自分の体について、どのくらい知っていますか? 自分をケアするためには、自分の体をよく知ることが必要です。また、他者とコミュニケーションを取る上でも、自分とは違う体について正しい知識をもっておくことが欠かせません。yoiでは、男性同士でも話題に上る機会が少ないという男性の体や性器にまつわる悩みやギモンを聞き込み調査。プライベートケアクリニック東京・東京院の院長である小堀善友先生にお答えいただきました。 

男性器のギモン31

Q32.マスターベーションのやり方が間違っているとどうなりますか?

32個目のギモンは、【マスターベーションのやり方が間違っているとどうなりますか?】。自分が満足できるやり方であればそれで良いと思っていたマスターベーション、【Q31:自己流で済ませてきたマスターベーション。正しいやり方ってあるんですか?】では正しいやり方について教えていただきました。しかし正しいやり方を身につける前に自己流に慣れてしまい、間違ったマスターベーションを続けている男性は意外と多いのだそう……。やり方が間違っているとどのような影響があるのでしょうか?

A32.射精障害の原因になり得ます

射精障害の原因に!? 4大NGマスターベーション

小堀先生:Q31で述べた正しいやり方と真逆のことをすると、女性とのセックスで射精に至るまでのプロセスのどこかに問題が起き、射精障害を引き起こす原因につながります。とくに近年、セックスの際に膣の中で射精できない「膣内射精障害(重度の遅漏)」に悩む人が増えており、その過半数は不適切なマスターベーションがきっかけとなっているのです。間違ったやり方の一例をご説明しましょう。

床オナ(非用手的マスターベーション)
ペニスを床に押しつけるなど、手を使わないでマスターベーションを行う方法。勃起しないまま射精していることもある。床以外にも、ペニスを太ももに挟み込む、枕を陰部に挟み込むなど特殊な刺激で射精するやり方がある。

皮オナ
包皮が剥けるのに亀頭部を露出せず、あえて皮を被せたまま上からペニスを刺激する方法。亀頭部を露出しないまま射精することに慣れてしまっているため、セックスでは射精しづらくなっている。

足ピン
仰向けで足をぎゅーっと伸ばすなど、特定の姿勢に快楽を見出して射精する方法。セックスの際に自分で腰を動かしたり、膝を曲げて挿入の姿勢を取ったり、足をピンと伸ばす以外の姿勢では射精できない状態。

強グリップ
ペニスを強力に握って動かす、高速で動かす、多少の痛みがないと射精できないなど、強い刺激で射精する方法。実際のセックスよりも強い刺激をペニスに与えないと物足りなくなっている場合が多い。

女性とのセックスに近い刺激に慣れることが大切

小堀先生:マスターベーションを練習、セックスを本番だとすると、上記の方法は練習と本番ではまったく違う刺激で射精してしまっています。練習でサッカーをしているのに本番では野球をやる、普段は右手で食事をするのに外食では左手を使うなど、全然違うことをやれと言われているようなものなのです。つまり、射精のトリガーとなる刺激の認識が間違っている状態!

普段から刺激の強いマスターベーションに慣れているため、膣の中にペニスを挿入しても気持ちよくないと感じてしまう。この状態を改善するには、膣の刺激で射精できるようにコツをつかむ必要があります。正しいマスターベーションを根気強く続けて、適切な刺激で射精できるようにトレーニングしていきましょう。

マスターベーション

小堀善友(こぼりよしとも)先生

プライベートケアクリニック東京・東京院 院長

小堀善友(こぼりよしとも)先生

日本泌尿器科学会専門医、日本性感染症学会認定医、日本性機能学会専門医、日本性科学会セックスセラピストなど多数の資格を保有。金沢大学医学部を卒業後、獨協医科大学越谷病院(現・ 獨協医科大学埼玉医療センター)の泌尿器科に勤務したのち、アメリカ・イリノイ大学に招請研究員として留学。2021年より、プライベートケアクリニック東京 東京院の院長を務める。主に男性性機能障害、男性不妊症、性感染症を専門にしており、ホームページのブログやSNSではメンズヘルスについての情報発信にも取り組む。著書に『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)、『妊活カップルのためのオトコ学』(メディカルトリビューン)、『泌尿器科医が教える「正しいマスターベーション」』(インプレス)などがある。

取材・文/井上ハナエ 企画・構成/木村美紀(yoi)