしばらくしていないと、濡れにくくなったり、腟の柔軟性が弱まったりして、挿入時に痛みを伴うということも考えられます。性欲があるのであれば、セルフプレジャーにはリラックス効果もあるので、日々のケアとして取り入れるのはいいかもしれません。
初心者の場合は、いきなり道具などを使うと刺激が強すぎることもあるので、まずは自分の指で優しく愛撫するのがいいでしょう。セルフプレジャーに恐怖心があるという人は、自分の性器を見たことがない、触ったことがないということも多いようです。それなのにいきなり「濡れるにはどうしたらいいのか」と考えると、身構えてしまいますよね。まずは、鏡で自分の体を観察し、性器の構造を知ることから始めてみるといいかもしれません。
お悩み③ 子宮・卵巣摘出後のセックスの変化が不安です。
がん治療のため子宮、卵巣などを手術で摘出し、退院したばかり。性生活を再開できるのは早くても約3カ月後からと医師から言われています。パートナーとのセックスはこれまでとてもうまくいっていましたが、再開後、「濡れない」「相手が気持ちがよくない」などの変化がないか不安です。子宮摘出のような大きい手術後のセックスへの影響(感度、痛みなどすべて)を教えてください。
ちなみに、相手は70代ですが、これまで悩みはないどころかとてもうまくいっていました。実は前のパートナーのとき濡れ方が少なくなり悩んだことがあったのですが、相手が変わり、回数やコミュニケーション次第で悩みが解けてしまう経験をして驚いています。(ややさん・57歳)
●子宮摘出が、女性ホルモン量の変化に影響することはありません。
高橋先生:「子宮摘出=女性ホルモンが低下する」と考えている人が多いのですが、女性ホルモンを分泌しているのは卵巣なので、卵巣を温存する場合、ホルモンの変化はいっさい起こりません。今までどおり女性ホルモンは分泌されますし、子宮摘出のみで、急に濡れにくくなるということはないので安心してください。
一方、卵巣を摘出する場合は術後に女性ホルモンが低下するため、濡れづらくなったり、更年期障害のような症状が出る場合があります。術後の対応策としてはホルモン補充療法などがあります。ただし、2つある卵巣のうち片方残す場合には、1つで2倍の働きをするため、影響はないでしょう。
●セックスの再開は医師と相談して、徐々に。
高橋先生:子宮摘出後は、腟の奥が盲端(もうたん)になっていて傷があるため、担当医と相談し、再開時期については十分注意してください。完全に治癒する前に再開すると傷が離開し、腟から腸などが出てきてしまうこともあります。また、子宮を摘出する際、一般的にはポルチオ(子宮腟部)も摘出しますが、ポルチオが性感帯の人は、術後にセックスの感じ方が変わってくる可能性もあります。良性疾患の場合に限られますが、ポルチオを残す手術もあるので、メリットとデメリットを医師に聞くなど、相談してみてもいいかもしれません。
ちなみに、術後、相手の感じ方に影響はありませんが、術後は自分自身の不安が大きく、なかなか積極的な気持ちになれないこともあるでしょう。そのために濡れにくいようであれば、潤滑ジェルを使用するなどして、徐々に再開するようにしてみてください。
年齢による変化は誰でも起こり得ること。ちょっとした悩みも産婦人科で気軽に相談を
女性は生涯を通じて、ホルモン変化が大きく起こります。性欲は女性ホルモンに大きく依存するため、性欲やセックスへの考え方が変わるのは誰にでも起こり得ること。また、年齢を重ねるなかで体そのものが変化するのはもちろん、パートナーとの関係が変わったり、妊娠や出産、更年期の不調、病気などを経験することによって、セックスへの意欲や感じ方が変化する人も少なくありません。そんなとき、「1人で落ち込んだり悩んだりせず、気軽に医師に相談してほしい」と高橋先生。原因を知ることで解決策が見つかれば、不安もやわらぐかもしれません。
次回は、こちらもアンケートで多かったお悩み、「パートナーとの性欲ギャップ」について高橋先生の回答をお届けします!
取材・文/秦レンナ イラスト/mio.matsumoto