自分の体について、どのくらい知っていますか? 自分をケアするためには、自分の体をよく知ることが必要です。また、他者とコミュニケーションを取る上でも、自分とは違う体について正しい知識をもっておくことが欠かせません。yoiでは、男性同士でも話題に上る機会が少ないという男性の体や性器にまつわる悩みやギモンを聞き込み調査。プライベートケアクリニック東京・東京院の院長である小堀善友先生にお答えいただきました。 

男性器のギモン46 ブライダルチェック 妊活 結婚

Q46.男性のブライダルチェックってどんなことをするの?

46個目のギモンは、【男性のブライダルチェックってどんなことをするの?】。近年少しずつ認知度が上がってきた「ブライダルチェック」とは、結婚や妊活を控えたカップルがお互いの健康状態を確認し合い、これからの生活を前向きにスタートさせるために行う検診のこと。一般的には女性が妊娠を意識したヘルスチェックとして知られていますが、最近は男女ペアで受けられるプランも増えており、妊娠を望むなら男性もブライダルチェックを受けたほうがいいという風潮が広まりつつあります。女性の場合は基本的に血液検査や女性ホルモン分泌検査、超音波検査などで妊娠・出産に影響がないかどうかを調べますが、男性のブライダルチェックはどのようなことを調べるのでしょうか?

A46.性感染症と精液の検査を行います

精液検査は自宅採取でも可能です

小堀先生:子どもをつくるにあたって影響があるかどうかを調べるのは男性も同じです。男性の場合は不妊症の原因となり得るものを調べるべく、性感染症をチェックするのが基本。また、ご希望があれば精液検査をお勧めしています。当クリニックでブライダルチェック向けにご提供しているのは、セックスやオーラルセックスで感染する性感染症をまとめて検査できる「フルチェック(19,800円)」というメニューです。内容は性器と喉の淋菌&クラミジア検査、血液検査でHIV、梅毒、B型肝炎の合計7項目を調べ、2〜3日後にWEBで検査結果を確認できるというもの。さらに妊活を検討している夫婦やカップルには別途、精液検査(11,000円)を追加するようおすすめしています。検査内容と費用はクリニックによってさまざまで、性感染症と精液検査のほかに、風疹抗体の検査を行うところもあります。


精液検査ではWHOの基準をもとに、精液の量と濃度、精子の運動量、精子の形を調べます。当クリニックではご自宅で精液を採取していただき、蓋つきの容器に入れて1時間以内にお持ちいただきます。空気に触れると精子が死ぬと勘違いしている人がいますが、精子は空気に触れても3日程度は生きているので自宅採取でも問題ありません。そして当日中に医師の診断と検査結果を受け取ることができます。当院は男性不妊を専門としていることから月に100人以上が精液検査を希望され、妊活中でなくても「結婚していないし恋人もいないけれど精子の検査をしたい」という人がいらっしゃいます。自分の精子がどんな状態かなんとなく気になる程度でもいいので、あまり重くとらえずお気軽にご相談ください。

ブライダルチェックを受けるタイミングは、パートナーときちんと話し合って

「ブライダルチェックはいつ受けるのがいいか?」と相談を受けることがありますが、個人的には結婚前にこだわらず、結婚して妊活を視野に入れ始めたタイミングでも十分と考えています。もしかしたら女性は結婚前にあらかじめブライダルチェックを受けておく人もいるかもしれません。それはおそらく月経トラブルをきっかけに自身の妊娠能力について考える機会があったり、健康診断や周囲の環境から定期的な婦人科検診を促されたり、自身の妊娠能力・健康状態と向き合うことが多いからなのでしょう。


一方で男性は月経も男性器の定期検診もなく、自身の妊娠能力を意識するのはどうしても結婚や妊活のタイミングになりがち。性感染症の検査はパートナーへの感染リスクを減らすためにも結婚前に受けておいて損はないのですが、精子は精液検査で妊娠可能かどうかがある程度わかってしまいます。そして検査の結果、男性の無精子症が発覚して結婚が破談になるケースをお見かけしたことがあります…。それが結婚する・しないを左右する可能性も踏まえて、受けるタイミングはきちんと話し合うのがベストでしょう。


なお、かつての無精子症は妊娠を望めないとされていましたが、現在は手術によって精子を発見&採取ができれば体外受精で妊娠を目指せるようになりました。無精子症という結果を受け止めたうえで人生を一緒に歩んでいく選択をする方々もいますし、お互いが納得した結論を出せるならいつ受けてもかまわないと思いますよ。

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小堀善友(こぼりよしとも)先生

プライベートケアクリニック東京・東京院 院長

小堀善友(こぼりよしとも)先生

日本泌尿器科学会専門医、日本性感染症学会認定医、日本性機能学会専門医、日本性科学会セックスセラピストなど多数の資格を保有。金沢大学医学部を卒業後、獨協医科大学越谷病院(現・ 獨協医科大学埼玉医療センター)の泌尿器科に勤務したのち、アメリカ・イリノイ大学に招請研究員として留学。2021年より、プライベートケアクリニック東京 東京院の院長を務める。主に男性性機能障害、男性不妊症、性感染症を専門にしており、ホームページのブログやSNSではメンズヘルスについての情報発信にも取り組む。著書に『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)、『妊活カップルのためのオトコ学』(メディカルトリビューン)、『泌尿器科医が教える「正しいマスターベーション」』(インプレス)などがある。

取材・文/井上ハナエ 企画・構成/木村美紀(yoi)